第32話 闇の魔の手が忍び寄る時
水曜日になった。
俺と鈴木はとある場所に集まっている。
それは佐藤の部室である。
そんな事に利用するな、的な感じの目線だったが。
覚えていてくれた嬉しさか招いてくれた。
「先輩。この本はこっちに直すで良いですか」
「ああ。多分それで良いと思う」
佐藤の居る部室を清掃する。
そんな佐藤を見ると佐藤は笑みを浮かべていた。
ゴメンね長門くん、と言いながら。
俺は首を振りながら、鈴木もやりたいって言っているから大丈夫だ、と答える。
そして雑巾を絞ってから清掃した。
「私1人だけじゃなかなか片付かない部分もあるから」
「お前。.....どうやってこの部室は成り立っている?」
「他にも2人居るけど今日は体調不良で休んでる」
「.....そうなんだな。そりゃしゃーない」
そんな会話をしながら本を片す。
すると、その。長門くん、と聞いてくる。
俺は、?、を浮かべて佐藤を見る。
佐藤は、嫌な事でもあった?、と聞いてくる。
何でそう思うんだ。
「俺は何時も通りだぞ」
「いや。それは違うよ。.....分かる。長門くんを見ていたしね。中学時代は。それに右手の小指を上げる癖が出てるしね」
「.....お前は俺のママンか?」
「お、お母さんじゃないよ!?」
いや.....正直そこまで観察されていると不気味だ。
何?お前も俺が好きなの?、と聞きたい部分でもある。
すると鈴木が、佐藤先輩。分かるんですか?、とノリノリで聞いてきた。
佐藤はビクッとしながらも、うん、と答える。
「.....長門くんと結構一緒だからね」
「そうなんですね。じゃあ先輩の良い所を教えて下さい♪」
「おい。鈴木」
「良いじゃないですか。アハハ」
するとその言葉に佐藤は語り始める。
いや語らなくて良いのだが。
ポツポツと、だ。
雨でも落ちてきそうな感じである。
「長門くんの良い所は守るんだよ。何もかもを。それからとても優しいから」
「.....ヒーローですね。やっぱり昔から先輩は」
「恥ずかしいって!」
「先輩を好きになって良かったです」
「言うなって!」
不純異性交遊の場じゃないんだけど.....、と佐藤は困惑する。
いや。不純異性交遊を好んでやっているんじゃないんだけど。
俺は顔を引き攣らせながら佐藤を見る。
まあ、と佐藤は言いながら咳払いをしてから鈴木を見る。
「鈴木さん。長門くんはアリだと思うよ。好きになって」
「ですよね!.....先輩は優しいですし」
「お前ら.....」
俺は額に手を添えながら見ていると。
それはそうと長門くんは何を悩んでいるの?、と複雑な顔で聞いてくる。
その言葉に俺は溜息を吐いて、まあ昔のツレの話だよ、と雑巾で床を拭く。
佐藤は、そうなんだね、と雑巾を握る。
「.....例の?」
「そうだな。まあでももう大丈夫だ。みんな居るしな。お前も居るから。すべて乗り越えられる筈だ」
「それだったら良いけど.....本当に大丈夫?」
「ああ。.....過去は過去だ。もう忘れようと思うしな」
そうしているとスマホに電話が。
見ると森本であった。
俺は断りを入れてから直ぐに出る。
すると.....何故か知らないが。
山部が出た。
『こんにちは。長門』
「.....お前は何をしている。森本の携帯電話に何故お前が出る」
『簡単に言えば復讐?かも。何だかアンタに対して怒りを覚えるから。アンタの周りの世界を破壊しようって事になったの。翼と一緒に。森本さんだっけ。森本さんは今私達の前に居るけど』
「.....そうか。成程な。聞いても良いのか知らないが森本は大丈夫なのか」
『平手打ちを一発かましただけ。話し合いがしたい。西公園のトイレに1人で来て』
「お前!!!!!」
絶叫する。
だが電話はそこで切れた。
俺は歯を食いしばってからそのまま部室に入る。
それから心配げな顔の鈴木と佐藤を見る。
「すまないが。俺は帰る」
「.....何があったんですか?先輩」
「森本が捕縛された。.....俺の昔の連中に」
「え?!」
それって。け、警察に言わないと!、と佐藤が慌てる。
俺は首を振る。
それから、それは最終手段だ。先ずは話し合いがしたい、と言う。
俺もそれ相応に言いたい事がある。
全く.....この逆恨みの様な。
「先輩。本当に大丈夫ですか。これってマズいですよ。先生とかに頼った方が」
「確かにそうだが。でも大ごとにしたくない。俺の問題を」
「.....」
「だから俺だけで行って来るから。昔の事に蹴りをつける意味で」
「そ、そうですか.....」
俺が戻って来なかったりしたら警察とか先生に言ってくれ。
だけど俺は必ず説得するから、と言う。
それから俺は雑巾を畳んだ。
そして佐藤に渡す。
すまん、と言いながら。
「良いけど.....長門くん。不安だよ」
「俺の仲間だったヤツなんだ。そして昔のツレでもあるから。俺しか決着がつかないと思うしな。こればっかりは仕方が無い」
「.....」
「という事で佐藤。鈴木を宜しくな」
そして俺は部室から飛び出した。
すると下駄箱の付近に.....何故か羽田が居た。
羽田は俺を見るなり寄り掛かっていた下駄箱から離れる。
それからおれをみてくる。
「正直君ならこういうだろうね。俺だけで十分だって。だけどそうはいかないよ。ユナは俺達の友人でもあるから。今回は手出しをさせてくれ」
「.....何処で知ったんだ」
「ユナと一緒に雪子が帰っていたそうだ。それで忘れ物を返そうと角を曲がって行ったら誰かと一緒に歩いて行くユナを見たそうだ」
「ハァ.....。いや良いけど.....」
それに君だけを危険な目に遭わせるのも如何なものかなって思うからね、と羽田は俺を見てくる。
君の事だ。警察とかにも頼らないんだろ?、とも。
俺は頷く。
そして、過去に蹴りをつけて説得したい、と言った。
「相変わらずだね。君は。.....まあこんな俺が戦力になるか分からないけど一緒に行くよ」
「マジに知らんぞどうなっても」
「それは承知の上だ」
それから俺と羽田は森本が軟禁されていると思われる西公園のトイレに向かった。
そして公園に入るとそこに翼。
つまり佐藤翼が居た。
羽田を見て眉を顰める。
1人で来いっつったろ、と言う。
「そういう訳にはいかないな。君が何処の誰かは知らないけど森本ユナは俺達の友人でもあるからね。話し合いをするのは長門だけだ」
「.....そういう事だ」
「あっそ.....まあもういいやそれならそれでも」
コイツは変わらずだな、と思いながら佐藤を見る。
佐藤は欠伸をしながらボリボリと後頭部を掻きながら俺と羽田をそのままトイレの裏側に連れて行く。
丁度、垣根が有る様なところ。
そして見ると.....ハンカチらしきもので後ろを縛られた森本が居た。
俺はそれを見ながら怒りを覚えたが。
落ち着け、と言い聞かせる。
とにかく今は、と思いながら。
佐藤を見る。
「まあでもこれって復讐では無いけど。ただお前の言動とかが何だか偉そうな感じで気に食わないからボコボコにしようって話」
「.....それで森本を傷付けて良い訳が無いだろ。犯罪じゃねーか!」
「正直、森本?だっけか。其奴はどうでも良いんだわ。お前を一発だけでも殴れれば」
「あのな.....」
話し合いの道筋が遠退く。
俺は、どうしたものか、と思いながら額に手を添えた。
それから森本に駆け寄る。
森本は頬を叩かれたせいで赤くして居た。
ゴメン、的な感じで見てくる。
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