第150話 食卓の中には地雷は付き物②



「今日って、確か音楽の番組やるんだよね〜」


 そんな、3ヶ月前の事を慎二が考えていると、卓上に置いてあったテレビのリモコンを千夏は取り、電源をつけた。


 その事に特に誰も注意などしない。


 家庭でもそれぞれマナーはあると思うが、ここ前田家ではご飯を食べる時は話してもいいし、テレビも見てもいい。


 ただ、NGなのが何故かここにいる女性以外の他の女性の話題を出す事だ。


 一度慎二が渚の話をした時に結菜達は渚の事を女性と勘違いしてしまい、酷い目にあった事はまだ新しい記憶だ。


(………変な事を思い出しちゃったよ。この家では女性の話題=氏だからね、口が滑りましたなんてなったらまたあの地獄を味わうのか………)


 慎二は封印していた記憶を思い出してしまい震えていた。


 あの時は直ぐに渚が男性だという事をしっかりと丁寧に分かりやすく教えた為、事なきをえたがその事から女性の話題はNG案件だと慎二は思っている。


「あれ?丁度今から始まったのかな?……おっ、この子達って慎二君がやっているゲーム?の声優さんじゃないの?アイドルもやってるんだねぇ〜」


 バカな事を慎二が考えていると、テレビを見ていた千夏に話を振られた為、慎二もテレビを見てみたら……司会役の男性に声をかけられている銀髪と金髪の似た顔をした美人の女性達がテレビの画面に映っていた。


(………皆の多分今考えている事は分かる……今千夏さんが聞いて来てる事は「女性の話題だから罠なのでは?」と言う事だろう?……だが違う。結衣さん達から聞いてくる分にはノーカンらしい、僕にも正直理由が分からんけど………)


 だからここは反応をしていい。


「あぁ……そうですね、ただ、僕は声が好きであってそこまでこの子達は好きって訳では無いですね、勿論可愛いのかもしれませんが……テレビに出ている人なんて遠い存在すぎて」


 慎二は好きとも嫌いともどっちともつかない返事を返した。


 ただ、反応はするがここで間違っても「その子の事好きです!」なんて言ったら終わりだ。


 これも経験済みの事だが、ここで言葉を間違えると面倒臭い事を要求される。


 なので無難に「普通です」というのか、逃げ道を作っておくのが正解なのだろう。


 よく見てみるとご飯を食べている様に見える結菜と結衣だが……目だけは慎二に向けていた。


 その目は「いつでも獲物を狩ってやろう」とでも言いたげな目だった。


「………ふーん?そうなんだ?……ゲームをしていたからてっきり好きなのかと思ってたよ」


 慎二がその謎の攻防戦をしていると、千夏も納得してくれたのかそんな事を言うと普段通りテレビを見だした。


 その事に慎二は安堵をしていたが、今の千夏からの話、それに今テレビに写っている女性達「アイドルプロジェクトの声優達」を見てある事を思い出した。


 今日美波にスマホのアプリの「アイドルプロジェクト」のデータを消された事を。


「あぁーーーー、忘れてた!!早く運営に問い合わせないと!!」


 いきなりの慎二の奇声に結衣達は驚いていたが、そんなもの見えていないのか席を立つと今充電をしているスマホを開き、直ぐに「アイドルプロジェクト」の運営にデータが消えた事を問い合わせるのだった。


 皆も覚えておいた方がいい。


 スマホのデータが消えても運営に問い合わせれば何日か後にデータは復旧される、その時にパスワードやらIDなどが必要になるが、持っていたキャラクター、課金額、プレイヤーレベルが大体わかれば戻ってくるそうだ。


 運営に無事問い合わせる事が出来た慎二は安心したが、自分が奇声を上げてしまった事を思い出し、テーブルに戻ると結菜達にさっき奇声を上げた訳を話して謝った。


「ごめんなさい!先程は変な声をあげてしまい、さっき千夏さんが話していたテレビの事で「アイドルプロジェクト」のゲームの事を思い出してしまい、運営に問い合わせる事があって……それを思い出し奇声を上げてしまいました……本当にごめんなさい!!」


 慎二が皆に頭を下げると「ならいいよ」や「問題無いならいいわよ」や「そうだったんですね!」と、特に不快に思っていないのか返事を返してくれた。


 テレビでは丁度「アイドルプロジェクトのメンバー」が歌い終わったところだった。


「ありがとうございます!」


 歌を聴きながらも、再度頭を下げる慎二。

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