第45話 高校とバカ達と③
◆
午後も何事もなく進んでいき、放課後になった為生徒会室に慎二は向かっていた。
「今度顔は出すと言ったけど、結構早い段階で生徒会室に行くことになっちゃったなぁ〜、まあこの時間だったらいつも通り誰かはいると思うから良いのかな?」
慎二は生徒会室に着いたのでノックを3回してみたが、5分ほど経っても何も反応が無かった。
その事におかしいと思った慎二は生徒会室の扉を少し開けてみて中を見ることにした。
「ん?おかしいな、いつもだったら誰か1人はいると思ったのに、ちょっと扉を開けて中を見てみるかな?」
そう思い、少し扉を開けて生徒会室内を見たが直ぐに扉を閉めることにした。
「………え?」
いや、え?なんかおかしい光景が広がっていたんだけど!?
だってさ!生徒会の皆はいたよ?それは良いんだけど!やっている行動がおかしかったよ!生徒会長なんて前まで僕が座っていた椅子に恍惚とした表情をして頬擦りをしてるんだよ?他のメンバーもおかしかったよ僕が使ってたと思われるコップとかを興奮しながらひたすら舐めていたんだよ!?
いや、一旦落ち着こう。
僕の見間違いとかの可能性もあるもんね?
そう思い、もう一度ノックをしてから生徒会室に入ったら皆何事もなかった様に作業をしていた。
そんないつもの光景を見て安堵していたら、慎二に気付いたのか生徒会長の綾杉が話しかけてきた。
「あら、慎二君今度顔を出すと言ってたけど意外と早かったわね?今日はどうしたの?」
ほらいつも通りだよ!やっぱり僕が何か幻覚でも見ていたんだよきっと!
「ちょっとお聞きしたい事がありまして今大丈夫でしたか?」
ただ、慎二は「今大丈夫でしたか?」と聞いただけだったが聴き方が悪かった。
いきなり室内の温度が下がったような気がしたが、気のせいだと思って生徒会の皆の顔を見たら驚いた。
だって、全員無表情で慎二の顔を見ているのだから。
「ヒイッ!?」
「………慎二君、何が大丈夫じゃないと思ったのかな?教えてくれるとありがたいのだけど?」
えっ、待ってこの反応って事はさっき見たのが本当の事って事?……いやでも生徒会の皆があんな事やるはずないし……まずは誤解を解こう。
「ち、違うんですよ!今会議とか大事な話をしていたかもしれないので僕が来ても大丈夫ですかって意味で聞いたんです!」
「………そう、それなら良いわそれで今日はどうしたの?」
よし、危険は乗り越えたみたいだね。
「はい、今日はここ最近桜田高校付近で起きてる事を生徒会の皆さんは何か把握しているかなぁと思って聞きに来ました」
その話を慎二がすると生徒会の皆は顔を見合っていたが、結局誰も知らないみたいで生徒会長が申し訳なさそうに伝えてきた。
「ごめんなさいね、ちょっと最近は何が起きてるか耳に入ってきてないわ、何かあったの?」
生徒会でも把握していなかった内容なのか、丁度来て良かったね!
「それが、最近になって桜田高校付近で人攫いが頻繁に目撃されてるみたいなんです」
「人攫い……という事はこの話を生徒会が学校側に話を通して登下校の時に出来るだけ1人にならないように声をかければ良いってことかしら?」
おお、凄い!人攫いしか言ってないのに全て言い当ててしまうとは……
「そうですね、今綾杉生徒会長が言った通りで先生方に話を通してもらって良いですか?一応期間は今日から1週間を目安にして頂けるとありがたいです!」
「わかったわ、こちらで話を通しておくから安心して頂戴…所で……」
生徒会長が何かを言う前に慎二はダッシュをして生徒会室から逃走した。
(ふ、ふん!いつもの僕と思ってもらっちゃ困るよ?途中から雰囲気がおかしかったからね、出口付近にいたから逃走出来て良かったよ)
そんな事を考えながら廊下を走っていたら、慎二のスマホに通知音が連続で鳴っていた為、無言で確認してみる事にした。
「‥‥‥‥」
スマホに来ていた内容は「また今度沢山話そうね!」や「今度一緒に遊ばない?」などありふれたメールが来ていた。
これだけ見れば「普通のメールじゃないか?」と思うかも知れないが……最後の文に「死」や「殺す」が書いてあったらまた別の問題だ。
怖くなった慎二はまともに返信を返さずに直ぐ様その場から逃げ出す事にした。
慎二はこの時に知った、結局逃げてもまた後で恐ろしい事が起きるだけだと。
そのあと、生徒会長達はしっかりと学校側に今の状況を話してくれたみたいで登下校する際は1人で帰らないよう徹底してくれた。
それから何も起きないまま3日ほど経ったある日の放課後、慎二は「F」クラスから大分離れた空き教室にいた。
「これで一先ずは今出来る下準備は出来たかな?……僕が「未来を見た」内容では「今日の」5月24日6時30分に桜田高校の近くの駅の路地で女子2人が誘拐される事になっているけど、そう易々と普通の一般人を誘拐させる訳が無いだろうが、その為の布石ももう打っている」
そう慎二が独り言を呟いていた時、ある人物達が慎二がいる空き教室に入ってきた。
ここからが誘拐犯を捕まえる時だ。
待ってろよ「田村亮二」と思い、その人物達に笑みを向けるのだった。
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