第94話 閑話 私達の青い鳥②
先程の馬場の言葉を気にもしていないのかとびきりの笑顔を向けて話してきた。
だが、そんな少年に馬場は問いかける。
「………この話は子供が解決出来る事なんかじゃ無いんだ、それでも君は出来ると言うのかい?」
「出来ますよ?」
当然だろと言わんばかりに伝えて来た。
「っ!……なら君を信じてみる、このお店はどうせ何もしなければあと数日で終わる、なら君に賭けてみるよ……お前もそれで良いかい?」
「ええ、あなたやそこの優しい少年にお任せ致します」
「わかった、でも君は何で私達を助けてくれようとしたんだい?別に君が首を突っ込む必要は無かったと思うのだが……」
洋二は妻の承諾を得たので、疑問に思っている事を少年に聞いたら………
「別に深い意味はありませんよ?ただ僕がこのお店が無くなるのが嫌だっただけです。それに、人を助けるのに理由などいらない、ですよね?」
そう、あっけらかんと話をした。
「君は……わかった、君に任せるよ。それとまだ名前を言っていなかったね、私はここのマスターの馬場洋二です。横にいるのは妻の好です、どうか私達を助けて下さい」
「助けて下さい」
洋二と好はその少年に頭を下げてお願いをした。
「任せて下さい!僕は前田慎二……「人助」を趣味にする高校生です!」
その少年は自分の名前をそう言った、私と慎二君はそんな出会いをした。
その後はこれからどうするのかなど3人で話し合う事にした。
「まずはメニューですね、経営が厳しいと言っていましたので、始めは今のままで行きましょう」
「その、メニューはこのままで良いのかい?君が言う通り今は1つのメニューしか出せないが、普通は何個かメニューを出す物じゃないのかな?」
「普通はそうでしょうが、何も他のやり方を真似する事は無いと思います。色々なメニューがあれば様々なニーズに応えられますが……さっき言った通り経営が厳しいとの事ですので、初めは1つのメニューだけで通します。味は僕が保証しますので大丈夫です!」
そこまで考えてくれていたのか、ありがたいね。
「ただ、今のメニューだけでも良いのですが……デザートは1つだけでも欲しい所ですね、そこで夏にふさわしいデザートを考えました、それがアガースイーツという物です」
「アガースイーツ?それはどんなデザートなのかな?」
馬場は聞いた事が無い食べ物だった為教えてもらう事にした。
「簡単に言ってしまうと寒天を使ったデザートです。寒天は天草という物から作られて、天草を英語でアガーと言うので僕はアガースイーツと呼んでいます」
そこからは作り方やコスパの安さ、スイーツだが寒天を使っている為カロリーも抑えられ女性にも人気のデザートになると教えてもらった。
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アガースイーツの作り方
・コップに寒天またはゼリーを適度な大きさに崩しながら入れる
・使うコップは出来るだけ小さい物で透明の物が好ましい
・サイダー(あればゼロカロリー)を入れる
・好きなスイーツを盛り付けたら出来上がり
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「………そんなデザートがあるんだね、見た事ない様な気がするけど、経済的にも優しいし、女性にも人気なら売れると思うな」
「ありがとうございます、僕も思い付きと言いますか、そんなデザートがあれば良いなと思いまして提案しました。あと少し工夫するならここ桜田町の「桜」に合わせてピンク色のゼリーなどがあれば使うと良いかもしれませんね」
慎二はこのデザートを思い付きと言っていたが、実は慎二は10年前に戻って来る前にその様なデザートが流行っていた為伝えてみたのだ、慎二が調べた結果だと今はまだ誰も寒天を使ったデザートを広めていない為これは売れると思っているこその案だ。
「こちらこそありがとう、君のおかげでメニューは何とかなりそうだよ、後はお客さんをどうするかと足りないお金をどうするかだね……」
まだ不安な要素は沢山あったのでそう馬場が口にしたら……
「ああ、それなら……僕がお金を馬場さん達に投資しますよ、それなりのお金は持っていますので、それにお客さんもこの桜田町には沢山知り合いがいますのでそちらも任せて下さい、しっかりと宣伝しておきますよ」
「流石にそこまでしてもらうのは……」
「良いんです、乗り掛かった船というのもありますが、僕は絶対成功する自信があります。ですので後は任せて下さい、早ければ明日には沢山のお客さんが来ますよ?」
慎二がそういうと「少し家に帰ってお金を持ってきます」と言って止める間も無く喫茶店から出て行ってしまった。
「………前田君本当に大丈夫だろうか?」
「前田さんを信じてみましょう、私達は今出来る事をしますよ、まずは掃除からしっかりとやりましょう」
「そう、だな……任せてくれと言っていたんだ、あの子を信じよう」
馬場は妻の好と話し合い掃除を始めて10分程経った時、ドアに付いている鈴が鳴り客が来たのを知らせた。
そちらを見てみると慎二が喫茶店に戻ってきたところだった。
「今戻りました、馬場さん達は掃除をしてたんですね、一旦やめてこちらを受け取って下さい」
慎二に言われたので一度掃除を辞めて、差し出して来た茶色の封筒を受け取るとズッシリとした重さが来た為かなり中に入っていると思い、中を見てみたら………
「前田君!?こんな大金受け取れないよ!もうちょっと少なめで良いから!」
「いえ、そのぐらいのお金が妥当かと、まず馬場さん達の生活費も必要ですし、お金は多くて越した事は無いですよね?」
「まあ、そうだけど………」
でもこんな大金もらえないよ……前田君の生活も気になるし………
そう思っていると、慎二は洋二が考えている事が分かっていたのか、何も言っていないのに話し出した。
「僕は大丈夫ですよ?今渡したお金が無くても十分暮らせますから、それに人の善意は素直に受け取る物だと言いますよね?なのでもらって下さい!返金は一切前田金融はしていません!」
ふざけているのか真剣なのかわからない事を言ってきた、だが慎二の言う通り善意でやってくれている事なので素直に受け取る事にした。
「………わかったよ、でも必ず返すからね?それも倍にして!」
「なら、尚更頑張らなくちゃですね」
「そうだね、もう弱音なんて吐かないし人のせいなんてしないよ……なんかこう言うと君の方が年上に思えて来るね」
最初あった時からどうも同い年か年上と話してる様な気がして洋二はおかしな事を口にしてしまった。
「年上じゃないですよ?……まあそれは置いといて、今日はこの後僕は知り合いに喫茶店の話をしたりして来るのでお別れになります、馬場さん達はさっき言った通りいつものメニューの材料とアガースイーツの材料を買って明日に備えて下さいね?僕の連絡先も教えますので何かあれば連絡ください、それでは」
「何から何までありがとう!」
「良いんですよ!」
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