肺ターン【13】

ボッ!


すごい!火も出せるなんて……


「このスキル……夢見る力(確率)と叶える力(確率)は、最初に女神様がスロットで選んでくれたんだ」


俺も肺だけだったから、女神さんがスロットで……

俺はサインが書けないから……

タエはスキルを選べなかったの?


「私、現実世界では植物人間だから……

精神だけ……

流体離脱みたいな感じで異世界に転生したんだ」


俺より大変だ……


「高1の夏、ハンドボール部の練習から

家に帰る途中でトラックに引かれたみたい……」


高1!?

今は大人のボン!キュ!ボン!?


「肺灰さん最後まで聞きましょうよ……」


ゴメン…… 続けて……


「それから声は聞こえるのに何も反応できなくて……

お母さんが毎日毎日私に謝りながら泣いてても、

何も伝えられなくて…… グスン」


俺の毛皮汚れないから、涙を拭いて……


「ありがと…… プーンジュルジュルジュル」


どういたしまして……


「時々教授とお母さんが話してて、教授の口癖で

ブワッとかシュッとか言ってる時は面白かったけどね……」


聞き覚えが……


「お母さんに気持ちを伝えたいけど何もできない

自分が嫌で嫌で……

叫びたくても叫べない…… けど

このままは絶対嫌っ! だから私の知ってる全部に

願い続けてたら女神様が精神だけ異世界に転生してくれたの」


魔王を倒せば願いが叶う噂か……

だから、本番環境に……


「チュートリアルの世界に転生して、現実の私を健康にしてってお願いしたら……

夢見る力(確率)…… 10 × 叶える力(確率)…… 0 = 0%

で失敗だったの」


夢が大きいだけじゃダメってことか……


「体が欲しくて、憧れていた大人の女性の体が欲しいってお願いしたら……

夢見る力(確率)…… 9 × 叶える力(確率)…… 8 = 72%

で成功して、この体になったの」


目の保養になります!


「あと、スロットでもらったスキル知る力のおかげで、レアモンスター見ザル・聞かザル・言わザルを見つけて……」


俺の血生臭い旅とは大違いだな……


「倒すために色々な確率を試して……ようやく成功したのが白いタライが上から降ってくるだったの」


昭和のコント!?


「報酬として、スキル見る力・聞く力・伝える力をもらえたよ…… 白と話せてるのはこの力のおかげかもね」


俺もメリー以外と話しが出来てうれしいよ。


「チュートリアルのクリア条件が、キボリンていう熊の親子でさ…… 可愛くて倒せないから、確率で木彫りの熊にしちゃった」


まさかの1人目発見!


「ゴブリンを倒そうとしたのも、知る力が一番弱いって教えてくれたの…… でも数が多くて」


そして俺の登場か……

ありがとう話してくれて。


「ずっと寂しかったから、うれしくて喋り過ぎちゃった…… 聞いてくれてありがとね」


ちょっと話しをさかのぼるけど……

その教授を知ってるかも。


タエがいる病室の番号とか誰か言ってなかった?


「確か…… 1009号室だったよ」


試してほしい願い事があるんだけど……


「なになに?」


現実世界の俺の夢に現れたい!


「どういうこと?」


現実世界の俺がいる病院とタエがいる病院は、

同じかもしれない……


夢だから現実の俺が忘れてしまえば終わりだけど、

叶えられる確率は高くなると思うんだ……


タエのお母さんに少しでも伝えることができれば……


「白って優しいね…… チュッ」


惚れてまうから……


「早速やってみるね!」


「タエさん頑張ってください!」


「お願い!現実世界の白の夢に登場させて!」


《スキル発動!

夢見る力(確率)…… 9 × 叶える力(確率)…… 6 = 54%

スキル発動に成功しました》


続く……

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