第90話 3章 エピローグ
◆
動物病院に着いた慎二とチルは中に入ってみたが自分以外に誰もいなかった為「本当にやってるのか?」と思ったが受付に女性の方がいた為聞いてみることにした。
「こんにちは、今日はこの子の診察で来たのですが、まだ診察はやっていますか?」
「はい、やっていますよ、今はたまたま人が少ない時間帯なので空いてますね、そこの可愛らしい猫ちゃんの診察で宜しいですね?」
ああ、丁度人が掃けたあとだったみたいだね。
「はい、直ぐに出来るならお願いします」
「ではこちらの診察書を初めに書いて終わったら出しに来てください、その後は先生の元まで案内させて頂きますので」
「わかりました」
診察書の内容は猫の情報や今回はどうしてきたのかなどありふれた質問が書かれていた為直ぐに書いて提出した。
「へぇ〜、その猫ちゃん野良猫だったんですね、毛並みは綺麗だしお利口そうだからペットショップから買ったのかと思っていましたよ」
「そうですよね、僕もお風呂に入れた時はこんなに綺麗になるとは思わなくて驚きましたよ」
受付の人と少しチルの事で話したら先生の所に案内してくれた、中に入ったら40代ぐらいの白衣を着た男性が待っていた。
「私が今回君のペットを診察する佐伯と言います、今時珍しいね野良猫を拾ってくる人なんて」
言った目の前の佐伯という先生にそう言われた為答える事にした。
「ちょっと色々事情がありまして飼う事になりました、今回は野良猫とあって健康状態とかが全くわからない為診て欲しいのです、お願いします!」
「ああ、任せてくれ!ただ、診察するのに少し時間がかかると思うから待合室で待っててくれ」
そう言われたので慎二はチルを預けて待合室で待つ事にした。
「チル、今からこの人に君の健康状態とかを診てもらうから良い子にしてるんだよ?」
「にゃっ!」
慎二はそう言って頭を撫でてあげると元気に返事をしてくれた為、佐伯にチルを預けるとそのまま待合室に向かった。
待合室で待ってる間は慎二以外の人が誰も来なかったということもあり受付の女性、矢部さんに猫の飼い方や用意した方が良いものなどを教えてもらっていた。
そんな事をしていたら佐伯に呼ばれた為チルが待つ部屋まで向かったら、来た時と同じ様に元気な姿のチルが慎二の方にかけてきた。
「おかえり、チル!」
「にゃ、にゃふっ!」
チルを迎えたら走ったままジャンプして慎二の腕に登ってきた、そんな光景を佐伯達は微笑ましいものでも見るように見てきていた。
「それで、チルの健康状態とかはどうでしたか?」
「ああ、診させてもらったけど健康そのもので特に何も異常がなかったね、念のため感染症になり難い注射は打たせてもらったよ」
良かった、これで何かがあったらどうしようかと思っていたよ……
「そうでしたか、チル注射打ったのか、頑張ったな!」
「にゃっ!」
なんか自慢げに尻尾を振ってるね。
「それと、これが一応チルちゃんのカルテね、色々と書いてあるから見てあげてよ」
「わかりました、どれどれ……」
そのカルテにはこう書いてあった。
---------------------------------------------------------------
健康状態診察書
・名前 チル
・年齢 2歳
・性別 メス
・健康状態 正常
・病気 なし
・ワクチン 済み
・
・
---------------------------------------------------------------
と、他にも色々な項目が書いてあった。
チルはまだ2歳なのか……
「ありがとうございました、チルの事を知れて良かったです」
「良いんだよ、また何かあったらチルちゃんと一緒に来なさい」
「はい必ず!矢部さんも色々と教えて下さりありがとうございます!」
「良いのよ〜」
慎二はそう言うとお金を払い動物病院を後にした、家に帰る前に矢部に教えてもらったものを買う為にペットショップに向かった、そこで今持てる範囲かつ必ず必須な物だけを購入して帰路についた。
それからはチルの生活する準備も整い、高校でもチルは慎二と常に一緒に行動する様になり他の生徒にも知られる事になり一躍有名猫?になっていた。
女子も男子も関係なくその愛くるしさに心を射とめられた人々が後を経たなかった、連日慎二目当てなのかチル目当てなのかわからないが何も無いのに「ヒポット部」を訪れる生徒がたくさんいたと言う、今は大分落ち着いた。
「いやー、疲れたね、あんなに人が来るとは思わないよね」
「だよね、マスコットキャラは何処でも人気の様だね」
夢の国のミ○キーとかサン○オのキテ○ちゃんとかが良い例だよね。
慎二と服部が部室でこの頃起こった出来事を話していたら村上から夏休みについて話を振られた。
「お前らは明日からの夏休みは何かやるのか?そもそもこの部活は夏休みに活動するのか?」
村上はそんな事を聞いてきた、自分が部員の様な言い方をしているが下着泥棒の事件が解決した後村上は正式に「ヒポット部」の一員になっていた。
「夏休みは活動するかどうか悩んでいる所だね、皆も色々都合があると思うし……」
僕だけなら別に何ともないけど……
「俺は別に大丈夫だぞ?どうせ夏休みなんて暇してるか、女子サーチしかする事ないからな〜」
「いや、他にもやる事あるでしょ、何が女子サーチだよ!」
「村上は相変わらずだな……俺もこれと言った用事はお盆に実家に帰るぐらいだなぁ〜お前らはどうだ?」
そう雄二に話を振られた服部と由紀も雄二と同じ様にお盆に何かがあるぐらいしか無いみたいだ。
「皆あまりアクティブに動かないんだね、そう言う僕もそんなやる事は無いけどね」
「そう考えるとこの長い夏休みって本当にやる事ないよな……」
何か夏休み中にやる事あるかな?と考えていたら部室のドアが開き顧問の由比ヶ浜先生が入って来た。
「良かった、皆残っていてくれたみたいね」
「どうかしたんですか?」
「特に何か急な依頼が来たとかでは無いけど……皆って夏休みに何かする予定ある?」
由比ヶ浜先生のその質問に全員「無いです」と答えた。
「良かった……いや華の高校生が何も無いのは良くは無いんだけど、皆が動けるなら……一緒に海の家でアルバイトしない?」
『海の家?』
あまり聞かない単語が出て来たので慎二達は全員声を揃えてそう聞いてしまった。
「そう、海の家、私のお爺ちゃんがね石川県にある海の家をいつも夏になると経営していて、今回アルバイトの人が誰も募集が来ないって電話で嘆いていたから部活の一環としてどうかなって思ってさ、勿論移動は私が車を運転するし、泊まる場所もお爺ちゃんが用意してくれるみたいなの、勿論お金も出るよ?……どうかな?」
その話を聞き慎二達はを「どうする?」と相談し会おうと思っていたが、ある男が立ち上がると大きな声で「やりまーーす!」と答えた、勿論村上だ。
「お前ら、このチャンスを棒に振るのか?せっかく由比ヶ浜先生が持って来てくれた依頼ってのもあるが、さっき話してた通り誰も何も予定がないって言ってただろ?何を相談することがある、俺らを待っているのは大海原だぞ!?」
「とか言いつつ、お前は水着の女性が見たいだけだろ」
村上が熱く語っていたら雄二から辛辣なツッコミが入ったが……
「そうだよ何が悪い!」
当然の様にそう言った。
開き直ったね、これ。
「でもなぁ〜」
慎二がそう言うと村上が鼻と鼻が近付くぐらい近づいて来た。
そんな村上に少し引きながらも声をかけた。
「………何さ?」
「おい部長、まさかやらないとか言わないよな?夏だぞ?海だぞ?そして何より白い砂浜を埋め尽くすパイ乙達!……これを聞いてやらない奴はただのカスだ」
「いや、そんな私利私欲の考えがあって言われても……」
ただ水着の女性と会いたいというのがひしひしと伝わって来るね……
「ああそうだ、俺が行きたい!でも!……助けて欲しいと言っている人がいるんだぞ?お前だったらそれが1番わかるだろ?」
むっ!痛い所を突いてきて……
「………わかったよ「ヒポット部」の活動にすれば良いんでしょ、僕は暑いのが嫌だから行きたくなかっただけだからね……」
「流石部長!話がわかる!」
慎二がそう言うと村上は皆が引くぐらい嬉しがっていた、部長の慎二が了承したからか雄二達も「わかったよ」と納得してくれた。
「それより由比ヶ浜先生、行く日と日数てどのぐらいになります?」
「そうだったね、まず行く日日が7月の27日で、日数が8月1日までの6日間になるね。アルバイトの期間が実質4日間で残り2日は自由に遊んでも良い事になってるよ、どう?行けそう?」
由比ヶ浜先生の言葉にそれぞれ顔を見渡したが誰も無理と言う部員はいなかった。
「皆行けそうですね、じゃあ僕達「ヒポット部」は由比ヶ浜先生のお爺さんの海の家を7月の27日から手伝いますね」
「ありがとう、皆!今日が24日だからそんなに準備する時間は無いけどまた26日ぐらいになったら皆に念のため連絡入れるね!」
『わかりました』
◆
その後は解散になり、何もなく時間は過ぎていった。
次の日、25日になったので慎二達は新校舎の体育館に集まり終業式を行なっていた、終業式も終わり夏休み前最後のホームルームを行なっていた。
「無事1学期の終業式も終わり明日からは夏休みに入る、が、お前ら夏休みデビューなんてするなよ?髪を染めたとかピアスを付けたとかしてたら直ぐに生徒指導行きだからな?後は……長期の夏休みだからといって調子に乗って変な事件に巻き込まれない事……9月に元気に会える事を願ってる、ではホームルームを終わりにする」
剛田先生が教室を出ると「夏休み何やる?」や「宿題面倒臭い!」などお馴染みな事を言いながらも楽しんでいた。
その中でいつもの4人+村上を入れて明後日にある海の家でのアルバイトについて話し合っていた、因みにチルは優奈と美波に捕獲されている為ここにはいない。
「この5人でアルバイトか……なんか男臭そうだな……」
「雄二君何を言ってるの?由比ヶ浜先生がいるじゃないか……それに由紀君もいるから大丈夫でしょ」
「先生はともかく僕は男だから!」
意外と雄二達も浮かれていた。
そんな中…慎二と村上は……
「前田、今回はクラスの邪魔な女子達がいない……そこで浜辺、ビーチと言ったら何をする?」
「………どうせ君の事だからナンパとか言うんでしょ?」
「正解!!前田も大分わかって来たみたいだな、知ってるか?夏は人をハイにするんだぜ?だから俺らも少しハメを外しても良いはずだ、そうだろ?」
「ほどほどにしなよ、本当に………」
浮かれている村上をこれは監視しなくちゃ駄目だなと思う慎二だった。
皆でもっと話していたかったが長期の泊まり込みの準備をしなくちゃいけない為早く帰る事にして、皆それぞれに帰路についた。
「最初はあまり行く気にならなかったけど、なんだかんだ言って僕も楽しみにしてたみたいだね……高校1年の夏休みか、今は子供だ、名一杯楽しもうかな……」
慎二はそう1人呟くといつもの帰り道を優奈達に返してもらったチルを連れて歩いて行った。
この時慎二達は知らなかった、この夏楽しくも悲しい、忘れ様にも忘れられない思い出が出来る事を……運命が交差する時、物語は動き出す。
「未来」を見た回数:3回 残り27回
「過去」を見た回数:1回 残り29回
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