第108話 視察もどきの一人旅
7月1日、各線の全面ダイヤ改正を行った。
これは、
○ メッサー北~メッサー海水浴場間が開通
○ ロト山ケーブルカー線運行開始
○ ラングランド森林鉄道 ビルナレボ川貯木場~大滝入口、旅客扱い開始
○ 路面鉄道線及び路面鉄道直通列車のスピードアップ
○ シックルード本線の列車の大幅な増発
○ シックルード本線の列車種別を各停、路面直通、急行の3種別に整理
○ シックルード本線~ダコタ=ナム線~ガナーヴィン西線直通列車、シックルード本線~スウォンジー南線~ラングランド森林鉄道直通列車の運行開始
等の内容となっている。
そして僕がまだ客として乗っていない車両と路線がある。
車両が、
○ 路面鉄道用の5両固定編成・連接車両 クモロ604
○ ラングランド森林鉄道用、3両固定編成・連接車両 クモロ310
○ ロト山ケーブルカー
そして路線がロト山ケーブルカー線だ。
さて、出来上がったものは視察に行かねばなるまい。
商会長としても鉄としても。
相変わらず有給や代休が溜まっているので、厳密には視察ではなくひとり旅だけれども。
そんな訳で1日休みを取り、三公社前発7時45分の路面直通列車に乗車する。
この列車に使われているクモロ604は、
『本線用大型車両と動力ゴーレムを共通化し、更に大型車両用ホームでも路面鉄道ホームでも使いやすいよう空気圧による車高調整機構を装備。
クモロ600の5両編成より定員も1割増やした、ガナーヴィン路面鉄道車両の完成形』
と
前面が非貫通型で、かつやや斜めになっていて見た目にも近代的な感じを受ける。
車内は車端部だけ近い方の運転席を向いたクロスシートで、他はロングシート。
連接構造により低床部分もクモロ600より増えている。
強いて言えば通過可能な最小曲線半径が
つまり井原カーブ(R11m)は曲がれない。
ガナーヴィン路面鉄道線の最小曲線半径が
先頭車両の1人掛けクロスシート部分に陣取り、視察旅行スタートだ。
まず音がクモロ600と全然違う。
クモロ600は吊り掛け式駆動で、ブオーンという歯車音が床下から響いていた。
それがこのクモロ604の場合、ユニバーサルジョイントのウィーンという感じの音だ。
そして加速がやや重く、その代わり時速
更に大型車両用のホームを使用する区間では空気圧で車高を上げているので、乗り心地も柔らかい気がする。
強いて言えばクロスシート部分であってもテーブルが無いのが欠点かな。
その点ではクモロ502が鉄道旅用としては一番いい。
まあクモロ503やクモロ600のように全部ロングシートというよりましだけれども。
朝の直通列車の本数を増やしたせいか、三公社前を発車した時点では列車内は空いていた。
これは車両の減価償却が済むまでは赤字計算かな。
減価償却なんて制度、この国には無いけれど。
そんな事を思ったら駅ごとに客が乗ってきて、クエルで立ち客も出て来た。
小駅でも十数人は乗降客がある模様。
鉄道が無かった頃はこの人達はどうしていたのだろうと思う。
それとも鉄道が輸送需要を新たに作ったのだろうか。
そんな事を思っているうちに列車はジェスタ南門駅へと到着だ。
この駅で急行の待ち合わせをする。
ただ各駅に停車した上でこの時間差なら悪くないと思う。
ハリコフまで乗っても11分遅れるだけだし。
急行を見送ったらすぐ発車。
ジェスタ西門駅、そしてヘービガンに停車。
かつては路面鉄道の電停程度だったヘービガンから先の小駅も大型車両が停まれるようにかさ上げさらた。
だから低床車両以外の各駅停車も今回のダイヤ改正からこれらの駅に停車する。
「これでロト山東側への移住が更に進んでくれないかと期待しているんだけれどね。スウォンジー周辺はより集約的な産業に使いたいからさ」
この国、人口が少ないせいか未利用地が多いのだ。
ハーディの駅を過ぎるとすぐトンネルに入る。
さて、次のグスタカール中央駅で下車だ。
荷物はアイテムボックスに入っていて手ぶらだから、準備する事もないけれども。
そう言えばレティシア姉のところのトンネル計画はどうなっただろう。
部下が見学に来た後は音沙汰ないけれども。
この国としては長めのロト山トンネルも運転最高速度が時速
トンネルを出たら列車は減速しはじめる。
グスタカール中央駅に到着だ。
駅そのものは2面2線、つまり上り下りの複線を2つのホームが挟み込む構造の、ごくごく普通の駅。
ホーム端から踏切を渡って北側に出ると、山方向へ向けて真っすぐに伸びる道に出る。
北部大洋鉄道商会の売店以外にも既にいくつか店が出来ているようだ。
平日なのに観光客らしい人もそこそこいる。
ガナーヴィン方面から来た人が多そうだ。
今の列車からこちらへ向かったのは僕を含め5人だけだったから。
まあシックルード領側は山ばかりだ。
そんな中で育ったのにわざわざ山に登ろうなんて思うもの好きは少ないのだろう。
そう思いつつ、各店舗の品物をちらりと偵察魔法で確認しつつ、山の方へ。
店で売っているのはサンドイッチ、瓶に入った飲料等が多い。
これから山に登るのだから食べ物や飲み物が必要だろう。
そういった常識的な考え方なのだろう。
ただ1軒、なかなか美味しそうなジャックサンドを売っている店があったので立ち寄ってしまう。
シックルード領にある魚料理はマスやナマズ等、淡水魚がほとんどだから。
確かにナマズのフライはふかふかしていて美味しい事は美味しい。
マスは生でも酢締めでも焼いても美味しい。
でも海水魚も好きな僕としてはたまにジャックサンドを食べたくなるのだ。
鉄道のおかげか最近はスウォンジーの市場にも少しずつではあるが海の魚が入るようになったけれど。
こういったサンドイッチは歩きながら食べられるのもいい。
そしてこのジャックサンド、玉子もチーズもトマトもレタスも入っていて、タルタルソースに似ているソースもまた絶品。
これは帰りにまた買って帰ろうかな。
見本があればブルーベル、限りなく同じものを作ってくれるから。
見本がない異世界のケーキなんてのも最近は作って貰っているけれども。
よし、それではケーブルカー乗車体験といこう。
駅はあと
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