底辺回復術士Lv999 ~幼馴染を寝取られて勇者に追放された僕は王女様達と楽しく魔王を倒しに行ってきます。ステータス2倍のバフが無くなる事に気がついて今更戻ってこいと言われても知りません~
第5話 野良の王女ブリュンヒルトに追い掛け回される
第5話 野良の王女ブリュンヒルトに追い掛け回される
僕は女の子を無事まく事が出来て安心する。既に1kmは離れた路地にいる。流石に探知のユニークスキルでも持っていない限り、発見される事はないだろう。
安心して僕は次の行動に移った。あの女の子は見た目が凄く可愛いかったが、脳に故障が生じているらしく、パーティを組むには問題だった。だけど、やはり仲間は必要だし、これから僕は稼がないと生きていけない。以前は勇者パーティだったから、ほとんどの街のサービスは無料だった。勇者パーティの証を見せればいいだけだったんだ。
「やはり、冒険者になるしかないかな…」
僕は決断していた。冒険者となって、路銀を稼がなければ。その為に行うべきは冒険者登録だろう。そう思って、冒険者ギルドの建物に入る。
まさか、上手くまいて、諦めているだろうと思っていた、例の女の子にあっさりとやすやすとすんなりと、ばったりとでくわしてしまった。
「あっ!? しまった!?」
「ああ! 女神様、感謝します!」
女の子はなぜか抱き着いてきて離れようとしない。何とか引きはがして、再び僕は言った。
「ねえ、君、また目を瞑ってくれないかな?」
「そんな事言って、また逃げるつもりではないですか? 嫌ですよ、次に逃げられたら私、泣きますよ、盛大に泣きますよ、『あなたが私を捨てたって!』」
「ええっ、それじゃ、僕が君を捨てたみたいに誤解を受けるよ!?」
僕にも体裁がある。そんな事言われたら、僕がこの子をいいようにして捨てたみたいじゃないか?
「わ、わかったよ。逃げないよ。だから、パーティ組むのだけは勘弁して?」
僕は単刀直入に言ったが、しまった。女の子は既に目に涙を浮かべていた。
「わ、わかったよ、わかったから泣かないで、僕は女の子の涙に弱いいんだ」
「パーティーに入れてくれるまで離さないですからね!」
女の子はそう言って、しがみついて離れない。仕方なく、彼女をパーティに入れる事を承知する。
「わかったよ。僕のパーティに入ってくれるかな? その代わりに離してくれないかな?」
「本当にパーティに入れてくれるのですね? 逃げたりしませんよね?」
ギクりとするが、騙しても構わないだろう。だって、僕、何も悪い事していないよね?
「逃げたりしないから、ちょうど僕、冒険者ギルドに登録しようと思っていたから、一緒にどう?」
「あ、ありがとうございます。そうだ、私の名前はブリュンヒルト・アーレンベルク、フランク王国の王女で、勇者をしています。ヒルデって呼んでください」
「えっと、王女様で、勇者様ですか?」
ああ、やはりこの子は脳に病か故障が…フランク王国は半年ほど前に魔族に滅ぼされた国だ。確かに黒髪の人が多いとは聞いているが、王族がこんな処にいる筈が無い、それに勇者って…
「とにかく冒険者登録をしましょうよ。私もちょうど登録しようと思っていたし、パーティも組みたかったんです」
「わかったよ。ちょうどギルドだし、登録しよう。そうだ、僕の名前はアルベルト、アルって呼んでね」
僕は覚悟した。この可哀そうな頭のねじが飛んだ子は僕が保護しないと多分酷い目に遇うか、人を酷い目に遇わせる。僕が責任をもって保護及び被害拡散防止の犠牲になろう。
そして、冒険者ギルドの受付に行く、そこには僕達を助けてくれたあの冒険者ギルドの職員がいた。
「あら、あの時の子達ね? 見た事がないから、もしかして冒険者ギルドに登録するつもり?」
「あ、はい。このギルドにお世話になろうかと思いまして、お姉さんの処のギルドなら安心できます」
冒険者ギルドの職員さんはにっこりと笑顔になって、僕達に微笑みかけてくれた。良かった、いい人そうだ。なにぶん、冒険者なんてした事がないから、不安だったんだ。
「えっと、先ずは名前と職業、もし『才能』の所有者ならそれを教えてちょうだい。職業を決めていないなら後で変更も可能だから大丈夫よ。それとレベルも教えてね。申告は正確にね、後で魔法の水晶で確認するから、嘘を言うと登録できないから注意してね」
「ええっ? あ、はい、わかりました…」
僕は声が小さくなった。僕、レベル999なんだけど、ホントの事を言うべきかな? それにヒルデは妄想癖だけでなく、虚言癖も持っている様で絶対水晶でバレて困るよね?
「早速、あなたの職業とレベルを教えて頂戴」
ニッコリ微笑む受付のお姉さんに僕は少しどもりながら、小さな声で言った。
「名前はアルベルト、底辺回復術士でレベル999です」
「…はぃ?」
お姉さんの顔色が曇る。
「あ、あの嘘は言っていないんです。本当です! 信じてくださぃ」
「い、いや、あなたが嘘を言うよう子には見えないけど…可哀そうに…」
どうも可哀そうな子と思われた様だ。違うんです。可哀そうなのは僕の隣のヒルデだけなんです!?
「じゃ、となりの女の子、あなたは?」
お姉さんが沈痛な面持ちでヒルデに聞く。
「あ、はい、私はブリュンヒルト・アーレンベルク、勇者でレベルは20です」
「あっ、そう、良かった、この子は正常なのね…えっ? 勇者?」
お姉さんが気がついてしまった。勇者なんて王女様よりもっとそう簡単にいる筈がない。そもそも勇者は魔王戦に投入される貴重な『才能』の持ち主。冒険者なんてしていない。野良の勇者なんている筈がないんだ。
「はぁあああああああああ」
お姉さんがため息をつく。
「あ、あのすいませんです」
「あなたにそれ言う資格ある? というか自覚あるの?」
「いえ、僕は嘘は言っていないんです。ヒルデと違うんです。信じてください」
受付のお姉さんは僕の顔をまじまじと見ると、呟いた。
「いっそ、嘘ならいいのだけど、重症なのかしら? 二人共若いのに、きっと辛い事があったのね。いいわ、とにかく魔法の水晶で確認するから。特別に嘘、というか病気は一回だけは見逃してあげる」
僕、別に厨二病じゃないよ。ヒルデだって脳が故障しているだけなんだから。
お姉さんが水晶を用意すると、二人の鑑定が始まった。どうやら魔道具で鑑定を行い、ステータスを確認するらしい。
「さあ、先ずはアルベルト君、この水晶に手をかざして」
「はい、わかりました。こうですか?」
「そうよ、えっと……」
お姉さんが固まった。
「えっ? 嘘、そんな事って、信じられない」
お姉さんはどうも僕のステータスを見て驚いている様だ。水晶はステータス魔法を魔道具にしたものの様だ。僕のステータスが水晶に映った。
お姉さんは驚愕した顔で僕の方を見るが、そこは流石プロ、直ぐに表情を戻すと、ヒルデに声をかけた。
「ブリュンヒルトさんもここへ手を置いて頂戴。大丈夫よ。怒ったりはしないから」
「はい、こうですか?」
ヒルデが水晶に手をかざすと、そこにはヒルデのステータスが浮かび上がった。
【名 前】 ブリュンヒルト・アーレンベルク
【年 齢】 16
【才 能】 勇者
【レベル】 20
「ホ、ホント…だなんて…な、何て、…子達なの…」
「ええっ!? ヒルデってホントに勇者なの? その上、ホントにアーレンベルク家って、まさかホントにフランク王国の王女様?」
ヒルデはニッコリ僕に微笑みを返すが、僕は慄然とした。だって、野良の王女様って、絶対とんでもないトラブルメーカーだよね?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます