4章 夏休み編 伝えたい思いと届けたい気持ち 閑話

第126話 閑話 村上正吾育成計画①




 短くも長い旅行が終わった慎二達は桜田町に戻ると夏休みを満喫していた。


 まだ8月1日だった事もあり、夏休みは残り約1ヶ月程もあったのでそれぞれ有意義に過ごしていった。


 慎二は我が家に戻ると待っていた結菜達に今回あった事を話し、6日振りの飼い猫のチルとの再会を楽しんだ。


 部活も活動はそんなに無かった為、夏休みの宿題を終わらせたり「カフェ・ラッキーバード」でアルバイトをしたりと有意義に過ごしていた。


 それから月日は流れ8月18日のある日、慎二は「カフェ・ラッキーバード」でアルバイトをしていた。


 アルバイトにも慣れ客の対応も様になって来たが慎二はある一点だけ嫌な事があった、それは………


「なあなあ、前田〜聞いてくれよ〜」


 アルバイトをしているのを知ってるにも関わらず、慎二に馴れ馴れしく話しかけて来る村上が常連客になってしまった事だ。


 店的には常連客が増えた事には喜ばしい事だが慎二には苦痛でしかない、主に村上の存在が。


「すみませんお客様。今は仕事をしていますので……話しかけないで頂けるとありがたいです」


 慎二が話しかけてくんな感を出しているのに尚も話しかけてくる村上にイラッとしていた。


「良いじゃねえか?ほら……今丁度人がいないし俺の話を聞いてくれよ!」


 村上は店内を見回し、人が自分しかいない事を確認すると慎二にそう聞いて来た。


 流石に面倒臭くなって来た慎二は適当な事を言って帰ってもらおうと思っていたが………


「はぁ……村上君、雄二達に相手をして貰えば良いじゃないか?僕は見ての通りアルバイト中だよ」

「………木村達にも聞いてもらおうとしたんだが……俺の電話は出ないしメッセージも既読スルーしやがる……だから後は前田しかいないんだよ………」


 帰ってくれず、逆に村上はやっと相手をしてくれると思ったのか話しかけて来た。


(いや、もうそれ完全に雄二達に面倒臭がられているだけじゃん、可哀想だとは思うけど僕に絡まないでよ………)


 慎二はそう思いながらも先伸ばすのも後から面倒になると思いマスターに許可をもらい話を聞いてあげる事にした。


「マスター……今から少し休憩もらって良いですか?」


 厨房近くでコーヒーカップを磨いていた馬場にそう聞くと。


「ああ良いよ、さっき村上君が言っていた通り今は人が掃けているからね」


 慎二と村上の話を聞いていたのか直ぐに了承をしてくれた。


 そんな馬場に村上はフレンドリーに話しかけていた。


「流石、マスター!話がわかる!」

「ふふふっ」


 君はもっと礼儀というものを知れ、本当に………


 そんな事を考えていた慎二だったが、早く要件を聞いて終わりにする為に村上と共に休憩室に移り聞いてみた。


「それで?聞いて欲しい事って何?」

「それがな………」


 慎二に聞かれたからか少し真面目な顔になると少し間を起き。


「俺は…俺は……彼女が欲しい!」


 と言って来た。


 その言葉を聞いた慎二は淡々と。


「帰れ」


 と、ドアを指差しながら言うのだった。





 それから村上がいかに彼女が欲しいかどうでも良い話を長々と話していたがそれを聞いていた慎二は。


「まあ、話はわかった。いつも通り村上君は彼女が欲しいとほざいていると」


 どうでも良いと言う様にスマホを弄りながら村上の話を聞いていた(聞いてない)。


 そんな慎二に。


「違う!今回は本当なんだ!」


 村上はそう言うと慎二に詰め寄って来た、鼻息が荒くとても気持ち悪かった為座ってもらう事にした。


「わかった、わかったからそこに座って」

「………あぁ」


 一応理性はまだ残しているのか渋々座ってくれた。 


 村上が少し落ち着いて来たので彼女が欲しいという話の本題に入る事にした。


「そもそも、彼女が欲しいと言ってもどんな彼女が欲しいの?」


 慎二がそう聞くと、カッコつけているのか前髪を左手で上げるとこう言って来た。


「正直俺だったら誰でも範囲内だけど、強いて言うなら………」

「………言うなら?」


 うざいと思いながらも聞き返してみたら。


「俺が彼女にしたいのはズバリ……ギャルだ!」


 そんな事を言って来た。


「………ギャル?」


 何を言ってんだこいつ?とでも言いたそうな慎二の顔は気にせず村上は話を続けた。


「ギャル、良いと思わないか?ノリは良いし可愛い……最高じゃないか!」


(………それだけで村上君がギャルを好きになるかな?なんか他に思惑があると思うからちょっと探ってみるか)


 おかしいと思った慎二は少しカマをかけてみる事にした。


「で、本音は?」


 何か引っかかる慎二は村上にこう聞いてみたら………


「簡単にエッチさせてくれそうだから!」


 と、清々しい顔でクズの様な発言を返してきた。


「………村上君……」

「ち、違う!今のはつい口に出ただけだ、決してそんな事は……少ししか思ってない!」


(少し思ってるのかよ!)


 口に出しては言わないが心の中でツッコミを入れた。


 村上は今の事は無かったかの様に咳払いをして次に進む為に話を振ってきた。


「でも、そういうのは無きにしても俺はギャルとお近づきになりたい、前田は誰かギャルの知り合いいるか?」

「僕にギャルの知り合い?……そんなの………」


 いないと言おうとしたが、中学からの友人で少しギャルっぽい人物が頭の片隅に浮かんだので少し考える事にした。


(愛菜とかに聞いたら知り合いを紹介してくれそうだけど……またこれで何で女性と知り合いなんだって言われるのも面倒臭いし……でも今回は紹介してくれって言ってるから大丈夫なのか?)


 考えていたら、何も言わなくなった慎二が気になったのか村上が聞いてきた。


「前田、知り合いで誰かいたのか?」

「まあ、いるっちゃいるけど……その子がギャルか微妙な所だね。一回聞いてみないと分からないや」

「いや、紹介してくれるだけでもありがたい、流石に今からは相手側も予定があるし厳しいと思うから予定がわかったら教えてくれ」


 村上にしては真面な事を言っていたので、慎二も今回は聞いてみる事にした。


「うん、一応聞いてみるよ、分かり次第連絡する、今はまだアルバイト中だから早くても今日の夕方あたりだね」


 慎二がそう言うとわかったと言って会計を済ませると村上は店を後にした。


 慎二はそんな村上を見送ると自分も仕事始めますかと思い客の対応をしに行くのだった。

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