第87話 高校とバカと下着泥棒と⑦
「今からなんで猫が犯人なのかと男子生徒のパンツ、それもトランクスを狙っているのか説明するよ」
服部はそう前置きをすると話してくれた、その内容がこうだった。
服部も色々な部活に聞きトランクスが盗まれていると言うことを知ったらしい、でも何故それを誰かか盗むのか全くわからなかったらしい、そんな時トランクスはトランクスでもしっかりと洗濯をしていない物が多く盗まれている事に気付いたという。
何処の部活でも洗濯をする為に部費で洗剤を買ってるらしく、そんなにいつも使っていたら直ぐに無くなってしまう為ただの水だけで洗っている部活が多いそうだ。
ただそれが分かっても「何故男子生徒のパンツが盗まれるのか?」という話になるが、これは男子生徒による蓄積された臭いに問題があると言う。
しっかりと洗わなかったパンツは汗や体臭、尿などが混ざり想像を超えるほど臭いが漂うらしい、それがわかった服部は「この臭いに誘われる生き物はいるのか?」と調べた結果……猫が当て嵌まったという。
服部が言うには猫は魚の様な臭いや人間の汗の臭いも好きだという。
諸説では人間の汗の臭いが猫のフェロモン臭に近いからだと言われている。
トランクスは他のパンツの素材より空気性は良いが臭いが溜まりやすい物で出来てる物が多く、しっかりと洗わなかった男子生徒達のトランクスに魚の様な臭い(イカの様な臭い)や汗などが付き、たまたま近くに住み着いていた猫がその臭いに釣られて盗みを働いたのではと考えついたという。
「………という事じゃないかと僕は思うよ」
その説明に慎二達は流石ハトケンや情報屋と言い出した。
「流石「情報屋」!」
「頼りになるな」
「ハトケン君ナイス!」
「すげぇな〜そんな事調べるだけでわかるんだな」
服部が話し終わると慎二達は良くそんな事考えついたなと驚きと共に称賛をしていた。
「だから前田のパンツを洗濯したものと履いた後の物で実験してたんだなぁ」
「よく分かったよね〜」
村上と由紀がそう服部を褒めていた。
「まあ、今回は偶々という物が強い気はするけど……」
ハトケン謙遜しちゃって。
そう慎二が心の中で思っていたら雄二がさっきから気になっていた事を口にした。
「ハトケンもやるな、パンツを囮にして猫が犯人なのを特定するとは、あれか?最初に慎二のパンツを取っていった吉野達は言わば雌猫ってわけか?」
「ほう?雄二君も言うね、僕でもそんな事は考えられなかったよ」
「なんだ、違うのか?……猫と雌猫をかけてると思ってたわ」
なわけないだろ!なんだよ雌猫って!
「皆、猫が犯人かもしれないって分かったけどまだ終わってないからね?ほら他にも盗みを働いた猫がいるか確認しなくちゃ!」
雄二達がわけのわからない話をし始めそうになった為、その話を邪魔する様に慎二が声を上げた。
その後はしっかりと全員で他にも犯人になる様な猫がいるかプレハブ小屋の近くで見張っていたがさっき現れた猫以外何も現れないまま時間は過ぎていった。
「あれから結局何も出なかったね……もうじき夜になっちゃうし猫を確認しに行こうよ」
「そうだね、このまま見てても時間が過ぎるだけだから見にいこうか」
そう慎二と服部は話し他の皆も同じ気持ちの様でプレハブ小屋の中を見てみる事にした。
慎二達は出来るだけ音を立てない様にプレハブ小屋の扉まで近づくと少し開けて中の様子を見てみた、中は沢山の用具が置いてあったがその中でも目に入ってくる物が、部屋の隅に沢山のトランクスが積み重なりその上に鎮座して慎二のトランクスらしき物に頰を擦り付けている猫がいたのだ。
「野良猫はいたけど、あれ何してるの?」
恐らく盗まれたものであろう皆のトランクスは見つかり犯人が猫だったのは確定したが、猫の行動が深外な為そちらに目が行ってしまい、つい慎二は皆に聞いてしまった。
「慎二の匂いでも気に入ったからマーキングでもしてるんじゃないか?」
「別に気に入られても嬉しくないんだけど……」
雄二の言葉に微妙な反応を示す慎二だったが、何かを思い出した様に由紀が伝えてきた。
「そういえば以前ネットで調べてた時何処だったか忘れたけどジーンズを履いていると猫が寄ってくるとか甘えてくるとか少し話題になっていたよね〜」
「それは俺も見たぞ、アレだろ?……猫が擦り寄ってくる理由がジーンズの材料にマタタビを使っているんじゃないかって騒がれてた奴だな」
ヘェ〜僕は知らなかったな、マタタビって確か猫が好きな奴だよね?
慎二がマタタビについて少し考えていたら服部も気になったらしく話に乗ってきた。
「僕も見たね、結局マタタビは入ってなかったらしくて猫が寄ってくる謎は解けてないみたいだね……もしかしたらトランクスにも匂い以外に猫を引き寄せる効果があったりしてね」
「あり得るかもね〜」
「その話は気になるけど後ででも出来るから今はあの猫からどうやって穏便にトランクスを返して貰えるか話し合おうよ」
慎二のその言葉にジーンズの話は一旦やめて目の前にいる猫にどう接触するか話し合うことにした。
話し合った結果全員で行っても警戒されてしまうだけだと思う、それだったらいっその事今慎二のトランクスの匂い?に夢中になってるから慎二が近付いて猫からトランクスを取り戻せば良いんじゃないか?と話が纏まった。
「なんかこういう貧乏くじをいつも引くような気がするよ……僕あんまり猫得意じゃないんだよね、昔普通に噛まれたり引っ掻かれたりしかされたことないし……」
慎二は昔(27歳)の頃の記憶を思い出していた、あの頃は「負幸体質」が何も軽減されていない状態だったから人以外にも様々な動物に嫌われていた。
主にカラスと猫が酷かった思い出がある、慎二自身は別に猫が嫌いなわけではない、逆に好きだった為少し触ろうと近付くだけで噛まれたり引っ掻かれるからいつしか苦手になっていた。
そんな事を考えていたが、今なら普通に触れる事が出来るのでは?とポジティブに考える事にして猫のもとに向かう事にした。
「じゃあ行ってくるよ……」
「無理だったら戻ってこいよ?」
「うん………」
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