第114話 集結そして助け合い②


 無事全員の自己紹介が終わった後慎二は千夏に連絡しようとした、その時丁度千夏から電話がかかってきた為直ぐに出る事が出来た。


『あっ、慎二君?今大丈夫だった?』

「はい、大丈夫です、僕も丁度今千夏さんに連絡を入れようとしていましたので」

『そうだったんだね、ならもしかしたらもう知ってるかもしれないけど、うちのお爺ちゃんが卯辰山公園の管理者の人に連絡を入れてくれたみたいなの』

「しっかりと聞いていますよ?」

『なら良かったよ、お爺ちゃんからなんだけどね……「安心してタイムカプセルを探してくれ」だってさ、私からもだけど気を付けて作業してね?』

「ありがとうございます、僕の他にも頼れる大人の方達が沢山ついているので大丈夫だと思いますが、くれぐれも心配させない様に気を付けます」

『うん、そうしてくれると助かるかな?しっかりと美味しいご飯作って待ってるからね!』

「わかりました!」


 そう言って慎二は通話を終えた、鈴木達は慎二が千夏と電話をしている時に大人達で話し合っていて早速意気投合していた。


 そんな皆を見て慎二はやるか、と思っていたらまた着信があった為「誰だろう?」と思い見たら雄二からの連絡だった。


(もしかしたら手伝ってくれる人が見つかったのかな?)


 そう思いながらも雄二からの電話を出てみた。


『良かった、さっき電話しても出てくれなかったから何かあったのかと思ってたわ』

「ごめん、今丁度由比ヶ浜先生と電話しててさ」

『そうか、何も無いなら良かったわ、それでこっちの状況だけどな、俺達が「ピポット部」の活動として助けた人達に声をかけたらほとんどの人が手伝うと言ってくれてな今卯辰山公園に皆で向かってるところだ』

「本当かい!?それは嬉しいな、あまり無理はしないで欲しいけど人は沢山必要だからね、僕も今タイムカプセルを掘る人達と卯辰山公園の案内図がある所にいるからまずは合流しようか」

『了解、俺達も後10分ぐらいで卯辰山公園に着くと思うから落ち合おう、じゃあな』

「うん、また後で」


 良かった……手伝ってくれる人は見つかったみたいだよ。


 慎二は通話を終えると今雄二と話した事を他の皆にも話を通した、それから丁度10分程経った時、雄二達が沢山の人を引き連れて慎二の元まで来てくれた。


「慎二来たぜ、待たせたみたいだな」

「そんな事ないよ、由紀とハトケンと村上君も人を集めてくれてありがとう!」


 慎二にお礼を言われた雄二達は少し照れ臭そうにしていた、その光景を見ていた慎二だったが手伝いに来てくれて人々に体を向けた。


「皆さん来て下さってありがとうございます、今からやる事はここ卯辰山公園内にあるタイムカプセルを探す事です。かなり肉体を酷使する可能性がある為無理だけはしないで下さいね、それと今日は来て下さってありがとうございます!」


 慎二の言葉に来てくれた人々は「任せとけ!」や「前田君達に助けられた恩をここで返すよ!」など口々に言ってくれた、その言葉の数々に本当に助かると思っていた慎二だが、根本的な事はまだ何も終わってない為今から集まってくれたこの皆でタイムカプセルを探す事にした。


「皆さん僕の後に着いて来てください、今からタイムカプセルが埋まっているであろう場所に案内します」


 そう言った慎二だったが、流石になんで場所がわかるんだ?とか聞かれると思っていたが、皆は何も言わずただ頷いてくれた。


「………では、行きます!」


 慎二は心の中で思った。


(大丈夫だ、前渚さん達の未来を見る時にタイムカプセルがある場所も見た、後は探すだけだ、何も問題はない)


 そう考えながらも前へ前へ慎二は進んでいった。


 慎二達が向かった先は金沢市街を一望出来る望湖台だ、そこにある大きな木の下に慎二は向かった。


「皆さん、この下にタイムカプセルが埋まってます、ですがどのぐらいの深さなのかわからない為かなりの時間を要すると思います、この作業は1人では出来ません、ですのでもう一度聞きます……僕と一緒にタイムカプセルを探して下さい!」

『………‥』


 慎二は着いて来てくれた皆の前に立つとそうお願いして頭を再度下げた。


 その間、皆は真剣に慎二を見ているが誰も声を発さなかった。


(どうしよう、やっぱりここでほとんどの人が帰っちゃうかな……でも人数がいないと掘り起こすことなんて不可能だし………)


 そう思っていると哲也が1人前に出て来て、慎二にこう言って来た。


「慎二君、それは今更な話だよ、俺達は君の手助けをしにここまで来たんだ、それなのに君を手伝わない訳ないだろ?……ですよね、皆さん?」


 哲也が慎二に話して他の皆にも意見を聞いたら……他の皆も「手伝うに決まっているだろ!」と言ってくれた。


 その後慎二は驚きの連続だった、集まった全員に手伝うとそう言われた為少し放心状態になっていたが、手伝いに来てくれた皆が我先にと慎二が指定した場所を鈴木が用意してくれた道具や自分達で持ってきたスコップなどで掘り始めたのだ。


 その光景をただ口を開けて見ていたら隣に来た哲也に話しかけられた。


「人って凄いよな、1人じゃ出来る事なんてそんなに無いのに集まればあら不思議。今目の前で広がっている光景になる」

「………そうですね……」


 本当にそうだと思う、初めは皆知らない人達ばかりだった、でも今は違う、手を取り合って一つの事に取り組んでいる。


「忘れるなよ?この光景はな、何もしなければ決して見る事が出来ないものだ、でもこれは君が行動したから起きた事なんだよ、胸を張りな、そしてこの光景を目に焼き付けな……君がやって来た事は正しいんだからさ」

「はい、僕が今までやって来た事は決して間違いなんかじゃなかった………」


 哲也と話していた慎二だったが、皆が頑張っているのに自分は見てる訳にはいかないと思い慎二も参戦した。


「僕もやります!疲れた方は変わって下さい、必ずタイムカプセルを見つけ出しますよ!」


 そう言いながら慎二達は変わり変わり穴を掘り進めてタイムカプセルを探す為に奮闘した。





 皆で1時間、2時間は探しただろうか、かなり穴を深く掘り進んだがタイムカプセルらしき物は見つからなかった。


 他の人は疲れからと本当に見つかるのかという不安があり手が止まっていた、そんな中でも慎二は手を動かし続けていた。


「絶対にここにあるんだ、あと少し、少しで………」


 慎二がそう呟きながらスコップで穴を掘ってると鈴木に止められた。


「慎二君もうやめるんだ……君の手は指は……血だらけじゃないか、明日またやろうよ?」


 長時間スコップなどで穴を掘り慣れない事を続けていた為、腕は勿論指からも血が出ていた。


 でも、そんな事を言われたが………


「明日じゃ…明日じゃ……駄目なんですよ……僕を待っている人がいる…その人に届けなくちゃ…伝えなくちゃ……安心させてあげなくちゃ……駄目なんですよ!」

「慎二君………」


 慎二の心からの叫びを聞き鈴木を含めた諦めかけていた人々は何も言えなくなってしまった。


 だってあんなに手を指を血だらけにしながらも決して止めずに動き続けている慎二を止められるわけがないのだから。


 大人達はそんな慎二を見てる事しか出来なかったが……雄二達も慎二と同じくらい手に血豆などを作っているのに動き出した。


「おらお前ら、バカがばかしてるんだ、根性出せよ!」

「当たり前だよ!僕らは皆で「ピポット部」だ!慎二君が頑張ってるんだから止まるわけないでしょ!」

「ふふっ、手が痙攣して来たよ……でもこれを越えれば僕は超人に………」

「しゃー、俺はタイムカプセルを見つけて彼女を探すんだい!」


 後ろ2人は少しふざけている様な感じがしたが、雄二達は慎二の横に並び穴を掘り続けた。


 その光景を見て大の大人がへばってる場合じゃねぇと大瀬達屈強な体を持つ作業員達が立ち上がり声を張り上げた。


「あの子達があんなに頑張ってるんだ、気張れよお前ら!俺らも彼等に続け!」


 その声にへばっていた大人達も体に鞭を打ち立ち上がると各自道具を持ち穴掘りを再開した、それから1時間程掘っただろうか、もう決して手を止めないと思っていた矢先1人の男性が何か硬い物がスコップにぶつかったというので一旦皆は作業を辞めてその場に集まる事にした。


 慎二が代表として見にいったら……そこには大分古いが金属の缶の様な物があった、慎二は瞬時に切っていた「真実の目」を小声で使ったら………


「………「スイッチオン」」


{汐留正一と汐留千鶴の思い出}


 と、出た。


「やった……やりましたよ……これが探していたタイムカプセルです…早く届けに……行かなくちゃ………」


 慎二は早く届けたいと思っていても既に慎二の体は満身創痍でまともにその場から動けなくなっていた、前に倒れそうになっている所を哲也が支えてくれた。


「頑張ったな慎二君、でも今は少し休みな、少し休んでからでも届けに行くのは遅くないだろ?」

「そうです……が」

「まあ、焦る気持ちも分からなくはないが焦って失敗するよりはマシだろ?だから今は休みな」

「わかりま……した」


 慎二は哲也からそう言われると糸が切れた様にその場で気絶してしまった、そんな慎二を抱えながら哲也は苦笑いしていた。


「まったく、頑張り屋の弟分には困った物だよ……気絶しているのにこんなに嬉しそうな顔しちゃってさ………」


 そう言う哲也だったが、顔は嬉しそうにしていた、その後は慎二と雄二達は1度木陰で休ませる事にした。

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