第89話 高校とバカと野良猫の飼い方
◆
自宅に帰った慎二はまず家の中に既にいた結菜達に猫を飼う事を話して、その猫がここにいるとチルを見せた。
初めは皆「可愛い!」と言っていたが突然チルが結菜達に向けて「ふしゃっー!!」と威嚇し出したので慎二は緊張でもしてるのかと思い少し離れさせたがチルの威嚇は止まなかった。
「私達何かしちゃったのかしら?」
「モフモフしたかったわね〜」
「猫ちゃん怒ってました……」
など女性陣はそんなチルを見て「自分達が何かをしてしまったのか?」と思っていた。
「ごめんなさい、皆さん……恐らくチルは緊張してるだけなのでそのうち慣れると思います、それで、さっき連絡しましたが皆さんが猫アレルギーとか無ければ飼おうと思っているのですが……飼って大丈夫ですか?」
慎二が結菜達に聞いたら「そんな事家主の慎二君が決めて良いよ、それに飼うことは問題ないわ」と皆チルを飼うことを了承してくれた。
「ありがとうございます!チルは野良猫なんで明日動物病院に一緒に行って注射を打ってもらいに行きます、何か病気を持っていて皆さんもチルも嫌な思いをするのは嫌ですからね」
「ええ、そうしてもらえると助かるわ」
結菜はそう言ってくれたので明日動物病院に行くことになった。
その後は夜ご飯を食べる事になりチルのご飯をどうしようと話になったが、帰りに慎二がコンビからキャットフードを買ってきていたのでチルの夜ご飯がないと言うことは回避出来た。
慎二は夜ご飯を食べたらお風呂を入る前にチルの足の爪を切ってあげることにした。
「チルおいで、今からお風呂入るけどその前に伸びている足の爪危ないから切っちゃうからさ」
慎二があぐらをかき自分の足をポンポン叩いてここにおいでと呼んだらしっかりと慎二の足の太腿の上に登って来てくれた。
「偉いぞ、今から君の足の爪を切るからじっとしていてね?」
「にゃ、にゃ!」
チルは少し怯えていたが慎二がやってくれるならと少し安心したのか鳴いて返事をしてくれた。
その後は無事伸びていた足の爪を切り、お風呂に一緒に入る事が出来た、最初入る時はやはり猫は水が苦手なのかお風呂に入るのを嫌がっていたが慎二が湯船に入る所を見せたら渋々慎二が作ってくれたお風呂(桶の中にぬるま湯を入れた物)に入ってくれた。
お風呂に入り今まで付いていた汚れを取ったチルは見違えていた、さっきまで燻んだブラウン色だったが、今はしっかりと綺麗なブラウンの地色になっていた。
「チル綺麗になったな!」
「にゃあ!」
自分が綺麗になったのが嬉しいのか慎二の足の下をくるくると回り出し尻尾もふりふりと揺らしていた。
その後は少しTVを観たら、自分の部屋に戻り慎二は寝ることにした。
チルは何処で寝るのかな?と思っていたら慎二の布団の中に入ってきたので一緒に眠る事にした。
「甘えん坊さんだね、明日は動物病院に行って少しチクッとする注射をチルは打ってもらうけどそれはチルの為にもなるから我慢してね?」
「にゃー」
注射の事がわからないのか慎二がそう伝えても小さく鳴き声をあげるだけだった、その様子を見てまあ、明日行ってみるしかないか、と思い今日は寝ることにした。
「チルお休み」
「にゃぅー」
そんな慎二とチルの様子を扉を少し開けて見ている人達がいた、それは結菜と千夏だ、自分達も一緒に寝ようかと思っていたが、チルに慎二の隣を取られてしまった為「猫に嫉妬してもね?」と思い今日は諦めるようにとぼとぼと自分の部屋に帰っていった。
◆
翌日学校があったがチルをどうしようかと思っていたら、千夏からある提案をされた。
「慎二君、チルちゃんをまだ1人にさせとくのは危ないから学校に連れてけば?私から生徒指導の先生とかに伝えとくからさ、それにもしかしたら「ヒポット部」のマスコットキャラになってくれるかもよ?」
「んんー、わかりました、では千夏さん話合わせお願いします」
「任せて!じゃあ私は先に行くから遅れないようにねぇ〜」
そう言うと千夏は家を出て桜田高校まで歩いていった、慎二も遅れないように準備をすると結菜に戸締りをお願いしてチルを連れて桜田高校に登校をした。
自分が向かう教室は旧校舎なのであまり他の生徒や先生には見られることなく無事「F」クラスの教室に着く事が出来たので、教室のドアを開けて皆に挨拶しながら自分の椅子に腰掛けた。
チルは緊張しているのか慎二の足の上で丸まっている。
そんなチルを見ていたら、優奈が近づいて来た。
「慎二君、おはよう!教室に入る時に猫ちゃんも一緒にいたような感じがしたけど何かあったの?」
「ああ、それはね……」
優奈にチルについて話しかけられた為答えようとしたら美波まで来た。
「そうよ、あんな可愛い猫なんて連れて歩いて……私にも撫でさせなさいよね!」
「分かったよ、触るのは後で良いけど依頼でちょっとあってね……」
慎二はそう言うと優奈と美波にこれまであったことを話し、昨日から一緒に暮らしている事を話して、暑い中家に置いておくのも可愛そうな為学校に連れてきた事を話した。
慎二が自分のパンツを囮にしたという話をした時何故か2人は目を逸らしていたが……
「へぇ〜この子がチルちゃんね、可愛い!」
そう言って抱っこしようとしていたので初めは警戒するかもしれないから慣れてからにした方が良いと言おうとしたが、チルは抱っこされても威嚇する事なくジッとしてされるがままにしていた。
あれ?おかしいな……昨日あんなに結菜さん達に威嚇していたのに……たまたまかな?
慎二はそう思うことにした。
ただ、優奈がチルを「胸に」抱っこしてる所を見て他の男子クラスメイトの諸君は興奮していた。
まぁ、興奮するのもわからなくはないだろう。優奈の大きな胸にチルが埋もれている状態になってるのだから。
その光景を出来るだけ見ないようにそっぽを向いていたら村上が近づいて来た。
「よう前田、何そっぽを向いてるんだよ?絶景が見られるのに見ないのか?」
「見るわけないでしょ……村上君は平常運転だね」
「当たり前だろ?エロい所に村上アリってな!」
「はぁ……」
そんな事を村上と話していたら、優奈の抱擁が終わったのか次は美波が抱っこする番になったらしくこちらも問題なくチルを抱っこしていた。
「あら、この子おとなしいわね?中々お利口さんじゃないの!」
美波はそう言ってチルを抱っこしていたがクラスメイトの諸君は少し残念な顔をしていた……その雰囲気に気が付いたのかチルをゆっくりと床に下ろすと慎二達を睨み付けてきた。
「何よ、あんたら?優奈の時はあんなにガン見していたのに何私の時だけ少し残念がってるのよ?どうせある一部を比べていたんでしょ?ぶっ○すわよ、慎二」
「何で僕なの!?」
おかしい、今回は何も考えてない、そもそも悪いと思いチルを抱っこしてる所など見ていないのに……
「まあ良いわ、もう先生が来る時間だし今はこのぐらいにしといてあげるわ!」
「………‥」
理不尽ってこういうのを言うんだよ、きっと。
少ししたら剛田先生が来た為、ホームルーが始まった。
「「学力テスト」も終わりあと少しで夏休みが始まるが最後まで気を抜かないで生活するように……それと今日前田が猫を連れて来てると思うが、その猫は桜田高校理事長直属に学校内に連れてきても良いと許可が出たから、今後も連れてきて良いぞ、ただし、面倒はしっかりと前田がする事、猫がらみで面倒事が起きたら頼むぞ?」
剛田先生がそんな事を言ったが、1つ気になることがあった、それは何で理事長本人が許可を出したのかと……気になった為聞いてみることにした。
「剛田先生、ちょっと良いですか?」
「どうした、前田?」
「その、今理事長直属に許可が出たって言ってましたが、それは何ででしょうか?」
慎二にそう言われた剛田先生は慎二に説明し出した。
「その事か、まず知ってるか知らんが現在の風紀委員長の東雲真衣は理事長の孫娘になるな」
「ゲェッ!?」
剛田先生から出た言葉を聞き慎二は変な声を出してしまった。
慎二の反応がおかしいのに気になっていた剛田先生だが、説明を続ける事にしたそうだ。
「その東雲が由比ヶ浜先生が猫の件で職員室内で話してるのを聞いて直接お爺様であられる理事長に桜田高校に前田が飼っている猫を連れてきて良いか直談判したそうだな、孫には優しいのか直ぐに許可を出したらしいが、孫の東雲から話に出た前田の事に興味が湧いたと言っていたな」
「そ…そうですか……教えて下さりありがとうございました」
また面倒な事の予感しかしないね……
「他に話が無ければホームルームを終わりにする、今日も1日頑張れよ」
そう言い剛田先生が教室を出て行くと、風紀委員長とはどんな関係なのかやその猫の名前はなんて言うのかなど一斉に言われた為、全員の対応をするにその日の放課後を費やすことになった。
少しグロッキー状態の慎二は雄二達に今日は用事がある為部活はないという事を伝えたら早めに学校を出てチルと一緒に近くにある動物病院までその足で向かった。
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