⑪【flying dish】
「ちょっとまて、何でゴーレム二体なんだよ、反則じゃねえか」
「はて? 何かおかしい所あるかいの?」
「エントリーシートに記載してんだろ? 二体なら二体で申請しろよ。ボケたんかよ、まったく」
「ん? 申請しとるよ。MCもちゃんとジキルとハイドって、二体紹介しておるじゃろう?」
「あ……」
マジか。ジキルとハイドって……やられた。物語のタイトルをそのままつけているだけだと思い込んでしまっていた。
「お兄さま、前!」
黒いゴーレムが一気に間合いを詰めてきた。――速い。これをあのヨボヨボ爺さんが操っているのか? 大剣を構え突きの姿勢だ。
まずい、間合いを開けないと……
「甘いぞ、小僧。魔力操作においては経験がものを言うのじゃよ!」
「ワシらを舐め腐っているからそうなるのじゃ」
黒のゴーレムは真っすぐに突っ込んでくる。ここは突きをギリギリでかわし、足をかけて転倒させるのがベストだろう。七メートルもの巨大な人形だ。倒れれば起き上がるまで十数秒はかかる。一時的に一体を行動不能にして、その間にもう一体を潰す。
……はずだった。
「甘い言うとるじゃろ。いつまで年寄りと舐めとるんじゃ?」
横にステップを踏み、足払いを難なく交わす黒ゴーレム。素早い……軽量のサベッジ・ペガサスが反応で負けている。
「ハイドはトリッキーな動きと一撃必殺が持ち味なのじゃよ」
「そして防御特化のジキル。ワシらのコンビネーションに死角はなしじゃ」
「キョウちゃん、今のちゃんと“聞いた?”」
「どういう意味だ?」
「お兄さま、少し冷静になって下さいませ」
「爺さん、口を滑らせて弱点を口走っていたでござるよ!」
「え? マジ?」
「いつもならキョウちゃんが真っ先に気が付くのに、完全に相手に呑まれているわね」
〔ディバイン・ベール、これはいきなりピンチか?〕
……うっさいわい。
敵ゴーレムが二体、そして見た目は貧弱なのに手練れ。これは完全に裏をかかれた。加えて追加装備の剣が失敗だ……。元々剣を持たせるデザインじゃなかったから、ものすごく機体バランスが悪くなった。剣に振り回されている感じだ。むしろこれなら素手の方が戦いやすいかもしれない。
歩兵戦の方はというと、沖田さんが鎧兵二人をしっかり抑え込んでいる。フィジカル面なら圧倒的にこちらに軍配が上がる様だ。セイラのナイフとパティの魔法で後衛の二人を狙う。……しかしここにも誤算があった。
魔力持ちの転生者は、
「お嬢ちゃん達は攻撃もかわいいのう」
「そうよのう。終わったら可愛がってやるとしようかの、山さん」
十本のナイフが不規則に飛び、後衛のじじいに攻撃を仕掛けた。そして、威力を抑えたパティの
彼等は、飛んでくるナイフを、
「まさか皿が……」
……そう、控えテントのテーブルの上に在ったアレ。
後衛のじじい二人は“
「悔しいけど、理にかなっているわね」
セイラからそんな言葉が出るとは、現状で打つ手が無いって事か?
炎などの攻撃魔法を防御するには魔力自体でガードするしかないが、ナイフや
皿や鍋蓋程度を飛ばすなら大した魔力は使わないだろうし、体力の衰えた彼らからしてみれば、避けたり重い盾を持ったりするよりはずっと合理的だ。
「うまくいったのう、ゴリさん」
「ほんにな。そろそろ攻撃に移ろうかいのう」
……じじいどもはセイラの戦い方を知っている。一回戦の俺達の試合を観て対策していやがったな。それでいてとぼけた顔しながら油断を誘ってきたんだな。
狡猾すぎるだろ、じじい……
「……あれ? かなりヤバイんじゃないか? この相手」
次回! 第三章【Existence Vessel】-魂の器- ⑫shock therapy
是非ご覧ください!
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