第41章 新年の状況
第170話 新年の状況?
フェリーデ北部縦貫線全体の開通は4月頃になる見込み。
しかし北部のあちこちでやっていた線路の工事が終わりつつあり、続いて駅舎工事や安全装置等の設置が始まっている。
それら設備の最終図面も続々届いてきている。
複写して技術部や運輸部に回す他、決裁として僕の手元にも。
これらの図面を見るのもまた楽しい。
全部を確認する余裕は残念ながら無いけれど。
車両の製造も順調だ。
工事もそうだけれどこの世界、21世紀の科学技術以上に魔法がチートかつ便利なので、物事の進みがとんでもなく早い。
製造した車両は領都を結ぶ特急用のクモイ581・582系の他、普通列車用のクモロ502、コンテナ貨物用のクモワ503、大型無蓋車モト104といったあたり。
なおモト104にはカートレイン仕様なんてのも作った。
ゴーレム車をそのまま載せて運ぶ為の貨車だ。
ガナーヴィンの協力工場では、鉄道用のコンテナ、前世日本のロールボックスパレットのような物も量産して貰っている。
流通改革でこのコンテナの出番が多くなるだろうから。
あと
鉄道のせいもあるけれど、需要がかなり多くなっている。
「シックルード領として空前絶後の業績だね。伸びという意味でもかつてリーランド大叔父が鉄鉱山をゴーレム化した時以来かな」
ウィリアム兄もホクホク顔だ。
でもまあウィリアム兄も陰謀だけで無く、流通改革とか農地開拓、新鉱山開発と様々な施策を行っている。
その半分以上に僕が絡んでしまうのが何ともいえないのだけれども。
「あと4月にはリチャードやパトリシアの結婚式があるからね。招待客選定だの会場確保だのの関係はこちらでジムあたりと相談してやるけれどさ」
そうだ、それも今年はあるのだ
ローラと結婚か、どういう感じになるのだろう。
楽しみというか微妙に不安が……
いずれにせよ何かと忙しくなりそうである。
さて、新年早々ではあるが、観光開発部が分厚い資料付の決裁を上げてきた。
「ガナーヴィンのハリコフで行っていた沿線特選市が大変好評で、イベントではなく恒常的に開催して欲しいとの意見を多数頂戴しました。客だけではなく出店側からもです。
ですのでハリコフ地区駅の一部を使って、恒常的に店を出す事にしたいと思います」
決裁と資料をさっと読んで理解した。
ああこれは百貨店だ、デパートだと。
鉄道会社がデパートを運営するのはお約束だ。
ここでその話が出たのはきっと
ならばガンガンと後押しさせて貰う事にしよう。
「わかった。ただ元々のハリコフ地区駅事務所の2階、3階では狭いだろう。今まで使っていたガナーヴィンのイベントスペースと比べると」
「ええ。ただ今までの会場に近く、また新市場にも近いので場所としての利便性を最優先しました」
ゴードンが言っている事は正しい。
ただし僕はオーナー商会長だ。
その気になればかなりの事を思い通りに出来る。
そして実は既に先手を打ってあったりもするのだ。
「たしかに場所は最高かもしれない。しかし狭すぎて発展性に乏しい気がする。
だから商会長として、より広くて発展性のある場所を提案させて貰おうと思う。
まずはこの図面を見てくれ。フェリーデ北部縦貫線ガナーヴィン駅開業にあわせた、ハリコフ地区駅を含む3駅統合改良の最新図面だ」
駅の改良工事については
上下分離方式なので線路や駅の施設は領主家負担。
だから本来の第一当事者は領主家になる訳だ。
ただし今回に限っては土地の提供だけをスティルマン家に御願いし、
『北部大洋鉄道商会の新たな拠点として一体運用をしたいから』
そんな理由で。
結果、今回新たに新築・増築・改築した部分にはには
連絡通路を兼ねた一等地に、5階建てで。
つまり……
「僕の一存で路面鉄道ハリコフ駅、シックルード本線ハリコフ地区駅、そしてフェリーデ北部縦貫線ガナーヴィン駅を統合した建物を当商会負担で建築する事になったのは知っているだろう。
これがその設計図だ。見たとおり連絡通路に沿ってそれなりに広いスペースを確保してある。ここではどうだろう。
入るつもりだった駅事務所の2階、3階と比べると市場前広場との繋がりは良くないかもしれない。それでもそれ以上のメリットがある場所だと僕は思うのだが」
ゴードンは図面をじっくり見る。
「確かに広いし、将来性も高いです。
強いて言えば今までの会場とは少し違う場所になる事、駅・市場前広場から少し外れるのが欠点でしょう。
しかしガナーヴィン駅、ハリコフ地区駅、新市場、路面鉄道ハリコフ駅それぞれに直結しているから、案内さえ充実させておけば問題はありません。
それに今後北部縦貫線が軌道に乗った場合、駅事務室2階より此処の方が動線的に有利になります。広さという意味でも申し分ありません」
まさにゴードンが言う通りの場所だ。
何せそうなるよう、僕が設計に口出しをしたから。
「しかしこの場所、観光開発部が使っていいのでしょうか。どう見ても予め何かを企図して確保してあるようにしか見えないのですが」
バレたか、その通りだ。
しかし何を企図したか話しても全く問題無い。
何故なら……
「モレスビー港駅にスティルマン領主家が商店街を作っただろう。あれを見ていずれ
だから観光開発部の計画はちょうど良かった。遠慮無く使ってくれ」
「いいのでしょうか。こんな広い場所を」
珍しくゴードン、不安になっている。
あまりに話が旨く行き過ぎたというのもあるだろう。
ならば更にプッシュしてやろう。
「実はこの沿線特選市、昨年末に実際に回らせてもらった。僕だけでは無い。シックルード領とスティルマン領の領主代行、更にはスティルマン家令嬢やウィラード家次期領主代行と一緒にだ」
事実だ。
ただし冬休みに領主代行にハメられて行く羽目になりました、という内情は言わない。
「そんな方々まで視察されたんですか」
視察ではない、我欲で買いまくっただけだ。
なんて事も勿論言わない。
「ああ。全員、企画の内容、入っている店の選別、更には会場の人の入りまで含めて高評価だった。だから常設する価値は充分以上にあると判断出来る。
それに観光開発部の事業は他の物も含め、今のところ確実に成果を挙げている。3箇所の観光地開発もそうだし、鉄道フェアも毎回大人気のようだ。
だから今回の常設店舗についても問題ないどころか大いに発展するだろうと商会長として判断する。それにこの計画では半分以上が場所を貸して賃料を取るという事業だ。これなら長期的にも安定した収入を得られるだろう」
「わかりました。それではこの場所を使わせて頂きます」
そうだ、この機会に一言言っておこう。
デパート事業についてではない。
ウィラード領の温泉開発の件だ。
「あと、これはまだ先の話なんだが、ウィラード領のアオカエンから東に……」
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