ワイヤーシード エピローグ
ゆっくり呼吸を整える。
「さてと……」
ミクリは立ち上がると車内にいる仲間の安否を確認します。
ザイゼンと運転手は未だ気を失ってはいますが、呼吸は安定している様子。
「たっくんは…………もう帰った?」
「まだいるって!」
だそうです。
「ああ、ごめんね。助かった、ありがとう、はい投げキッス、チュッ♡」
「姉御、そういう所あるよな。ほんっと、神使い荒いんだから……」
「今度アリアに言っといてあげるから、たっくんカッコ良かったよって」
「まあ、それだったら別に良いけどさ」
たっくんは消えるように帰っていきました。
…………。
ミクリの目線は自然とユイの方へ向きます。
全身焼け焦げで……ズタボロで……腹部には大きな穴も空いていて……。
この小さな女の子に手を掛けてしまったのだと思うと、やり切れない感情が込み上げてきます。
でも唯一救いだったのはユイの身体から魔力が感じられるという事。
恐らくコアは軽傷で済んだのでしょう。
項垂れるように眠るユイの頭に優しく手を置く……。
吸った息をゆっくり吐くと。
「オブジェクト変更」
ユイの身体が発光……。
更にみるみる小さくなっていきます。
不良部分を全て捨て去って……。
光が消えたら、こじんまりと手のひらサイズで生まれ変わりました。
背中に装備されたゼンマイ仕掛けをくるくる巻いたら。
「あ、あれ……?」
ユイが目を覚ましたのです。
「目覚めはどう?」
「うわあ! 巨人女ー!!」
「誰が巨人女だ!」
「え? あ、あれ? ああー! お前ミクリ!? お前わたしに何かしたのか!?」
「ごめん、こうするしかなかったの。でも元はと言えば貴方が変な植物を持ってたからいけないんだからね」
「それ言うのひどい! わたしだって何も知らなかったんだから! もー、こんな身体になって、一体どうしてくれ――」
背中のゼンマイが止まったようです。
「よし! うるさいし、とりあえずこのままにしておこう」
そうは言いますが、ユイが無事に生き返ってくれた。
それはミクリにとって果てしない程の救いだったのです。
ヴー、ヴー、ヴー。
携帯端末に着信がありました。
確認すると、ショートメールが届いています。
その内容に驚愕するミクリ。
"カレンさんを保護している。芦ノ湖で待つ。"
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