㉑【Scream】
想定では、“共進化細胞で脚の関節を固めてから”焼くつもりだった。その為にレークヴェイムでしつこく膝裏の関節を狙っていたんだ。誤算の原因はG先輩の意外にもしぶとかった生命力……いや、恨みつらみと言った所か。計算外と言ってしまえばそれまでだが、魔力供給や黒武器と言った条件がそろってなければ、今頃全滅していただろう。
セイラはレークヴェイムを再召喚し、タイミングを計っている。水蒸気がまだまだ濃く、狙う場所がハッキリと見えないからだ。しかし、のんびりと時間をかける訳にはいかない。今迄のケースで考えると、すぐにでも修復が始まる可能性があるからだ。水蒸気がだんだんと薄くなってくるにつれて、気持ちばかりが焦り始める。
「キョウちゃん、ちゃんと付いてきなさいよ」
「ぬかせ。お前こそしくじるなよ!」
どんな武器でも傷つけれられない程硬くなった甲殻も、極熱と極冷の激しい温度差で脆くなっているはずだ。そしてそれは、面積の広い部分の中心ほど破壊しやすい。黒い塊になっているとは言え、四肢の位置が判るくらいには原型を留めていたのは幸いだ。
――故に、狙うは胸部。
レークヴェイムは最大限のブーストをかけ、一気に加速しGデーモンに攻撃を仕掛ける。脇をすり抜けながら、正確に胸を狙いランスを打ち込む。『パキッ』といった感じの軽い音と共に、ランスの先端が食い込んだ。
その直後ランスは消失。セイラがレークヴェイムを帰還させた為、当然その得物であるランスも消える。そこには、胸に小さな穴の開いたGデーモンの黒い塊だけが佇んでいた。
レークヴェイムがランスチャージを仕掛けると同時に、サベッジ・ペガサスも炎を吹き上げながら最大加速で突っ込んで行った。ランスが的確に、Gデーモンの胸に刺さり消える。放射線状に伸びるヒビの中心にある小さな穴。サベッジ・ペガサスは全ての力、全体重を乗せた右の
元々はデーモンから出来ている黒武器がベースだからだろうか、細胞の意思は“同族”とみなした様だ。サベッジ・ペガサスの腕と融合を始め、徐々にGデーモンの甲殻と一体化してゆく。
「これ、何かヤバくないっスか?」
「いや、むしろ好都合だ。あれなら何があっても離れる事はない。それに、ゴーレムの中身は精霊だからな。生物じゃないから、取り込むことは不可能だろ?」
右手からイフリートの極炎を一気に放出するサベッジ・ペガサス。それは炎の攻撃というよりも、むしろ宿ったイフリートをそのまま“Gデーモンの体内に解放した”といった方が正しいのかもしれない。
一万度の炎に耐えられるように進化した甲殻。今度はその中に直接一万度の
「あの中は相当グロい事になっていそうっスね……」
「悲鳴が聞こえる様ですわ……」
あの中に取り込まれた数百の命。そしてそれは善意も悪意もなく、生きる為だけに共進化を重ねる。それを一つの命としてとらえるのは簡単だ。だが、俺はそれを否定する。拒否する。どんな理由があったとしても、俺や俺の周りの人達が不幸になる事には全力で抗う。だから彼等数百の命は、俺が、俺の意思で殲滅させる。
「恨むなら俺を恨め。今更数百程度増えても大差ねぇよ……」
……完全に燃やし尽くす。灰となり、消滅するまで。
次回! 第六章【be Still Alive】 -生きるための未来- ㉒後始末
是非ご覧ください。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます