第15話 web小説企画(三代話)で出した作品『メール・お祭り・花火』

 千夏ちなつの友人である夕夏ゆうかが行方不明になったのは10年前の夏祭りの日だった。

 どれだけ捜索されても見つからず結局は神隠しとして周りは落ち着きだす。

 千夏の年齢は現在24歳となり、10年もたてば記憶も薄れていく、都会に出た千夏はお盆もあり田舎に帰って来た、田舎に帰ると同窓会に呼ばれ、そのグループの中で夕夏の事を突然思い出したのだ。

 アルコールが入ったせいもあり、田舎の道を携帯電話の光をONにして一人で歩く。

 この道もあの道も夕夏と歩いた道と思った千夏は少し感情的になった。

 千夏は行き場のない怒りを大声に出す。

 それもこれもお互いに25歳を過ぎて独身だったら一緒に住もう。と約束したのを思い出したからである。

 ふと中学生時代にお互いにメールを送信しあったのを思い出した。

 アルコールのせいもあったのだろう、千夏は夕夏が突然行方不明になった事をいらいらし、中学時代に使っていた夕夏のメールアドレスに『夕夏の馬鹿野郎!』とメールを送ってみた。

 宛先不明で戻ってくるのは当然わかっていたはずだ、しかし送信されると逆に携帯電話にメールが入った。

 どうせ同窓会の二次会の誘いだろう。と思った千夏は消そうと思ってメールを確認するタイトルは文字化けしており、中身を見ないで消そうとするが、指先がずれてメールを開いてしまった。

 メールの中身を見ると千夏の酔いが急激に冷めた『千夏なんで行方不明なのよ馬鹿』と。

 誰のイタズラと思い千夏は夕夏にメールを送る、全く同じ内容の質問が行方不明なはずの夕夏から千夏に送られてきた。

 千夏と夕夏、お互いに知っている情報をメールで確認しあう。

 お互いに片方が行方不明という状態で他は全て同じ世界なのだ。

 千夏はなんだか泣けて来た。

 千夏はコンビニに走り売れ残った花火を買いまくる、よく一緒に遊んだ神社にいくと広場で打ち上げ花火を上げた。

 上空には千夏の買った青い打ち上げ花火ではなく夕夏のすきだった赤い花火が打ちあがった。

 千夏はなんだか笑い出す。

 メールに『じゃ、また来年』と送信すると『ん、また来年』と夕夏から送られてきた。

 コンビニで買った缶ビールを片手に夜空を眺め涙を拭いた。



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短編集 えん@雑記 @kazuna

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