第2章 続く道

成る程な.....。

第34話 俺の好きな人、か

「有難うな。羽田」


「.....俺はほぼ全部において自分の家の事情を話しただけに近い。それに俺は許せなかったのは事実だからね」


笑みを浮かべながら羽田は俺を見る。

北公園で語り合う俺達。

羽田は缶コーヒーを眺めながら、君は俺の様なリア充だったんだね、と言ってくる。

じゃあ君は先輩かな、とも。

そんな事は無い。


「俺は破滅した。だけどお前は違う。.....そこら辺だけだ。差は」


「君の周りには色々な人が集まる。それは.....凄い才能だと思うけどな。勿体無い」


「俺はリア充にはなれないんだ。結局.....何か違うんだろうな」


考えてみるにお前も似た様なリア充だからな。

だからお前には破滅してほしくないからな、と言ってくる。

目を丸くする羽田。

それから、そうか、と言ってくる。


「話は変わるがユナ.....と付き合う気は無いのか。本当に。優子とも」


「.....鈴木の彼氏役だ。だから今は付き合う気はないし考えに無いな」


「それも勿体無いものだ。君なら良い彼氏になると思うけどな。何方と付き合うにしても」


「心から愛するってのがそもそも分からないしな。曖昧だし」


「.....そうか」


それは俺も同じかもな。

と言いながら缶コーヒーを飲む羽田。

俺はポケットに手を突っ込んだまま空を見上げる。

それから羽田は、それじゃあな、と言いながら立ち上がる。

そろそろ帰って仕事をしなくちゃな、と言いながら。


「土日が楽しみだな。君にとっては」


「.....地獄かもしれんぞ」


「そんな馬鹿な。優子と一緒だ。君を好きな優子がね」


「だから地獄って言っているんだ。俺を好き過ぎるから」


好き過ぎる、か。

確かにそうかもしれないな、と言いながら羽田はクスクス笑ってから。

そのまま、じゃあな、と去って行った。


俺はそれを目線だけで見送ると。

先輩、と声がしてきた。

鈴木の様である。


「鈴木」


「大変でしたね。今日は」


「.....そうだな。色々とな。過去に決着をつけたかったが曖昧になったしな」


「じゃあその過去は私と森本先輩でつけましょう。ケリを」


「お前らは関係無いだろ」


「あります。.....私が好きな先輩の過去ですから」


あざとくウインクする鈴木。

相変わらずなこった。

俺は苦笑しながらゴミ箱にペットボトルを捨てた。

先程飲んだ水のペットボトル。

すると、先輩、と鈴木が言ってきた。


「どうした」


「私は先輩が好きですが.....先輩は本当に気持ちは揺らいで無いんですか?今」


「ゴメンな。まだ分からん。全てにおいて」


「.....じゃあ例えば100%中で私は何%ぐらい好きですか」


「いきなり難しい質問だな。答えれるかよ」


いえ。

答えれると思います。

私は必死にやっていますが.....先輩。

先輩は本当に私と一緒に居て楽しいですか?、と言ってくる。

どういう意味なのかさっぱり分からんが。


「先輩は森本先輩が好きなんじゃないですか?」


「.....そんな馬鹿な事があるか。違う」


少しだけ動揺した。

何故に動揺するのか分からないが。

思っていると鈴木が笑みを浮かべてきた。

そして、先輩。私ですね。決めたんです、と言ってくる。

何を決めたんだ。


「先輩は多分最初から森本先輩の事が気になっています。.....今度の土日に行くのは私じゃなくて森本先輩が行く様にしました」


「.....え。それはどういう意味だ。そもそもアイツの家は」


「大丈夫です。私のお手伝いさんが向かっています」


「ならお前はどうするんだ」


「私は家で待機しますよ?」


何言ってんの?

俺は頭をガリガリ掻く。

そもそも俺が森本を好いていると?

何処からそんな事になったのか、と思ったのだが。

森本を考えると知らんが胸が締め付けられる。


「.....有り得ないと思うんだけどな。俺がそれは」


「先輩。恐らくですが私では勝てないです。森本先輩に。そしてそれは恋だと思います」


「そんな馬鹿な」


「キスをした時.....嬉しかったんじゃないですか?森本先輩からされて」


「.....」


確かに嬉しかったっちゃ嬉しかったな。

それが.....認める事なのか?

俺は考えながら顎に手を添えていると。

長門。優子、と声がした。

見ると森本が。


「優子。どうしたの私を呼び出して」


「.....いえ。実はですね.....」


かくかくしかじかと話す鈴木。

俺は赤くなりながらその言葉を聞いていた。

すると森本も真っ赤になる。

そ、うなの?、と。

俺は顎に手を添える。


「.....私は一生懸命に全てに躍起しました。.....だけど振り向く事は無かったです。先輩の純粋な気持ちが。私達はこの先も役柄で演じますが.....でも」


「長門.....」


「.....正直に言ってもまだ分からないけど。でも鈴木に言われて何だか考え直した。俺は多分お前が好きなんだろう。きっと。今の今までで」


「.....!」


涙を浮かべる森本。

そして唇を噛む。

俺はその姿を見ながら、でも今はまだ分からない。だから全てを分からせてから考えてみる。俺は.....誰が好きなのか、と言ってみる。

鈴木と森本は静かに頷いた。


「.....」


『長門。お弁当作ったから』


『長門。相談に乗ってくれる?』


『ねえ長門』


.....そうか。

俺は結構初期から好きだったんだな。

森本が、だ。


気が付かなかったな全く。

いや気が付いていたけど無視をしていたんだな。

俺は考えながら唇を噛んでから離してそして2人を見る。


「好きになっても良いんだろうか。俺は」


「.....うん」


「良いと思います」


森本の事を好きになる、か。

俺は考えながら空を見上げる。

最初に優しくしてくれた森本が気になっていたんだな。

考えながら薄暗い世界を見つつ。

帰るか、と2人に提案した。


「はい。.....そうですね」


「.....うん」


それから俺達はその場を離れてから。

そのまま各々手を振ってから分かれて自宅に帰る。

そして鈴木は、じゃあこれからの先は私が考えますから、と意気込んでいた。


先輩の将来を考えます、とも。

俺は苦笑しながらその姿を見つつ。

顎に手を添えた。

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