隣国の第二王子を攻略する?

誤字報告ありがとうございます。

助かります。

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花祭り休暇もおわり、領地に帰っていた生徒たちも学校へと戻ってきた。

各地のお土産が親しい者たちの間で行き来していた。

ジュリアンは第一王子という事もあって各地のお土産をどっさりと貰っており、同室のカインはそのおこぼれに与って大量のお菓子を手に入れた。


ジュリアンとカインの二人では食べきれない量だったうえに、あまり日持ちのするものでもなかったので実家のディアーナとイルヴァレーノに送ってやるわけにもいかなかった。

お菓子の消費を促進するために、放課後に級友たちと食堂でお茶の時間を過ごす日々がしばらく続いた。


級友たちとの親交を深めていると、段々とこの国の気質や国民性などが見えてくる。

現在は戦争もなく、天候も安定しているようで学校の生徒たちはみな優しく穏やかな人が多い。

仲の良い友人も出来て、カインはサイリユウムの貴族学校にだいぶ馴染んできた。


それでも、カインは早く自国に帰りたい。

ディアーナを悪役令嬢にしないために、良い子に育つ様に見守るという使命があるのだ。

父親はだいぶディアーナに甘い。仕事が忙しいのとカインがディアーナにべったりで父親に譲らなかったせいで、たまにディアーナと遊べるとなるとベタベタに甘やかす。

淑女として過ごす様になってから、奔放に行動しなくなった分のストレスはイルヴァレーノに託してあるが、イルヴァレーノはアラサーの前世の記憶を持っているカインと違って普通に十二歳だ。

イルヴァレーノは出自がちょっぴり特殊なために大人びてはいるが、大人相手にうまく立ち回るというのはなかなか難しいとカインは思っている。

執事のパレパントルにそのイルヴァレーノを託したが、パレパントルは父に雇われているので最終的には父に付く。


そういった諸々の心配事があるので、とにかく早く自国に帰りたかった。

最速でスキップを繰り返しても卒業までは三年ある。


夏季の休暇と年越し休暇は長めの休みなので実家に帰ることはできるが、片道七日もかかるので実家に居られる期間は少ない。


ただ、カインもディアーナを思って嘆くばかりではない。

せっかく隣国であるサイリユウムまで留学したのだ。攻略対象側に対してアクションを起こすことは出来る。

ここには、ド魔学の攻略対象の一人であるジャンルーカがいる。幸運なことに、先日の遷都予定地の視察でカインはジャンルーカと知り合うことが出来たのだ。


ゲームでは、国交を強化するのに第二王子とディアーナの婚約の話が出る。

しかし、ゲーム主人公に好意を持っていた第二王子はディアーナを兄王子の側妃に推薦してしまうというシナリオになっている。

それだけなら、まぁさほど不幸でもない。

貴族の令嬢ならば政略結婚になってしまうことは良くある話だし、良くある事だからこそ婚約してから・結婚してからお互いを知り、愛を育てていくという夫婦も多い。

しかし、ゲーム内では隣国の第一王子は女好きですでに正妃も側妃もいる状態だというのが問題だった。

ディアーナは見たことも無い男相手に愛のない結婚を強いられるというのが問題だった。


この、ディアーナが不幸になるフラグを潰す。

望んではいなかったものの、せっかくこの国に乗り込んでくる事が出来たのだからやれることはやっておこうと思ったのだ。


「でもなぁ。確かにジュリアンは事あるごとに女の子を連れ込もうとするけど、明らかにシルリィレーアの事が好きなんだよな…」


ジュリアンは、自分から女の子をナンパすることはなかった。

女の子から声を掛けられた時に、無碍にしないだけだ。女の子を寮の部屋に連れ込もうとするのも、シルリィレーアの目に入るところで女の子とイチャイチャするとシルリィレーアに悪いからという遠慮からの行動なのだそうだ。

気を使う場所を間違えている。


「ジャンルーカも、素直でいい子なんだよなぁ」


とても、好意を寄せてきた女の子を別の男(兄)に押し付けるということをするようには思えない。

頑張っているが大人に翻弄されてしまっている兄への、後押しのつもりでディアーナを譲ったのではないかという予想をカインはしているぐらいだ。


この状況で、何をどうすればディアーナは隣国へ嫁がなくて済むか。

カインは頭を悩ませている。

ジュリアンもジャンルーカも、知り合ってみれば悪いやつではない。

おっぱい大きい娘に弱かったり正婚約者のシルリィレーアに素直になれなかったりするジュリアンだが、十二歳の男の子だと思えば……思春期の入り口にいる男子だと思えば大きく歪んだ人間であるとはとても言えない。


カインの考える限りでは、

ジュリアンにさっさと三人の側妃を決めさせて、枠を埋めてしまうという案。

シルリィレーアに対して素直になるように仕向けて、側妃を不要と思わせる案。

ジュリアンの国内での立ち位置を確固としたものにして、ジャンルーカに気を使わせないようにする案。

ジュリアンを懐深い男にして、正妃含めて四人の妻を満遍なく愛し大切にできる男にする案。

これぐらいしか思いつかなかった。


しかも、シルリィレーアを溺愛させる方法については思いついた直後に実行不可能であることが判明している。

側妃を取るのは義務なのだ。

三人の側妃を持てる。ではなく、持たなければならない。なのだ。


サイリユウムの歴史の授業は近代から始まってさかのぼっていくという授業方式だった。

歴史の授業によれば、やはり王家の跡継ぎ争いは時々発生していて、不幸な事になっている王妃や側妃が度々発生している。

とてもじゃないがそんな国にディアーナをお嫁にはやれない。

なぜ、そんな火種になる法律をわざわざ施行しているのかカインは不思議だった。


子どもに恵まれなかった時に、はじめて側妃などについて考えればいい話だし、その場合は側妃も持てるという法律で良いはずだ。

王位継承順位のルールを厳密にしておけば、国王が子に恵まれなくても、王弟や王姉の子などに国を継がせたって良いはずだ。


カインの疑問は、放課後に級友たちと勉強会をしている時に判明することになる。

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