底辺回復術士Lv999 ~幼馴染を寝取られて勇者に追放された僕は王女様達と楽しく魔王を倒しに行ってきます。ステータス2倍のバフが無くなる事に気がついて今更戻ってこいと言われても知りません~
第14話 よくある収納魔法とか、無自覚の主人公達の話
第14話 よくある収納魔法とか、無自覚の主人公達の話
ヒルデを付け狙った魔族を滅ぼすと、ダンジョンに引き込まれた時の様に、視覚が歪み、周りが真っ白になった。術者である魔族が滅びたのだから異空間に閉じ込められても良さそうなのだが、そんな事はないのである。都合上…
僕達は街に引き返すとギルドに寄った。ミッションの成果である薬草を確認してもらい、成功報酬を受け取る為である。こうやって、ミッションを成功させて、地道な努力によって、冒険者はランクが上がっていくのである。ランクは基本AからFまであり、例外としてS、SS、SSSクラスなんてものもあるそうだ。もちろん僕達新米冒険者は一番下のFランクだ。
「薬草以外のものも買い取ってもらえるといいね」
「そうですね。たくさんアイテムがドロップしましたから、買い取ってくれると嬉しいですね」
ダンジョンの魔物を倒すと魔物の核である魔石と、ドロップアイテム、そしてこの国の通貨であるディナール金貨が出て来るのである。魔物は消えてしまう。ドロップアイテムにはお肉等が出る事もあり、オーク等は極上の豚肉によく似たお肉が手に入る事がある。もちろん、僕達は最極上のロイヤルオークのお肉を手に入れたので、今日はヒルデがロイヤルオークのお肉で夕ご飯を御馳走してくれる約束だ。
ギルドの中に入るといつかの不良冒険者、確か銀の鱗とかいう三人組がいた。
「お前達はこの間の…」
また、ヒルデにまとわりついたり、それとも因縁をつける気か? 僕は思わず身構えた。
「この間はよくもやってくれたな」
「そうだ、お前、絶対、魔法を完全に遮断する魔道具に、魔法を完全に妨害する魔道具に、物理攻撃を完全に遮断する魔道具に、移動を完全に一瞬で終わらせる魔道具を遣ったろう?」
魔道具多いな…て言うか、そんなのあったら、レベル1の勇者一人でも魔王を倒せるんじゃないか?
「あの、僕達、新米冒険者なので、その節はすいませんでした。今日は薬草採集のミッションを無事終えて、これから納品とミッション完了の認定を受けるのです」
「何? 薬草採集?」
「ふっ、ふっ、ぎゃはははははっははっは!?」
「薬草採集? お前らそんな事やってたのか?」
薬草採集馬鹿にする? 薬草が無いと、お医者さんが困るんだぞ。風邪引いても薬出してもらえなくてもしらないぞ。しかし、大人な僕は荒事にならない様に慎重に対応する。
「まだ、初心者なので、Fランクなんです」
「そうか、じゃ、やっぱりあれは魔道具だったんだな。ズルだったんだ」
「そんな処です」
不良冒険者は面目を取り戻すと何故か気を良くして、他の場所へ行った。
「良かったです。また、絡まれるかと思いました」
「大丈夫だよ。いざとなったら、僕がヒルデを守るから」
ヒルデの頬が赤くなる。困った、また好感度をあげてしまった。できれば下げたい。今度、ドラゴンの巣に突き落とそうか?
僕達は受付へ行き、いつものお姉さんに薬草採集完了の報告をした。
「アル君とヒルデちゃん、無事で良かったわね。いや、あなた達ならどんな依頼でも簡単なんでしょうけど、油断は駄目よ。優秀な冒険者もちょっとした油断で命を落とす事もあるのよ」
お姉さんの言う事は身を染みてわかった。ついさっき、ステータスの低い魔族と侮って、死にそうになったばかりだ。
「薬草100枚、確かに、それにしても随分綺麗な状態ね。まさか、あなた達、収納魔法が使えるんじゃないの?」
ある意味良かった。ヒルデとも話したんだけど、収納魔法がとんでもなくレアなものだったらどうしようと思ってたんだ。ヒルデの勇者パーティでも僕の勇者パーティでも、使える人は半数位はいた。でも、一般的にはどう? ていう話だ。幸い、お姉さんからふってくる位だから、それ程非常識なものではないらしい。
「実は収納魔法が使えます」
「私も…」
「やっぱりね…レベル999に勇者だとある意味当然なんだけどね」
「あの、それで収納に魔物の魔石やドロップアイテムがあるんですけど、買い取ってくれたりするものなんですか?」
僕は期待した。薬草採集だけだと宿代すら危うい。今回は幸いダンジョンに引き込まれるという幸運に恵まれてたくさん金貨を手に入れる事ができたけど、次回はこうはいかない。
「できるわよ。大抵のものは値がつくわよ。鑑定してあげるから、出してみなさい」
「本当ですか? ありがとうございます!」
そして、僕が収納魔法からダンジョンで手に入れたアイテムや魔石を台の上に並べ始めると、例の不良冒険者がまた近づいてきた。
「おい、お前!!」
僕達と受付のお姉さんの間に炎のシュレンやらが無理やり割り込んで来た。
「お前、収納魔法が使えるのか。容量はどれくらい収納できるんだ?」
相変わらず横柄だな。いきなりなんなんだ?
「すいませんが、禁則事項です」
「おい、お前! ふざけんなよ」
僕達は困って、受付のお姉さんを見るが、ニコニコするばかりで、他人事みたいに見ているだけだった。
しかし、不良冒険者を何とかしないと、ヒルデも怯えている。周りを見渡すが、結構な数の冒険者がいるのに、皆、よくあるもめごとに新人がどう対処するかと面白半分で見守っているだけなんだろう。
「すいませんが、今、戦利品を鑑定してもらう処なんです。後にして頂いてもいいですか?」
「ふん、無礼はまあ、許してやろう。それだけの量の収納魔法が使えるんだ。お前達を特別に俺達のパーティに入れてやるから喜べ。荷物持ちとしても使ってやるぞ」
「お姉さん、鑑定をお願いしてもいいですか?」
「仕方ないな、待ってやるかな」
良かった。怒らなかった。でも、この勧誘、どうやって断ろう?
「えっと、先ずは伝説のアースドラゴンの魔石が3個に…」
ギルドのお姉さんが一言発したとたんにギルド中の空気が固まる。
「(((((そんな訳があるかああぁっ!!))))) 」
ギルドにいた冒険者と職員が、全員心の中で突っ込んだ。
「ファイヤードラゴンが2個にアイシクルドラゴンが2個、それにこれ、私も初めて見るけど、もしかして魔族の魔石?」
「はい、そうですけど?」
「(((((ガタガタガタガタガタッ!!))))) 」
ギルドにいた冒険者と職員が、全員想像を超え過ぎて思わず、ずっこける。
「魔族って、勇者しか倒せない筈じゃなかったっけ?」
お姉さんは冷静に分析する。
「ごめんなさい。ヒルデちゃん、勇者だったわね」
「(((((ありえねぇ!! ありえねぇ))))) 」
ギルド中が阿鼻叫喚の地獄と化した。何でこんな処に勇者がいるの?
ヒルデは凄い勢いでアピールしていた。止めて、魔族を倒したのが僕だと余計にややこしくなりそう。
冒険者同士で、互いの能力を詮索することは御法度だ。みんなそれはわかってはいるが、規格外の新人に興味がない訳も無く、みんな耳をダンボにして僕達に向けて聞いていた。
僕はとりあえずヒルダの口を塞いだ。
「―――――~~~~ッ!!!!」
「仲がいいのね」
お姉さんは微笑みながら、僕達を見つめ。
「初めての薬草採取完了おめでとう。多分君達はFランクから昇格するわよ」
「あ、ありがとうございます」
「は、はふがとうごさいます」
ヒルデは僕が口を塞いでいるから変な声になっている。
「え、Fランク…初めての薬草採集で…魔族討伐…」
誰かが言った。
「「「「えええええええ?」」」」
驚愕の声が、他の冒険者達の間から上がった。
「なあ、お前ら本当にFランクの冒険者なのか? ホントはどっきりとかじゃ?」
例の不良冒険者だ。忘れてた。
「いやですね。僕達は立派なFランク冒険者ですよ」
「そうれす。はしめ、ふがふが」
何故か不良冒険者銀の鱗の三人は僕達を勧誘する事を忘れたかのようにギルドを去って行った。
良かった。しかし、
「なんて素敵な男性なのでしょう。こんなに強いのに、低姿勢で、優しそうで、素敵…」
ギルドのお姉さんが何故か恋に落ちていた。誰に恋したんだろう?
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