第44話 高校とバカ達と②




 お昼になり皆が昼食を食べてから少し経った頃「F」クラスの教壇の前には慎二が立っていた。


 他のクラスメイトは今からどんな話が聞かされるのかワクワクしながら待っていた。


 そんな中、慎二が口を開いた。


「今から話すことは今日の朝ハトケンと話していたから少し知ってると思うけど、今桜田高校付近で人攫いが起きているんだ。その件と僕の「人助」に何が関係があるのか?と思ってる人もいると思うけど……その依頼主に関わって来る話かもしれないからなんだ、その依頼主こそ由比ヶ浜先生なんだ」


 その話を聞き、殆どのクラスメイトが興味を示した様に慎二の次の話を聞く体勢に入った。


 それを確認した慎二話しかけて再度口を開く。


「由比ヶ浜先生からの依頼の内容がこの頃誰かにストーカーされていると言うことらしい。そこで今高校付近で何か起こってるかハトケンに聞いたら人攫いが起きてると言うから、ストーカー=人攫いと連想してさ、もしかしたら何か関連しているかもしれないと思ったんだよ」

「なるほどね、だから僕に慎二君は今何が起きてるか聞いて来たんだね」


 服部の話を聞くと、周りも「そう言うことか」と言う様に頷いていた。


 ハトケンもだけど、周りの皆も内容を理解してくれたみたいだ。


「それでなんだけどね、出来たら皆に手伝って欲しいことがあるんだ、それが由比ヶ浜先生の護衛だ。僕が出来ればやりたいんだけど犯人を探すと言う別件のこともあってね、どうか皆引き受けてくれないだろうか?勿論護衛と言っても高校にいる時や登下校の時に何人かで由比ヶ浜先生を1人にしないように付いていてあげて欲しいだけなんだけど、やってくれるかな?」


 慎二が皆にそう聞いたら殆どの男子生徒が「任せろ!」と声を高く出し言ってくれた。


 皆、なんか違う思惑はありそうだけど、そのぐらい気合を入れてくれた方が由比ヶ浜先生の護衛もしっかりやってくれるだろうから良いか。


 そう思い、慎二が次の話をしようと思ったら女性陣、吉野と悠木から声が上がった。


「まったく男子の魂胆なんて見え見えよ、それで前田?私達は何か手伝う事あるの?」

「そうだよ前田君!私達も何か手伝える事があったら言って欲しいな!」


 そう聞かれた慎二だが、特に2人には手伝ってもらいたい事は無かったので悩んでしまった。


 ううーん、正直その人攫いの目的は女性を誘拐する事みたいだから、吉野さんと悠木さんじゃ逆に狙われそうなんだよね。


 出来れば由比ヶ浜先生と同じ安全な場所にいて欲しいんだよね。


 そう考えた慎二は今考えた事をそのまま口にする事にした。


「2人共手伝って貰えるのはありがたい事なんだけどね、今回の人攫いの目的が女性みたいなんだよ、だから可愛い2人がいたら逆に人攫いのターゲットになる可能性があるから出来るだけ安全な場所にいて欲しいかな?また何か2人が出来る事を考えとくからさ!」


 そう慎二が言ったら、何故か2人共顔を真っ赤にして下を向いてしまった。


 えぇー!?なんで2人して顔をそんなに真っ赤にしてるのさ……まさか熱が出てたりして?


 そんな風に変な事を考えていた慎二に雄二が教えてやった。


「あのなぁ慎二、そういう事はここではやらないで欲しいな、女性を口説く行為は他所でやってくれ」

「いや、そういう意味で言ったんじゃないから!?つい口に出ちゃったけども!吉野さんと悠木さん違うからね?ほら何かちゃんと考えとくからさ!」


 そんな慎二の言葉を聞いても未だに下を向いている2人は、首を上下にコクコク動かしていた。


 反応はしてくれてるから聞いてはいてくれてると思うと思い、慎二は話を進める事にした。


「は、話を戻すけど護衛期間は今日合わせて1週間ぐらい行って欲しいんだ、あとはあまり騒がしくしないで欲しい、犯人にこっちが調べているのを気づかれたくないからね、それにこの事はもう警察官にも伝えてるし犯人を探す時は僕と警察官の皆で行う予定だから皆はそんなに身構えなくて大丈夫だからね」


 そう慎二が言ってクラスメイトを見てみたら……何も言わず驚いた顔をして慎二の事を見ていることに気づき逆にこっちが驚いてしまった。


「な、何?どうしたのさ、皆して僕の顔なんてマジマジと見て?」


 自分の顔に何か書いてあるのかな?と思いスマホのカメラ機能で顔を見ようとしていたら、雄二が聞いて来た。


「なあ、慎二が今言ったことってその……手伝ってくれる警察官達と考えた事なんだよな?」


 そんな事を聞いて来たから慎二は何も考えず話した。


「ん?僕1人で考えたけど?警察官の皆は手伝ってくれるだけだよ?このぐらい誰だって考えつくでしょ?」


 何を言ってるんだろう雄二は?大人だったら簡単にこのぐらい考える…大人?……あっ………僕今高校生じゃん!


 ようやくおかしい事に気付いた慎二だったが、気付いたところでもう遅く。


「いやな、普通の高校生はそんな先まで考えることは出来ないと思うぞ?俺は一瞬お前が大人じゃないかと錯覚すら感じたぞ?」

「だよね〜慎二君がやけにカッコ良かったよ!真剣な顔がまた大人っぽかったよね!」


 そんな事を雄二と由紀が言ってきた。


 だから、誤解を解く事にした。


「僕が大人なわけないでしょ!これでも「人助の部活」を作ろうとしてるんだよ?これぐらい出来なくちゃね、人を助けるのも相談を聞くのも信用が大事だからね!」


 説明をしたら、「まあそうだよな」と納得してくれたようだ。


 危なかった!たまに自分が高校生の事を忘れそうになるから気をつけないとね。


「まあ、そういう訳で皆にお願いするよ何かあったら僕に教えてね!それと放課後はちょっと生徒会にもこの話を伝えてくるよ、もしかしたら他の先生とかにも話を通してくれるかもしれないからね」


 そう慎二が話を締めくくり、昼の説明会は終わった。

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