第13話 ニートパーティー、いよいよ戦闘開始!
見渡す限りの平原。遠くに
「さっき俺がここの島はドーム球場十二個分といったが、そのうちの十一個分はこのニートザワールドが占めている。そのデカさはあの『ネズミの
ホビットが僕の隣を歩く。
僕はダガーを握りしめ、いつどこからモンスターが襲来するか、周囲を警戒していたのだ。しかし、何者かが現れるような気配がまるで無く、動物どころか虫すらも見かけない。これで一体どうやって冒険していくというのだろうか? ロールプレイングゲームの世界を体感できると謳いながら、どうせ木の板に描かれたモンスターなどが、地面の中からバンッと現れて、それを疑似戦闘などと言うつもりなのであろう、とタカを括っていたのだ。
「ねえ。一体どこにモンスターがいるのさ?」
僕はホビットに訊ねた。
「さあな」
杖を背中に背負いながら、両手を後頭部に廻して陽気に口笛を吹いている。相変わらずマイペースなヤツだ。
こうして一〇分ほど歩いて、後ろを振り返ると町が小さく見えた。ここまで来て何もないなら引き返そうか、そんな考えが頭に過ぎった時、どこからか激しいリズムの音楽が聞こえてきた。
僕はビクッとなり、慌てて身構える。ホビットの口笛が中断され、彼もその異変に気が付いた。僕たちの目の前を巨体なネズミが一匹、招き猫のようにデンとしていた。人間の背丈くらいはあるぜ。
ネズミは大きな口を開け、唾液を垂らしながら僕たちを威嚇する。
「モ、モンスターだ。どうしようホビット」
「意外にリアルだな。これが最先端のSFXか。光学処理によって生み出された視覚効果の何とも凄いことよ。まるで実写だ」
ホビットは近くの木の枝を指さした。
「あれを見ろクロパン。木の葉で隠されているが、あそこにプロジェクトマッピングなどで使用される特殊カメラが設置されている。人間がこの付近を通るとセンサーが感知して、あのようなリアルなモンスターを召喚させるって寸法だ」
と、ホビットが説明している間に、ネズミが飛びかかって来た。ホビットがいち早く、僕の背後に隠れると、ネズミは僕を目掛けて襲って来た。
実体がないため、当然ネズミは僕の体をすり抜けていく。しかし、体にはネズミから受けたダメージ痛のようなものを感じ取ることができた。
「イタッ」
身体を静電気に触れた時のようなチクリとした衝撃が伝わる。おそらく肌着の上から着用したウェアラブル装備から発生した衝撃なんじゃないかな。
僕の左腕に付けていたアーム端末が赤く明滅し、表記されていたデジタルカウンターが、『20』から『15』へと減少する。
「ぼ、僕の体力値が!」
ネズミから『5』のダメージを受けたということなのだろう。カウンター数値が残り15となった。
「おい、クロパン早く攻撃しろ!」
僕の股の間からホビットがネズミを覗き込むようにしながら命令した。
「分かったけど、そうやって密着されたら動けないよ」
「おお、そうだったな」
ホビットは僕のズボンから指を離した。
僕はダガーを握ると、映像化されたネズミへと走り寄った。
どうやって攻撃すればいいのか分からないが、安全対策を施され丸みを帯びたダガーの刃をネズミに向かって振り下ろす。
ダガーがブルッと震えて鈍い衝撃が手に伝わる。手にしている武器とモンスターの映像とが合わさると、武器に内蔵されているモーターが蠕動し、手に伝わる仕組みのようだな。
僕のダガーの攻撃で一瞬ネズミが怯んだが、それでも致命傷には至らなかったようだ。再び牙を剥きだして、再び僕の体をすり抜ける。
ピリッと静電気が身体中を駆け巡り、アーム端末が赤く明滅する。
【クオリティーヒット】
と警告文が示され、僕の体力値が一気に『5』へと目減りした。あと一撃を与えられれば、僕は「死亡」することになるのだろう。
「クッ、どうする?」
僕はダガーでもう一度切り付けたが、今度はアーム端末に【ミス】と表示される。
「結構弱いじゃんローグって!」
別の職種にすれば良かった。そう後悔したとき、
僕は思わずしゃがみ込み頭を抱え込んだ。静電気とは言え、そう何度もピリッとされるのはゴメンだよ。
ダメージとしての静電気が体に迸る、と身構えてはいたものの、ウェアラブルジャケットからは何の反応も返ってこなかった。
僕は抱え込んでいた頭から腕を下ろし、ネズミのいた方に少し目を開いて見てみる。
するとさっきの巨大なネズミが、巨石に潰され手足を痙攣させながらひっくり返っていた。
僕はホビットの方を見る。
彼がネズミに向かって杖を突きだしていたのが分かった。杖から放出された攻撃魔法で、ネズミをKOしたということらしい。
「ったく、とんだネズミの国だぜ」
ホビットはそう言うと杖を背中に背負った。
僕は立ち上がり、ホビットと握手をする
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます