メイド達の出張業務 1
そして現在。
猛吹雪の中、今にも眠ろうとするミクリを叩き起こすアズサ。
二人は再び歩き始めます。
今回の任務は予算が決められているので箒には乗れません。
そして肌にガツンとくるような凍て付く寒さ。
かなり着込んでいるはずなのに冷気が突き抜けてきます。
さらに横殴りの雪がガンガン顔に当たって、その過酷さを物語っています。
ふと、口を開いたのはアズサ。
「あのさ。一つ聞いていい?」
「何?」
「今回の件って、私まったく関係なくね? 魔獣退治なんて聞いてねーよ!」
そう、今回アズサはあくまでミクリの付き添いです。
一緒に秘湯の温泉へ行こうと誘われて、まんまとこの場所へ連れて来られたのです。
「まあまあ、私たちってお友達でしょう? 絆ってやつよ絆」
「はあ?」
「それにほら、冒険にはフレンドって付き物じゃん。パーティのフレンド枠、分かるでしょう?」
「知らねーよ! 何がフレンドだ! 私は先輩、んでもってあんたは後輩だからね! それにこの状況で絆って連呼されるとなんか腹が立つんだけど……」
アズサは想像していた旅と丸っきり真逆の状況に不機嫌な態度をとります。
すると。
「あっ! 伏せて!」
唐突にアズサの足を払って頭部を積雪に押さえつけるミクリ。
そして自分も積雪の上へうつ伏せになります。
「ぐわ! おい! いきなり何を――」
「し!」
声を出すなと言わんばかりに人差し指を唇の前に立てるミクリ。
その時、凄まじい咆哮が轟きます。
そーっと、顔だけを上げる二人。
前方上空から滑空してやってくるのは翼の生えた大きな白い毛並みの獣。
「猫?」
と、ミクリが一言。
「いや、猫にしてはデカすぎだろ! 10トンと同等クラスの猫がいてたまるか!」
なぜかトラックの大きさで例えるアズサ。
「あっ、でも羽が生えてるから鳥かもしれない」
二人は若干の混乱を抱えていますが無理もありません。
それは猫のような生物なのに脇腹からはコンドルの羽が生えていたのですから。
ではここで、そもそも魔獣とは何かを説明しておきましょう。
基本的にはその名の通り、魔法の類を宿している獣の事です。
魔獣だろうと魔法の仕組みについては人間とさほど違いはありません。
魔力を体内に蓄え変換し開放する。このプロセスに則っています。
政府に管理された者達と違ってこれらには縛りがありません。
何でもありな分、実は人間相手よりも厄介な相手かもしれませんね。
互いに目くばせするミクリとアズサ。
「とりあえず一旦待つ?」
「そうだな」
『魔獣に出くわしたらとりあえず死んだふり作戦』が上手くいったらしく、二人に気付かないまま頭上を通り過ぎます。
飛んでいく方向からしてまた町を襲いに行こうとしているのでしょう。
「さーて、それじゃあ魔獣さんの可愛いお尻が見えた所で……先手必勝と致しますか」
ミクリは立ち上がると、魔法でミサイルランチャーを出現させて透かさず魔獣目掛けてぶっ放します。
ヒューン………………。
ドゴーン!!
「よーし、お仕事完了!」
「相変わらずこういう仕事は早いよなー、ミクリは」
アズサは思わず感心します。
「まあねー。もっと褒めてもいいんだよ」
「いや、あんたはすぐ調子に乗るからこれ以上は誉めない」
すっかり安心しきっている二人。
しかし、再び咆哮が轟きます。
「「……え?」」
なんと、魔獣は無傷だったのです。
そして二人の存在に気付いたらしく、方向転換すると……。
凄まじい速さでこちらへ迫って来るのでした。
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