第22話 Perfake?Perfect?

わたしは何をしようとしているのだろう。

 書き始めてから、いや、残された手記を見てそう感じた。

 わたしは、とんでもないことをしようとしているのではないかと。


 なぜかといえば、これはもうひとつの自分から受け取った書物だからだ。その世界では日本は消滅し、波国と呼ばれている。

 まるでおとぎ話だ。けれども、どうしてもこの話を世に出さねばならないように、何かにかき立てられるかのように筆を走らせた。


 わたし?わたしとはいったいなんだろう。別の世界にいるわたしでも、きっと同じことを思っていただろう。


 果たして、役者ってなんなんだろう。いくつもの並行世界を渡り歩き、存在、役が増えれば増えるほど、違う自分が積み重なっていく。


 この物語を、もうひとつの自分から受け取った時は小躍りした。

 これで、物語をつむぐ必要がなくなる、と。

 しかし、死体として存在し、現在は「友達」として起動している彼女を、わたしはもう見つけることができなくなってしまった。


 あの後、どうなったか。

 彼女は皮肉なことに、カンテノームと同じく、死体としての友人という役目を与えられたらしい。あの世界では、死体も公僕である。

 死してなお、共有財産として国の所有物として扱われる。

 この世界がそうならないと言う確証はない。かつてこの国は人体実験に手を染め、気づかぬうちにデータは最悪なことにアメリカに渡った。


 死体を使った実験が結果、どんな発展を遂げたか、わたしは想像したくない。


 わたしは、ペンを置く。

 この物語は、書くべきではなかった。

 それでも、誰かの目に届くなら、その物語は、誰かの力になるのだろう。


 それまで。また、会いましょう。

 人生。

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君が僕を許さないのだからわたしはけしてあなたを許さない。 荒川 麻衣 @arakawamai

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