第3話

あのニュースを目にしてからというものの、私は死をどうしようもなく意識するようになった。


体の構造で絶対にあるべきものが、何か足りない気がする。


私は、数年ほど前から唐突に心臓が消える感覚を常々覚えるようになった。


単なる比喩表現とでしか受け取って貰えないのは分かっている。


私の体の仕組みはどうなっているのでしょうか。


世間一般教養範囲内の知識で当たり前に知っているはずなのに、そこに真実を感じないのだ。


疑っているわけではない。


ふとした瞬間、心臓がそこにないような気がして、時折胸にそっと手を当てる。


やや緊張した面構えで、脈拍という命の証明を探す。


そして、鼓動を感じとると漠然とした安堵感がある。


しかし、同時にいつ止まるか分からない拍動に恐怖感と悲壮感を覚える。


ドクドクと脈打つ奏では、常に一定ではないのだ。


経験則でも科学的根拠があるわけでもない。


ただ、煩雑に手渡されるうねりのようなものだ。


捨てた人形に罪悪感を抱き、もう一度それを拾い上げるほど愛おしい。


愛でる世界も、ここで生きているんだと実感する私自身の心の在り方も美しい。


自惚れているわけではない。


感じるのだ。


呼吸をするように自然に、流れる川のせせらぎのように穏やかに、ゆったりと伝わってくる。


その正体が何なのか、私はらない。


心の中で土砂降りが一層と加速するのを感じた。

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