第147話 デッド オア ライブ①


「まぁ落ち着いて話しなって、僕は逃げないからさ!」


(正直もうどうでも良くなったから逃げたいけどね!)


 内心は悟らせないように慎二は笑顔で西田に伝えるのだった。


「わ、分かった、まず俺の事だったな……俺は1年「B」クラスの西田智樹だ。何でこの教室にいるのかと言うとさっきも言った通り前田、お前を観察しに来たからだ!」


 西田はそう言うと慎二に向けてウインクをしてきた、慎二にはそのウインクが自分目掛けて歪なハートの形をした何かがが飛んで来るような気がしたので大袈裟に回避していた。


 その様子を見て西田は「いけず……」と呟いていた。


(うおっ!何か今飛んできたぞ?何か僕が避けた事に悔しがってるし……西田君って、ゲの字?それともホの字?まぁ、勝手に決めつけるのは良くないけど………)


 慎二は内心で「西田がゲイやホモではないか?」と思っていた。


 思っていたがそこは何も触れない事にした。


「そう、でも何でまた僕なんて観察するの?誰かにやれって言われてるの?」


 慎二は素朴な疑問を聞いたつもりだったが、言われた本人は何かのスイッチが入ってしまったのか、またもや興奮しながら慎二に話しかけてきた。


「僕なんて……なんて言わないでくれ!それに誰かにやれと言われた?……答えはノー!!俺は俺の意思でやってるのさ!そう………前田慎二ファンクラブ会員でもあり男子の部隊長でもある俺がなぁ!」

「えぇ??………」


 言われた慎二は返ってくる言葉が想像の斜め上を行き過ぎて脳で処理が出来ていないのか、疑問符を浮かべる事しか出来なかった。


 だって誰でもこの状況ならそうなるだろ……初めて会った人にそれも筋肉ムキムキの男子生徒に「前田慎二ファンクラブ会員」などと言われるのだから。


 それも何かは分からないが西田は「男子の部の隊長」らしい。


 ファンクラブとはイケメンな男性やその学校のアイドル的ポジションを獲得している女子が呼ばれているイメージが慎二にはあったが、なんの手違いか自分がそんな風に呼ばれるとは思ってもいなかった。


(………僕のファンクラブって誰が喜ぶんだよ……そんなものあるのすら知らなかったし、でもどうせ非公認とか言う奴なんでしょ?……知ってしまったからには今のうちにそんな厄介な集まり潰さないと)


 先程まで驚いていた慎二だったが冷静さを取り戻したのか、西田が言っていた事を辞めさせる事にした。


「に、西田君、ちょっと言い難いけど……そのファンクラブ?は僕に何のメリットも無さそうだし迷惑だから辞めて欲しいのだけど………」

「それは無理だ!」

「何で!!?」


 慎二は自分の考えを伝えたつもりだったが、即答で断られてしまった。


 何の迷いもない言葉に逆に慎二が驚かされた。


 だが、そんな事では慎二は諦めない。


「そこをなんとか!それにどうせ非公認とかで君達がふざけてやっているだけでしょ?他の人の迷惑になるかもしれないから今の内に辞めときなって」

「………‥」


 慎二に正論を言われたからか西田は慎二の顔を見るだけで何も言ってこなかった。


(出来たら何か言って欲しいんだけど、良いよとか嫌だでもなんでも良いからさ……嫌と言っても許さないけどね!)


 ただ無言で見つめてくる西田が少し不気味だった。


 男に無言で見つめられるだけでもSAN値が減ると言うのにずっと見られるのは慎二でも勘弁願いたい事で「自分から何か聞き出すか?」と思っていた時。


「………今、前田は非公認とかふざけてるとか他の人の迷惑になると言ったな?」

「う、うん。言ったけどそれがどうしたのさ?」


 突然西田が口を開いたので何かやられると思ったのか、慎二は一歩下がりながら西田の次の言葉を待った。


「なら、それが公認されていて何もふざけていなく、誰の迷惑になどなっていない……むしろありがたみすら感じられていると、言ったらどうする?」


 西田は自信たっぷりに慎二に問い返してきた。


「………そんな事ありえないでしょ?……それにもし仮にだけど迷惑になっていなくてありがたみ?を感じているなら別に何も言わないけど……誰が公認なんてするの?」


 そんなバカな話があってたまるかと思った慎二だったが何故かさっきから冷や汗が止まらなかった。


 でも誰が公認なんてするのかと思い苦笑いをしていたら。


「それが公認をした人がいるんだよ……この学校の最高責任者の理事長がな!」

「理事長!?」


 驚きの言葉を聞いた慎二はその名を口にして叫んでしまった。

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