第149話「神も仏もいない」

慈悲深く守ってくれるはずの神や仏はどこにもいない。神も仏もいない。ただ、人を殺すことだけを生業とする殺人鬼がいるだけだ。

俺はその殺人鬼に殺された。そして今、俺の目の前には一人の少女がいた。この世界が現実ではないとわかる根拠はない。しかし、俺の目にははっきりと映っているのだ。そう、まるでアニメのキャラクターのように。彼女はとても美しい顔をしていた。髪は長く金色で、瞳の色は青く透き通っている。スタイルもよく、胸も大きく腰はくびれていた。彼女は言った。

「私の名前はアリス。あなたを召喚した者です」そう言って彼女は微笑んだ。

俺の名前は佐藤隆太。普通の高校に通う高校生だ。今日は学校の授業が終わった後、友達と一緒に街のゲームセンターに行った。格闘ゲームに熱中して時間を忘れているうちに気づけば夜になっていた。そろそろ帰ろうかと思いながら外に出た時だった。街灯の下に黒い服を着た男が立ち止まっていた。全身黒ずくめの男は不気味だったが、それよりも驚いたことがあった。それは男が日本刀を持っていたことだ。男はこちらを見てニヤリと笑った。次の瞬間、凄まじいスピードで近づいてきた。恐怖を感じた俺は反射的に目を閉じた。そして、次に目を開いた時には見知らぬ部屋にいた。そこにアリスと名乗る少女がいた。

「ようこそ、私の王国へ」

彼女がそう言うと同時に部屋の中にあった鏡が光り輝いた。鏡の中には信じられない光景が広がっていた。何もない真っ白な空間に自分とアリスだけが立っている。それ以外にあるのは、壁一面に張られた大きなガラスだけだった。ガラスの向こう側には中世の西洋のような街並みが広がっている。遠くの方では煙が上がり炎が上がっているように見える。どう考えても異常な状況だ。しかし、不思議と怖さはなかった。おそらくこれは夢なのだと思ったからだ。

「私はこの国の女王です」

女王と名乗った少女はとても美しく可愛かった。年齢は16歳ぐらいだろうか? 彼女の美しさは、まるで女神のように思えた。

「えっと……ここはどこなんだ?」

「ここはあなたの住んでいた世界とは別の世界で、私が作り出した魔法の国です」

「別の世界だって!?」

俺は思わず大声を上げてしまった。しかし、それも仕方がないと思う。いきなり別の場所に連れてこられて、自分は別世界の人間だと告げられたのだから。

「驚かせてしまってごめんなさい。でも、どうしても伝えなければならないことがあるのです」

「伝えたいことって何ですか?」

「あなたは元の世界で死んでしまったのです」

そうか……と俺は呟いた。そんな気はしていた。よし、これからこの世界で生きよう……。

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