第20話 You never forgive me, so I would never forgive you.

あなたはけしてわたしを許そうとしないでしょう、だからわたしはあなたをけしてゆるさないのです。


 自分が人間じゃないことに気づいたのはいつだったろう。

 最初は、たまたまかかってきた間違い電話が原因だった。その間違い電話は宗教の勧誘で、わたしはその優しい新興宗教に自分を放り投げた。聖書には、キリスト教無教会主義にはうんざりしていたし、キリスト教を語りながら最終的にコルチャック先生を渡してきた神父さまにも飽いていた。

 それならば、と言う理由で飛び込んだのは、ただのお茶会だった。彼らは何かとお茶をする。お茶をくれ、菓子をくれ、居場所のないわたしに彼らは優しくささやくー家族がいないのなら、わたしたちの家族にならないか。

 その宗教が実は寛容な宗教で、愛児園だと知るのはつい最近だ。電脳空間が発達していなかったから。 

 新聞の記事を読み、聞いたことないと思っていたその宗教は生後洗礼派で、まぁやばいのは複数あるがけして悪魔だのなんだのを信用しない日本的。


 いや、もう日本はない。

「ジャパンだから邪波無、今日からお前の国は波国だ」と強制的に国名を変えられて何年も経つ。暦が黄暦となり、時間はスタンダードタイム、明石標準時からバラバラの、地方ごとのスタンダードタイム、要するに米国同様、波国北部標準時、ウチナータイムが制定された、というわけだ。沖縄は独立を許され、現在、第二のチャイナとして機能している。

「母、そのものだね」

 乾いた声でカンテノームは言う。

「君は僕の忠告を忘れ、母親と心中する道を選んだ」

 うるさい。母の悪口は言うな。

「母、ってなんなんだろうね」

 カンテノームは、実体としてそこにはいない。でも、なぜかそこにいる、と感じる。幻影、国家が所有するよう押し付けた「友達」と言う名の幻影だとしても、公僕の地位を維持し続けるには、公僕としてしか、利用価値がかい個体。


 それが、わたしなのだから。

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