第149話 食卓の中には地雷は付き物①




 慎二はあの後、無事何事もなく我が家に辿り着けたので手洗いをするとリビングとは反対にある部屋に入るとソファーに座り、人心地をついていた。


 因みにチルは家に帰った途端起きて、今は慎二がいる部屋にある以前買ったキャットタワーに登って「にゃっ!にゃー!」と、遊んでいる。


「本当……肝が座ってるね君は………」


 そんな楽しそうなチルの様子を見て慎二はほっこりとしていた。


「慎二君は本当にチルちゃんが好きね」


 慎二より先に家に帰って来ていた千夏はそう言いながら慎二が座っているソファーの隣側に座ってきた。


 因みに今の千夏の服装は家の中だからか、慎二の目の前だからかラフな格好をしていた。


「ははっ……チルの事は好きですからね、それになんか小動物を見ていると今日の疲れが癒される様な感じがして……ついつい見ちゃいます」

「今日は遅い時間に帰ってきたもんねぇ〜心配しちゃったわ、色々大変だったみたいね。……はい、これでも飲んで少し疲れを取った方がいいよ」


 千夏はそういうと慎二に持っていたスポーツ飲料を渡した。


 受け取った慎二は「ありがとうございます」と言い、その場でキャップを開けると飲んでいた。


「でも、ごめんなさい……さっき話した通り文化祭の出し物の件で盛り上がってかなり帰りが遅くなってしまって………」

「いいのよ、別に怒っている訳とかじゃないから。ただ私は慎二君が心配だっただけだから、ね?」

「………ありがとうございます……でもご迷惑をかけたのは僕なので今度からは連絡をしっかり入れますね」


 慎二の帰りが遅い事を先に帰っていた千夏達は心配していたが、先程帰ってきた慎二から「文化祭の出し物を決めていて遅くなった」と聞き、納得していた。


「うん。今度からは連絡をくれればいいよ、だからその話は終わりにして夜ご飯でも食べましょ。今日は結菜さんと結衣ちゃんが夜ご飯の担当なの、もう食べれる準備もしてるよ?」


 千夏達は元々慎二が帰ってきてから夜ご飯を食べようと思っていたのか、ご飯の用意はされていたが誰もそれに手をつけていなかった。


 その事を千夏に言われて気付いた慎二は「ご飯が冷めてしまっては作ってくれた2人に申し訳ない」と思い、直ぐに立ち上がると千夏と一緒にリビングに向かうのだった。





「ヘェ〜、だから慎二君は今日帰ってくるの遅かったのね、私も千夏さんと一緒で全然怒ってないから気にしないでね」

「私もです。……ただ、遅くなる時は連絡だけ欲しいです、ご飯は皆で出来るだけ食べたいので………」


 慎二がリビングにいた結菜と結衣に夜ご飯を食べながらさっき千夏にも言った事を話していた。


 2人共特に怒っている様子も無く許してくれた。


「2人共ありがとうございます。それに結衣ちゃんの言う通り遅くなる様でしたら連絡しますね」


 慎二の言葉に2人共頷いてくれた。


 それを慎二の横の椅子に座り、見ていた千夏は「うんうん、連絡は重要よ」とこちらも頷いていた。


 そんなこんなで結菜と結衣が今日作ってくれた夜ご飯のカボチャのコロッケと舞茸の炊き込みご飯を食べながら4人で楽しく談笑していた。


「………うん、このカボチャのコロッケ美味しいね!これは結衣ちゃんが作ったのかな?」


 コロッケを食べた慎二は「美味しい」と呟くと結衣に声をかけた。


「は、はい!今日は私が担当しました、舞茸の炊き込みご飯などはお母さんですが……慎二さんに美味しいと言って頂けて嬉しいです!!」


 慎二に褒められたのが嬉しかったのか頰を染めると喜んでいた、その姿を見て慎二達も頰を緩めていた。


(うん、でも本当に美味しいね……3ヶ月前はまだ料理もままならなかった結衣ちゃんがこんな料理まで作れる様になっていて、僕は嬉しいよ………)


 慎二は内心でそうしみじみと思うと少し涙ぐんでいた。


 結衣達と同居してからもう約3ヶ月も経つが、もう大分生活にも慣れたものだ。


 その中でも一番の活躍者が結衣だ。


 他の結菜や千夏も色々としてくれているがここは年少者でもある結衣があがる、結衣は最初、家事を頑張ると言って色々と頑張っていたが失敗の続きだった。


 そんな中、結衣は何度失敗しても諦めず家事を覚えて今では前田家のほとんどの家事を任せられる程に成長していた。


 何でそんなに頑張るのか?というと、、何でも「慎二さんに褒めてもらう」為だと言う。


 なのにこの男と来たら以前に結衣達の恋心に気付くことなくのほほんと過ごしている。


 渚と出会った事で少しは成長している様だが……未だに鈍感野郎である。


 まぁ、それが慎二だと結衣達は分かっているのでアピールはしっかりと続けて振り向いてもらう為に日夜努力は怠らないが。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る