第46話 高校とバカと作戦と①
◆
「やあ、やあ!待っていたよ2人共、こんな場所に呼んで悪かったね!」
「まあ、呼ぶのは別に良いんだがこの後何かやるのか?」
「慎二君、今は由比ヶ浜先生の護衛をしっかりとやった方がいいんじゃないかな?」
慎二が空き教室に呼んだ人物は雄二と由紀だった。
何も知らない2人だが慎二に呼ばれた為、わざわざ空き教室まで赴いたのだ。
「由比ヶ浜先生の護衛は1番重要だよ?でもね、他にもやってくれる人がいる、だけど君達2人にしか頼めない事があるんだよ、それを今からやって欲しい」
2人共始めは訝しげに聞いていたが、何か自分達じゃなくては出来ない事があるんだろうと思い、慎二の次の言葉を待った。
「ただその前に雄二達……いや皆に謝らなくてはならないんだけど僕は「嘘」をついていたんだ。護衛をして貰うのを1週間と言っていたがあれは「嘘」で、本当は今日までの3日間で良かったんだ。何でかと言われたら……「今日5月24日6時30分に桜田高校付近の駅の路地」で人攫いが起きるからなんだよ、それに「嘘」をついたのも理由があるんだ、皆を信じていなかった訳ではないけど、どこで今回の犯人に僕達が探しているのがバレるかもしれない可能性があった為、サバを読んで皆に1週間と伝えていたんだ」
その話をしたら雄二と由紀は困惑と驚きを混ぜ込んだような顔をしていた。
まあ、そうなるよね……でもそれが本当の事なんだからしょうがないんだよね。
理解して貰わなくていい「信じて」貰えればそれで良い。
「色々と言いたい事はある、「嘘」をついていた事だって相手にバレない為だろ?それはわかる、けどよ?なんでその人攫いの犯人が今日現れるかがわかるんだ?」
「僕も気になるよ、それにそんな何でもわかるなんて探偵みたいで凄いけど、慎二君にそんな事出来るの?」
やっぱりというか当たり前の事だけど疑問に思うよね……でもね、しっかりとその事についても考えて来てるんだよね。
「雄二と由紀が疑問に思うのはごもっともだと思う、でもね、今由紀が言ったように僕には探偵の知り合いがいるんだよ。付き合いはそんなにまだ長くは無いんだけどね、今まで、色々助けられたんだ、ただ彼との約束でこの事は秘密にしてるからあまり検索はしないでね」
慎二は「嘘」はついていない、探偵と言っていたがそれは「真実の目」の事だ。
誰も人に助けられたとは一言も言っていないのだから。
「疑ってはいないがな、でもなんとなく慎二が言った事はわかる気がするな、今まで色々と解決して来たもんな、それもその探偵に教えて貰ったってわけだろ?」
雄二は慎二の話を「嘘」だとまったく思っていないのかそんな事を聞いてきた。
なので、慎二もその話に良い意味で乗ることにした。
「うん、彼には色々と助けられたよ、今も色々助けてもらったり、知恵を借りてるけどね」
そんな事を、演技とバレない様にしみじみと慎二は話していた。
「だが、それが分かったところで俺達は何をやればいいんだ?」
「そうだね、雄二と由紀にやって貰う事は人攫いの囮り役をやってもらおうと思っているよ」
慎二から囮と今日日聞かない言葉を聞いて、疑問に思っている顔を向けてきた。
「囮役だと?そんなものいるのか?」
「慎二君、痛いのは嫌だよ?手助けにはなりたいけど……」
やっぱり囮役って言うだけじゃ不安になるよね。
「ああ、囮役と言ってもそんなに危ない事をするわけじゃないし、怪我をする事も無いと思うよ?それにしっかりと自分の身を守る為の武器は2人に渡すからね、それがこのスプレーなんだよ」
慎二はそう言うと雄二と由紀に真っ赤な色のスプレーを渡した。
渡された2人はそれが何のスプレーかわからなかった為、これは何なのか聞いてきた。
「このスプレーはなんなんだ?ただ赤いってだけの様な気がするが……」
「これで自分達の身を守れるの?」
渡されたスプレーを見ながら2人は疑問符を浮かべていた。
当然の様に気になるよね、そんなスプレーが役に立つのか。
「まあ、普通はそう思うよね、でもねこのスプレーは凄いんだよ?2人共名前ぐらいは聞いた事があると思うけど、このスプレーの中身は「キャロライナリーパー」と言う唐辛子の粉末を凝縮して液体にした物が入っているんだよ!人ってね、多少の痛みには耐えられるみたいだけど、体の中に入るとまた別らしいんだ、だからこれを指定した時に犯人の顔にかけて欲しいんだ。勿論危なくなったら武器として使っても良いよ!」
その説明を自分の自慢話しでもする様に2人に聞かせていたら、2人共慎二にドン引きしてる事に気づいた。
「なんでそんなに引いてるのさ!君達の身を守ってくれるんだよ?」
「いや、それはわかってるんだがな、いくら相手が犯罪者だからってちょっとこのスプレーをかけたら可哀想だと思ってな」
「僕も雄二君みたいに思ったけど、それよりも自分に間違えてかけたらやだなと思って」
雄二と由紀は嫌そうに慎二にそれぞれ理由を付けて話してきた。
だが、それでも慎二は2人に何としてでもやってもらう為にその気にさせる為に話を2人に聞かせる。
「雄二の思っている事も由紀が考えている事もわかるけど、まず第一に今回相手をする奴らは極悪人だ、そんな奴等に手心を加えてやる義理なんてないんだよ、それにさっきも言ったけど使い方と使う場所は後で指定するから安心して良いよ」
慎二の話を聞き「一応わかった」と2人は返事をしてくれた。
「あ、後ね囮役についてだけど囮役と言ってもただ人攫いに捕まるだけじゃ駄目なんだよ、女性が狙われていると言ったよね?だから雄二と由紀には「女装」をして犯人達に捕まって欲しいんだ」
その話をしたら2人共物凄く嫌そうな顔になった。
「それにさ、確かまだ雄二と由紀にはこないだの「聖書」の件の借りをまだ返してくれてないよね?ハトケンは返してくれたんだけどなぁ〜」
2人はその事を言われて自分達も思い当たる節がある為何も反論出来ず、苦虫を噛んだ様な顔をしていたが決心した様に慎二に伝えてきた。
「あぁーもうわかったわ!やれば良いんだろ、やれば!「女装」だってなんだってやってやるわ!それに慎二が言う事だ「信用」してやるよ!」
「慎二君は僕達を売る行為をする様な人じゃないと思ってるから頑張ってみるよ!ちょっと「女装」姿は恥ずかしいけど……」
「2人共ありがとう!……本当は僕がやれたら良かったんだけど僕にもやる事があってね、今回は2人が適材適所だったって事もあるけど、どうかよろしくお願いするよ」
そう言うと、慎二は誠心誠意を持って2人に頭を下げた。
「それでね、この後やって貰う囮役作戦の説明は詳しく話すけどその前に2人に「女装」姿になって欲しいんだよ、僕は女性の洋服とかは詳しくないからその道のプロを読んだんだ、雄二と由紀を呼ぶ時に事前に伝えててね近くに待機してくれてると思うから今連絡してみるよ」
そう言ってある人物達に連絡したら直ぐに出てくれて、今すぐそちらに向かうと言われた。
なので、暫し待つ事にした。
数分後にその人物達は空き教室の扉を開けて入ってきた。
「前田〜連絡通りに来てやったわよ!それで、その2人を可愛くすれば良いのね?」
「前田君、私達にも手伝える事を用意してくれてありがとね!張り切ってやるね!」
慎二が雄二達に「女装」をさせる為に呼んだのは吉野と悠木だった。
そんな2人に笑顔を返すと話しかけた。
「2人共来てくれてありがとう!何か手伝える事ないか探していたから2人に合う事を用意してみたよ、雄二と由紀を可愛くしてあげて欲しい!」
慎二の言葉に早速「女装」をさせる為に取りかかった、初めは抵抗していた雄二と由紀だが抵抗しても意味が無いと悟ったのか身を任せていた。
そんな場面を見ていた慎二はこの後2人はどんな感じになるのかワクワクしていたが、「後でのお楽しみ」と言われて空き教室から追い出されて廊下に一人放置されてしまった。
それから5分後ぐらいした時に中から「入って良い」と言われたので教室内に入った慎二は教室内の光景を見て、何も言えなくなり動きを止めてしまった。
そんな慎二を見て何故か不機嫌になった吉野は慎二に詰め寄った。
「………前田、その2人男よ?まさかアンタそっちの趣味でもあるの?」
「前田君!?ほ、ほら異性の方が良いよ〜こっちに戻ってきて〜」
そんな事を2人は慎二に言っているが、衝撃的な映像が目の前に広がっている為そっちに目がいってしまい吉野達の相手をできなかった。
慎二に見られている2人は、1人は不機嫌そうに、もう1人は本当に恥ずかしがっているのか履いているスカートを手で押さえていた。
「何ジロジロ見てるんだよ?気持ち悪いからあんまり見てくんじゃねえよ!」
「は、恥ずかしいよ!もう!僕達は「女装」をしっかりしたんだから、そんなマジマジと見てないでこれから行う事説明してよ!」
そんな2人の声を聞いて思った事が。
oh…声が男だ……ウイッグと化粧をしているせいか雄二が綺麗なお姉さんに見えてしまった……由紀に関しては声も高いし少し化粧をして女性用の服を着ただけなのに普通の女性より可愛いんだけど。
………誰かさんとボディ○ェンジしてくれないかな……
慎二がバカな事を考えていたら何かを感じ取ったのか吉野が慎二の股間に蹴りのモーションを入れてきた。
「………何か今変な事考えたでしょ?良いわよ?その喧嘩買ってあげるわよ?」
「いえ、何でもありません!吉野様どうかご慈悲を!」
バカな事をやっていたが、6時30分に時間が迫っていた為、雄二と由紀にこれからの事を話す事にした。
「2人共これからやって貰う事を話すよ?先ずはその姿で桜田高校近くの駅の路地を2人で歩いて欲しい、そしたら黒い車が近づいてくると思う、それが今回の誘拐犯だと思うからわざと捕まってくれ、少し抵抗はして良いけど声をあまりあげないで、特に雄二は。そのあと2人は車に無理やり乗せられると思うけど誘拐犯がアジトにしている場所まで行くと思うから着いたらじっとしていて欲しいんだ、僕も警察官の皆と直ぐに助けに行くからそれまでの間はどうか何があっても耐えて欲しいんだ」
慎二の話を真剣に聞いていた2人は「わかった」と声を合わせて返事をしてくれた。
「後はスプレーの使い所だね、恐らくその誘拐犯のリーダー格の名前が「田村亮二」と言う人物だと思うけど、その人物が出てきて僕もその場に駆けつけたら近くにいる犯人だと思われる奴からスプレーをかけて欲しい、その後は僕が全てやるから任せてくれ!」
「わかった、慎二の事を「信じてる」からな、俺達が作戦通りやった後は任せたわ!」
「僕も精一杯頑張ってみせるよ!」
「頼む、でも無理だけはしないでね?怪我せずまた会おう!」
慎二はその場に留まったが、雄二と由紀は人攫いが起きる現場まで先に行って貰った。
2人を見送った後、後ろに振り向き吉野と悠木にも声をかけた。
「吉野さんと悠木さんも今回はありがとね!後は僕達がやるから由比ヶ浜先生達がいる安全な場所まで避難しててくれ」
「わかった、でもしっかりと帰ってきなさいよ?帰って来なかったら承知しないからね?」
「私が今何を言っても前田君は止まらなさそうだよね……ならもう何も言わないよ……だから「人助」頑張ってね!」
「2人共ありがとう、また教室で会おう」
そう言って慎二は吉野達とも別れた。
慎二はそのまま空き教室に残り由比ヶ浜先生が無事なのか電話して聞いてみることにした。
「プープー」と1コールめで出てくれた。
慎二が伝えた通りしっかりと電話に出てくれたみたいだ。
『前田君だよね?今そっちはどんな感じ?こっちは沢山の生徒と先生方が守ってくれてるよ』
「はい、前田ですよ。由比ヶ浜先生も無事な様で良かったです、こちらは今から雄二達に誘拐犯と接触して貰う予定です……でも言ったでしょ?僕以外にも先生を助けてくれる人が沢山いると」
『うん、本当に沢山の人が助けてくれたよ、でも全部前田君が考えてくれたんでしょ?「F」クラスの皆から聞いたよ?』
「まったくあのバカ達は……僕が何もやらなくても「未来」は恐らく一緒でしたよ、先生には何か人を惹きつける魅力の様なものがあるのかもしれないですね、まあ後の事は任せて下さい、必ず何もかも終わらせて来ますから」
『うん、慎二君のことを「信じてる」よ、教室で待ってるからね!』
「任せて下さい!」
由比ヶ浜先生との電話も終えて無事なのも確認出来たので慎二も動くことにした。
「他の皆に色々と任せてるんだ、僕が動かないでどうするんだって話だよね、鈴木さんに頼んでいた「田村亮二」についても色々な悪事がしっかりと見つかったから警察の皆ももう逮捕が出来る準備はしてるみたいだし、僕も今から警察署に行って準備するか」
その足で慎二は桜田警察署まで向かった。
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