ミクリの本質 2

 それはある午後の事でした。


 幼稚園終わりのカレンを出迎えたミクリ。


 二人は車内で仲睦まじく談笑をしていました。


「ねえミクリー、今日こそは見せてよー。鼻からメロンクリームソーダを飲み干すやつー」


「お嬢様も相当執念深いですね……。でもダメです」


「ええー! なんでよー!」


「あれをやったが最後、私のお給料がカットされちゃうんです」


「カット? 良いじゃん……カットされても」


「ダメです! もう……キサラギさんからも何とか言ってくださいよー」


 唐突に話を振られた運転手のキサラギは黒いスーツが良く似合う初老の男性です。


 彼は笑いながら提案します。


「はっはっは……では次月、カレンお嬢様がミクリさんを養ってあげるのは如何でしょう」


「わあ! それナイスアイディア! もしミクリのお給料がカットされたら、わたしがミクリを養ってあげる。だからやってよー」


「う、そう来ましたか……。それは少し心が揺らぐかも……。でもダメよ私! いい年して5才児に養ってもらうなんて、あまりにも格好悪いわ……」


 そこは流石のミクリも節操をわきまえているようです。


 戸惑うミクリの様子に思わず二人は笑ってしまいます。


 車内はそんな和やかな空気に包まれていました。


 その時――。


 ガコン!! キキ―!!


 車内が大きく揺れて、急ブレーキが掛かります。


「どうしたんですか?」


 カレンの身を抱き寄せながら、ミクリは運転手へ尋ねます。


「タイヤがパンクしたみたいです。状況を見てきますのでお二人は車内にいて下さい」


 そう言って外に出る運転手のキサラギ。


 しかしその瞬間――。


 ドシュ!!


「ぎゃああああ!!」


 キサラギの悲鳴と共に車の外装に真っ赤な血液が飛び散りました。

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