第151話 食卓の中には地雷は付き物③



 そんな慎二が気になったのか結衣が話しかけてきた。


「今歌を聞いていたので歌が上手いとか声がいいって言うのが分かりますが慎二さんは「星宮ルナ」さんと「星宮マナ」さんのどっちの声……キャラクターが好きなんですか?」


 そう結衣が聞いてきたが、慎二は即答した。


「勿論「星宮ルナ」だね!ゲームのキャラとしては「星宮マナ」も良いんだけど……やっぱり「星宮ルナ」の方が声が透き通っていて良いんだよ!!」

「そ…そうですか……ありがとうございます」


 慎二の言葉に結衣は少し引いていた、それぐらい慎二は熱心に結衣に伝えたのだ。


「アイドルプロジェクト」とは名前は慎二の口からよく聞くと思うから知ってると思うが説明すると、今をトキメク現実世界に存在するアイドルのグループ名なのだ。


 元々アイドルの星宮姉妹が「アイドルプロジェクト」という名前で現実世界でアイドルとして活動していた。


 そこにゲーム制作会社が「今度「アイドルプロジェクト」を題材にしたゲームを作るからそれの声優をして欲しい」と言われ、それを承諾する事で爆発的にスマホのアプリである「アイドルプロジェクト」に人気が出た。


 それにゲームの世界と現実の世界の名前が「アイドルプロジェクト」は一緒の為、コアなファン達には最高のアイドル育成ゲームとなった。


 今ではゲームは勿論、アニメ・映画・星宮姉妹も人気が爆走してテレビに引っ張り箱だという。


 そんな中、慎二も声に魅力を得てゲームをしている。


 ただ、勿論星宮姉妹以外にも他の魅力的なキャラもいて、それもあり人気を獲得している。


 星宮姉妹が「アイドルプロジェクト」の2人いる主人公役という事で他の人よりは人気だが。


「そういえばこの子達、……「アイドルプロジェクト」の星宮姉妹なんだけどね今度ここ桜田町の近くに来てライブをするらしいわよ?」


 ご飯を食べながら慎二と結衣の話を聞いていた結菜がそんな事を話していた。


「ヘェ〜、そうなんですね?でも僕はゲームをやれれば良いのであまり興味は無いですかねぇ〜」

「そうなのね」


 慎二の返事を聞いた結菜もそれ以上は何も聞いてこなかった。


 ただ、結菜の言葉に反応した慎二だったが、内心では本心と全く違う事を考えていた。


(マジか……生星宮姉妹が見れるのか、見たいけどこれから文化祭もあるし忙しくなるから見に行っている時間は無いかなぁ………)


 内心では会って見たいと思いながらもこの食卓の場では口が裂けても「会いだい!!」なんて言えないし、色々と忙しい為慎二は断念をする事に決めた。


「そう言えば、結局慎二君のクラスは文化祭の出し物は決まったの?」


 星宮姉妹に会えない事を少し悔しがっていると、もうTVの話題は良いのか千夏は文化祭の話題を振ってきた。


 ので、無難に慎二は答える事にした。


「いえ、それがまだ決まっていなくて……一応候補は何個か決まったのでその中から今日中に一つ選んで明日学校で決める事になりました」

「そうなんだ、他のクラスも気になるけど慎二君達がやる出し物は特に気になっているから楽しみにしてるよ!」

「まぁ、あまり期待されるとあれですが……楽しめるものは作りますよ」


 本当に楽しみにしているのか目をキラキラとさせながら聞いてきた。


「私達も気になるわね、もしかしたら仕事で見に行けないかもしれないけど……出来るだけ行けるようにしとくわ」

「私も見に行きたいです!所で、その……慎二さんの学校の文化祭はいつ行うのですか?」


 結菜と結衣も気になったのか慎二に聞いてきた、慎二は結衣の質問に答える事にした。


「あぁ、やる日程は9月14日と9月15日の2日間だね。9月14日は学校内だけで、9月15日に一般参加の人達も文化祭を回れる様になるみたいだね」

「そうなんですね、教えてくださりありがとうございます!9月15日だったら土曜日なので行けそうです!」


 結衣は嬉しがっていたが、その反面「土曜日……仕事じゃない……」と結菜は自分の仕事のシフトに絶望していた。


 その光景を見て慎二は「あは、あはは」と苦笑いをする事しか出来なかった。


 ご飯を食べ終わり、話も纏まったので慎二は両手を合わせて夕食を終える言葉を伝えた。


「………では、ご馳走様でした!今日の夜ご飯もとても美味しかったです!ちょっと僕はこの後さっきも言った通り、文化祭の出し物を考えなくてはいけないので自室に戻りますね」


 慎二の言葉に皆「ご馳走様」や「お粗末様でした」や「出し物決め頑張って下さいね!」と慎二を送り出していた。







 3人に自室に戻る事を伝えた慎二は今、チルと共に自室に戻ってきていた。


 部屋に入った瞬間、チルはいつもの定位置の慎二の布団の中に潜ってしまった。


 その様子を見て慎二は苦笑いをしていた。


「本当、チルはそこが好きだな……よし、僕も文化祭の出し物決めなくちゃなぁ〜」


 そう独り呟くとベットに座り今日出た案を紙に書いていたのでそれを慎二は眺めるのだった。 


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   出し物の候補



【候補1・・・喫茶店『2次元の集い』】


【候補2・・・タピオカ屋『タピオカ始めました』】


【候補3・・・写真館『秘蔵の館』】



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「………名前は少しふざけた感はあるけど、まぁ良いでしょ。この三つからか………」


 慎二は候補を見ながら真面目に考えていた。


 喫茶店でも村上が言っていた様にコスプレ喫茶だったら珍しいしコアなファン達に需要がありそうだから繁盛しそうだし楽しそうだ。


 タピオカ屋もそうだ、今回はタピオカ屋の息子もこちらについている為かなり有利だろう、そもそもが慎二がタピオカを好きな為これがいいと思っている、が………


 写真館も捨てきれない、クラスのあの場では言えなかったが、慎二も雄二が言っていたように多少はサボりたい気持ちも分からなくはないのだ、だからこの三つの候補は多いに慎二を悩ませた。


 少し目を閉じて考えていたようだが、考え終わったのか、ゆっくりと慎二は目を開けた。


「………決めた、僕は………‥‥にする、他の皆が何を選ぶかで決まると思うけど僕はあれがいいと思ったからね」


 慎二は決まったのか独り呟くと明日も早い為、その後はチルと直ぐにお風呂に入り、就寝するのだった。


 この時の慎二は知らない、慎二が選んだ出し物が選ばれ、それがのちにちょっとした騒動になる事を、文化祭そのものが騒動の原因になる事を……まだ知らない。

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