第16話Only the victims can call it genocide.
被害者だけがそれを大量虐殺と呼ぶことができる。
感染症が広まり、この薫る都は、閉鎖された。正確には、外出を制限され、春の訪れを大々的に祝うのが不可能になった。大人数で集まると不都合だからだ。
春はいい、新春はいい、けれど、ドラゴンが小さく舞う姿はなんだか不気味で、ここが租界、隔絶された、そして親愛なる場所だと言うことを忘れてしまう、遠隔授業、公僕、とは言っても政府により設立された公立学校、フォーザクリスト、ジーザスクライストのための学校につとめる僕は、いつわりの聖書片手に説教する、そう。
公たるしもべ、ちゃんと神のしもべ、前の時代にはあり得なかった、神職を波国は採用した、公費によるキリスト教を広める、というよりも、
「結婚しない」
「面倒を起こさない」
「子作りしない」が信条で、要するに、家族を増やさない宗教を信仰していれば、手当を無駄に払わずに済むので、聖職者の一部は無駄に重宝されている。
友達がいないのだけが欠点なのだ。感染症予防法のために、「友人が誰か登録する」制度ができ、「友人以外との接触」が禁じられたからだ。友人法は、それを支えるためのひとつでしかない、つまり、交通事故を避けるために交通のための法律があり、こまごまとした決まりが連なるように、友人法ですら、友情ファシズムを支える小さな雑草でしかない。
ぼっちの中では、友人登録や友人法は「友情ファシズム」と呼ばれている。ファシズムは国家へのなんちゃらさえあれば良く、国によって違ったのに、友情ファシズムは別だ。
世界各国、いや、この地球上で、友情が悪いものだと考える奴がどこにいる。いないのだ、だから、ファシズムとしては一番厄介だ、誰も止めるものがいないのだから。人間強度が下がる以前の問題だ。
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