爆音のなか

 クラブに行った人は分かるが、クラブはとにかく五月蠅い。

 人と会話するためには、耳元まで口を持っていって、わりと密着するか、耳を傾けて、なんとか聞き取ろうとしないと、コミュニケーションが成立しない。あまりにやかましいので、クラブで会話してわいわい盛り上がりたい場合は、たいてい外にでるか、バーカウンターに行くしかない。しかし、ストンプなどのクラブはバーカウンターでも会話が成立しない。階段あがって、外に出るしかない。しかし、外に出ても、あんまり人がたまると近所迷惑になるから、遠くへ行って会話してくれと言われる。だから、ストンプから離れてトコトコ歩いて、長堀通のあたりまで出て、話をするのだ。

 そんなクラブだけれども、人は眠れるときは眠れるのだ。

 チプルソがストンプでライブしたとき、華金ってイベントの最後のチプルソ出演だとは思うのだけれども、そのとき、一番最前列でチプルソ聞いてる人が睡魔で立ったまま眠りかけていたのを見かけた。演者にとってはショックなことだけれども、人間、睡眠欲は食欲や性欲より上だと思う、どのような爆音下でも眠るのだ。そういえば、フランクルの「夜と霧」でも、人間はどんな環境でも慣れるのだということを、睡眠をまず持ってきて書いていたな。

 僕も友達のDJのイベントに行ったとき、立ったまま睡魔に襲われて、ぶっ倒れかけて壁に突撃したことがある。眠い風にみせないように、なんかごまかしたのだが、DJが目の前にいて、踊っても、踊りながら人は眠るのだ。

 いまはそんなに眠くならないが、強烈なストレス環境から解放されるか、ストレス環境に耐えられない状態になると、人は眠るのだ。あと、何を言っているかいまいち理解できない会話にさらされると眠るのだ。

 眠くなったときの対処法は身体を動かして体操すること。リモート会議とかは、体操しながら聞いている。それでも眠いときは、知らない人に話しかけること。それでも眠かったら諦めて帰ることだ。


 谷町線で眠りこけ、八尾南と大日のあいだを何度も往復して、最後の復路で目が覚めて、無事に家に帰れたことがあった。もしあのまま八尾南で取り残されていたら、どこかアパホテルを探すしかない。しかし八尾南周辺には何もないという。

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