怪しい絵画展 2
キャンバスの中に泣き叫ぶカレンの姿が浮かび上がります。
「アハハハハ! カレンちゃん……嗚呼、カレンちゃん。この子はもう私の物」
アカネは高笑いしたかと思うと、なめるような視線を向けてキャンバスに写るカレンを撫でまわします。
「貴様あああああ!!」
ドスを効かせた声を出し銃を向けるミクリ。
「あら、あらあらあらあらあらあらあら! そんなブレブレの銃口を向けて良いの? カレンちゃんに当たっちゃったらどうするの?」
「くっ!」
ミクリの銃には特殊な銃弾が装填されています。
撃ち抜いた対象に激痛と細胞再生を同時に与えるそれは……決して人を殺すことのない特別製の銃弾。
しかし、今のカレンは得体の知れない魔法で絵となってキャンバスと一体化している状態。
もしカレンを撃ち抜いてしまった場合……上手く細胞再生が働くか定かではありません。
「それよそれ! その絶望に満ちた顔。そそるわあ……」
「貴様の目的はなんだ! 私達になんの恨みがあってこんなことを!」
「恨み? そんなもの無いわ。私はあなた達を好きになった……だから私の作品に加えてあげる。ただそれだけのこと」
「まさか展示されている絵って全て……?」
「ご名答……。とっても可愛いメイドさん、あなたもすぐに私の作品に加えてあげる!」
キャンバスの中から新たな鎖が勢いよく迫って来ます。
自身の右手を縛る鎖を反対の手で掴むミクリ。
「オブジェクト変更!」
ミクリの魔法によって鎖がちぎれてバラバラになります。
透かさずアカネに向けて発砲!
「させない!
鎖で編み込まれた壁が銃弾を防ぐと、四方から伸びた鎖がミクリの両手足を縛り上げます。
再び絵の中へ引きずり込もうとする鎖。
ミクリは綱引きをする体勢で踏ん張りを効かせて耐えますが、引っ張られる力があまりにも強く……。
徐々に徐々にと絵に向かって近づいていきます。
今はカレンを人質にされているに等しい状況。
下手に反撃を試みると一体何をされるか分かりません。
現に今だって反撃に失敗し状況は悪化しました。
でもミクリにはある疑問が浮かんだのです。
一体なぜ? なぜこの
銃弾の速さに対応したという事は、おそらく彼女はウィザードを接種している。
その反応スピードがあれお嬢様と一体化したキャンバスを盾にして、私を絶望させることもできたはず……。
なぜそうしなかったの……?
「あなたミクリちゃんって言ったかしら? やっぱりあなたはとっても可愛いわ……。うんうん、とっても絵になる」
アカネは両手の人差し指と親指で長方形を作ると、その中へミクリの姿を収めて頷きました。
必死に抵抗し声が出せないミクリをよそに、アカネは筆で空気をなぞって余裕な態度を示します。
「安心して。あなたが私の作品になっても絶対あなた達を売り飛ばしたりしないから」
ミクリの中にはさらに別の疑問があります。
このキャンバス……なぜか違和感がある。
一体何? この違和感の正体は……?
ミクリは踏ん張りながらも自身を引き込もうとする先……。
そのキャンバスをじっと見つめます。
シグサリ アカネの作品はまるで生きているみたいだ。
彼女の絵を見た者は誰もがそう口にします。
それはミクリも否定しません。
現にキャンバスの中に吸い込まれたカレンは生きているような気がするのです。
それは信じたいという気持ちでなどでは無く、もっと確信に近いものです。
なぜ? なぜ私はそう思うの……?
…………。
…………!?
ミクリは気付きました。
絵に閉じ込められたカレンの瞳。
その瞳孔の開きが先ほどと比べてほんの1mmだけ大きくなっていることに……。
更にカレンの瞳に映る金色の何か……?
絵に近づいていくに連れて、ミクリの視力がそれを鮮明に捉えます。
「そうか……そうだったんだ」
ミクリはふっと笑みを浮かべました。
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