㉙【DEVIL】
カドミの昔語りは、僅かなノロケを含みつつ終わった。
なるほど……。俺とタクマは死んだことになって消えたけど、そもそも実行するはずだった俺とタクマが消えたから、死ぬという結果がどこに存在するのかわからなくなっているな。
「それで俺らは半年前に、列車事故に見せかけて殺されたって事なのか?」
「ああ、その時もちろんワシも死んでいる。じゃが、多分この世界に存在している為、そのワシは転生出来なかったらしい。大量殺人の罪を着せられる前に死ねば、円環から外れると思ったのだが……過去に起こった未来の結末のせいで、魂に刻まれていたという事じゃな」
「それにしてもタクマって……」
「二度も転生してるのに二回とも石になるとか、大当たりっスね!」
「大外れや!」
「カドミさん聞きたい事があるのですが……
やはりパティも気になってはいたか。見た目はアレだよな。黒光りしてて……
「
「マジか……似ているとは思ったけど、そのものだったとはな」
「デーモンの死骸がそこに残った自身の魔力で変質した物なんじゃ」
「うわ……気持ち悪いっスね」
悪魔の遺物を俺達が必要としているって、“創造主”ってどれだけ皮肉屋なんだよ。
「他人事の様に言っているが……キョウジ、レオン、君らの手の中の武器は魔道具そのものじゃぞ?」
「マジか!!」
「マジっスか!!」
「ちょ、おい、レオンどうするよこれ?」
「いやいやいや、どうするんスかキョウジ兄さん」
「俺に聞かれてもわかるかー!」
「オレだってわかんないっスよぉー!」
「落ち着きなさいませ、二人とも!」
凛としたパティの声、が俺とレオンのプチパニックを鎮める。
「いや、そうは言うけどパティ、手の中にデーモンが入っているんだぜ?」
「そうっすよ、この気持ち悪さはゴキブリがシャツの中でモゾモゾ動くとかの比じゃないっスよ!!」
ゴンッ……
「痛いっス……」
レオン、だからそれはタブーだってば。気持ちはわかる。良~くわかる。間違って素足で踏んだことあるからな、俺……
「カドミ、そもそもデーモンってどういう存在なんや? ワイらが転生した頃からこの世界に現れ始めたらしいのやが?」
「
「な……」
「そんな事が……」
「それは……私も初耳だわ」
セイラも知らなかったのか。意表を突かれたのだろうか、しばらく聞いているだけで大人しかったのに、思わず声が出てしまったという感じだった。カドミがセイラにどこまで情報を与えているのかわからないけど、反応を見ているとデーモンに関しては何も知らされていない様だ。それにしても……
「デーモンに転生しなくて良かった……」
「キョウジ、タクマ、それにワシもだが……。デーモンにはならんよ」
「なんや、選別されてるとでも言うんか?」
「ああ、そうじゃ。人を殺しているという点では同じでも、例えば過失の者と殺意があるものとは同じ罪にはならんじゃろ?」
当然、そこは一緒にしたらいけないところだ。とは言え被害者側からしたら、悪意があろうがなかろうが“被害を受けた事実”は変わらないから、言わばこれは加害者側の理論と言えなくもないが。
「つまり、デーモンに転生する人間は、明確な殺意を持って殺人を犯した者、より罪の重い者ってことか?」
「概ねその認識で良いじゃろう。“創造主”は魂の穢れと呼んでおった。魂に刻まれた罪は恨みの蓄積、魂の穢れは悪意の蓄積という事じゃ。これも関係する事じゃが、何故転生者に魔力が付与されるかわかるか?」
「なんや? 俺TUEEEEする為やないんか?」
「魔法を持っている分、ローカルズよりも出来る事は多い。それは率先して冒険や開拓に出たり、危険な仕事を請け負う理由になる。そしてそれはデーモンと遭遇する確率が格段に高いという事であり、その時は……転生者同士で殺し合いが発生する。ということじゃ」
そういう事か……悪趣味以外の何ものでもない。人殺しを転生させ、更にこの世界で人殺し同士で殺し合わせて、その上死ぬときに罰を与えるって事か。
でもまあ、正直いうと……悪意の塊のような奴は結構いるし、そいつらには同情の余地はないと思う。今自分がこういう状況に置かれても、デーモンには一片の情もわかないからな。
「最っっ低ですわね、カドミさんの彼女さんは!」
「いや、“その存在”は彼女じゃないのじゃが……」
「それにしても性格悪いっスね、そいつ」
「同意や。ワイを二度も石にするとかどれだけ性格悪いんや」
「そこかよ……」
「ところでカドミさん、血を濃く受け継ぐ子孫というのは?」
「ああ、それはそこに……いるじゃろ!」
次回! 第五章【Destiny of the Evil】 -悪の運命- ㉚争乱
悪い冗談だと思いたいわ……
是非ご覧ください!
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