劉備陣営にきたばかりの諸葛亮孔明。趙雲の部下である叔至は横柄に見える孔明の態度が気に食わない。苛々を押さえるため、手記を付け始める。そのころ、孔明も自らの馴染めなさに手記を付けていて――。ふたりの目線から語られる、牧知花三国志最初の一篇。「陳叔至と臥龍先生の手記 」
ワーカホリックな孔明を外出に誘った趙雲子龍。まさかのふたりきり!? それに向かう先は山!? どうやら趙雲が連れていきたい場所は山の頂上にあるとのこと。一体、そこに何があるのか――。読後、心に清々しいばかりの風が吹く。心のつながりを描いた秀逸な「青嵐に笑う」。
今晩中に書類を作成し終えねば、商人から三割引きにて買い取れなくなる。必死に書類作成に追われる孔明。そんななか、屋敷に「ねずみ」が入り込んでいて――? ポップに進むかと思いきや最後にはどんでん返しが。人間どうなるかわからない。人間賛歌をつらぬく「ねずみの算数」。
以上の三編で、この作品は構成されている。どれも、新野に来たばかりの孔明の物語。
語り口は、明快でリズムよく、読みやすくて、夢中になって一話一話読めてしまう。それに、なにより、キャラが濃い! もともと三国志のキャラは濃いのかもしれないが、当作の趙雲の粋なかっこよさと孔明が時折可愛くみえるくらいの抜け感が、たまらない。ふたりが最高のコンビに思えてくる。
三国志にあまりくわしくなく、それでも過去に三国志で面白い作品に出合ったことがあり、ついタイトルにつられて読んでしまったが、まったく問題なかった。それどころか、ぐいぐいと牧知花三国志世界に引き込まれる。ちょいちょい、思わずくすりとさせられながら、キャラの心情に寄り、語られる作品に、次第に趙雲と孔明のこのコンビこそいいかもしれないと、思わせられてしまい――。というか、本当に、この作品の趙雲はいい男だ。かっこいい。
未読のかたはぜひ、牧知花三国志を手にとっていただきたい。一緒に趙雲さまに心やられようぜ!
魏・呉・蜀の三国が天下の覇権を争った三国時代。
蜀の建国者かつ武将である劉備によって、荊州の州都・隆中からかの有名な軍師、諸葛孔明が招聘された。
劉備の主騎であった趙雲は諸葛孔明とともに行動するようになるが、話をしたり仕事をこなしていくうちに、お互いのことを知っていく。
一時的な平和を得ているものの、時は戦国。戦に、事件に、様々な厄介事に巻きこまれていくふたりの行く末は――。
古代中国、三国志を舞台にした作品です。
三国志といえば、難しい、複雑だ、などというイメージが持たれがちですが、本作は非常にわかりやすくかつユーモアに生きる偉人たちの姿が描かれています。
なかでも登場人物の掛け合いが面白く、思わず笑ってしまうことも。
個人的には諸葛孔明さんと趙雲さんのコンビが激推しです。
本来なら漢字を使う表現もあえてひらがなで書くことで、文章中の漢字の数のバランスが保たれており、読みにくく感じることはなかったです。
初めはなかなか相容れなかったふたりが関わるようになり、友と呼び合えるような関係になるまで。
史実の裏で繰り広げられる友情の物語、必見です!