⑰【奇襲】
紛れもない奇襲。状況を認識するより早く、レオンの渾身の一撃が俺の目の前にあった。
――しかしこの奇襲はパティの機転によって防ぐことが出来た。
何か危険を察していたのかもしれない。パティは試合開始と同時に呪文を発動し、俺の目の前を横切る様に
飛びのき、態勢を整えるレオン。その拳には血がにじんでいた。避ける際、魔力で固められた
「当てるつもりで撃ったのですが……よく避けられましたわね」
「ふう……めちゃくちゃ危ないっスよ! 流石です、パトリシアさん」
「いやいや、危ないのは君だろう……」
一気に魔法陣を突き抜けてきたくらいだ、拳には相当な魔力が籠っていたと思われる。あんなものを食らっていたら、ヘタすれば気絶して秒殺・完敗してたかもしれない。
「……マジでヤバかったぞ」
パティのおかげでレオンの攻撃は直接当たりはしなかったが、魔法陣を突き抜けてきた衝撃が、召喚者である俺にフィードバックしダメージとなって体をめぐる。おかげで治りかけていた右腕の傷が、数か所開いてしまった。
「お兄さま! 前をちゃんと見る様に言いましたのに!」
「すまぬ……」
しかし……レオンを注視していても今のは防げなかっただろう。それでも“一発限りの奇襲”を防げたのは
相手リーダーが弓矢を使っているのはこの為だったか。開始と同時に数本の矢を射る。そこには風魔法が付与してあり、通常よりもスピードが出る。そして“矢の上を”レオンが走り、飛び、一気に奇襲をかける。
レオン自身も高い身体能力に加えて、自身になんらかの魔法を使っていたのだろう。そうでなければ矢の上を走るなんて芸当は人間には不可能だ。
「見事に防がれたっス。次はこうはいかないっスよ!」
レオンはパティに向き直り構える。奇襲に失敗した以上、俺を狙い続けてもパティにやられるだけだ。今のレオンにとって一番の障害は彼女という事になる。
それにしてもまさか格闘家だったとは思いもよらなかった。
「ったく、誰だよ魔法使いだろうとか言ったのは?」
「……キョウジ、オマエやで」
……失礼しました。
――レオンの魔力の使い方は、沖田さんに近いものがあった。体中に魔力を巡らせ、四肢の動きを補助する事で、素早くそして威力のある攻撃を繰り出す。それに加えて、自身を魔術で浮かせる事で矢の上を飛び移る身軽さを発揮する。
その身軽さと素早さ、高威力の打撃。もしこの場に沖田さんがいたとしても、苦戦したであろう手練れだ。
「パティ! 任せて大丈夫か?」
「もちろんですわ! 集中なさって!」
「だが無理はするな。ヤバかったら降参してもいい!」
「あら、もしお兄さまがわたくしの立場だったら降参しますの?」
「降参……しねぇ」
「ならば、わたくしの答えもお判りですね?」
まったく……意思が強いというかガンコというか。
「もうちょっと素直だったら申し分ないのになぁ……」
「何かおっしゃいまして?」
「いやいや、なんでもねぇ」
……やらせておくしかないか。とは言えレオン相手だと持久戦になったら不利だ。パティの余力があるうちに戦局を動かさないと。
前の方では、相手の重鎧兵とシルベスタが組み合って動かない。ならば、こちらも全力でゴーレム戦を仕掛ける。まあ、セイラに助勢はいらないだろう。なんだかんだでしっかり強いからな。
次回!第三章【Existence Vessel】-魂の器- ⑱二刀流
あの凶女が人質に取られた? 是非ご覧ください!
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