由比ヶ浜千夏救出作戦
第41話 高校とバカと助け合いと①
◆
ただ、直ぐには助ける事が出来そうにない。
まだ由比ヶ浜先生のこれからの「未来」に起こることすら「見て」いないし、今回も1人で行動しても良いけど……また前回みたいに失敗しそうになる可能性もあるから、出来るだけ他の人にも手伝って欲しいな。
それに今回の内容は少しデリケートな問題だから本当の事を伝えられないから、しっかりと皆僕の話を聞いてくれるかが問題だよね。
そんな事を心の中で考えていたら、由比ヶ浜先生が心配になったのか、考えに没頭している慎二の顔を見てきた。
「その、前田君?恐らく私の事で色々と考えてくれてると思うんだけどさ、やっぱり今回の問題は厳しいと思うんだ。助けてくれるって言ってくれたのは嬉しかったけど……無理して頑張らなくても……」
「いえ、特に問題は無いですよ?今は少し考えていただけなので、由比ヶ浜さんはただ僕を「信じて」くれているだけで大丈夫です。必ずあなたを救って見せるので」
そんな心配そうにしている由比ヶ浜先生に慎二は必ず出来ると言い張った。
そうだよね、心配だよね。
考えるのはまた後にして今は由比ヶ浜先生の「未来を見て」みるかな。
そんな事を考えた慎二は心の中で由比ヶ浜先生のこれから起こる「未来を見る」と思い、由比ヶ浜先生に顔を近づけた。
「ちょっ、どうしたの前田君?顔が近いよ?さっきは私を助けてくれるって言ってくれた時はカッコ良かったけど……今は心の準備が……」
雰囲気に乗せて慎二が何かをやってくると想像してしまったのか、由比ヶ浜先生は変な事を呟いていた。
嫌と言うより受け入れそうな雰囲気が出ていた、それがなんなのかは慎二には分からなかったが。
なんか変な事を小声でぶつぶつ言ってるけど、今は「未来を見る」事に集中しよう。
やっぱりまたあの痛みが来るのかな?でも人を救う為だ!
と、思い「未来を見た」ら。
「ぐっ……!がっーーーー!ーー!」
また頭が割れる様な目がえぐられる様な不快な痛みが慎二を襲ってきた。そんな慎二の変化に由比ヶ浜先生は先程の変な雰囲気など吹き飛び、戸惑ってしまった。
「前田君!?大丈夫?何か凄い具合が悪そうにしてるけど、どうしよう…どうしよう……」
慎二の姿を見て、どうしたら良いのか分からなくなり由比ヶ浜先生はあたふたとしてしまった。
「だ、大丈夫です!ちょっと僕は昔から持っている持病がありまして、それが今いきなり来たみたいです。今は少し落ち着いてるのでそんなに焦らないで下さい」
そんな適当な事を言って由比ヶ浜先生を落ち着かせたが、内心痛さに耐えながらもしっかりと今回も「未来を見る」事が出来た為、嬉しがっていた。
良し!「未来を見る」事に成功したみたいだ、これから何をやれば良いかは分かる、けど、、今回もバッドエンドとハッピーエンドが「見えた」よ。
バッドエンドは胸糞悪い展開だった……正直吐き気を催したよ……人を何だと思っているんだ!あんな「未来」には決してさせない……ハッピーエンドも一応「見れた」けど本当にさっき「見た」情報で合っているのかが気になる……しっかりと由比ヶ浜先生を救う事が出来る「未来」だったんだけど。
なんか最後に怖い事が起きそうでやだなぁ、今は何も言わないけど。
痛みを耐えながらも嬉しそうにしている慎二を見ていた由比ヶ浜先生は、本当に大丈夫なのか再度聞いてきた。
「前田君、本当に問題ないの?もしあれだったら病院に行く?」
「いえ、本当に大丈夫ですよ!」
慎二がそれでも「大丈夫です!」と伝えると、胸を撫で下ろす仕草をしながら笑顔を向けてきた。
「そっか、良かったよ!」
本当に僕の事を考えてくれてるみたいだね、こんな優しい人が不幸になるのなんて見ていたくないよ。
そう思い、これから何を行えば良いか伝える事にした。
「由比ヶ浜さん、いきなりで申し訳ないのですが、これからどう動くか伝えますね……まず急ぎで何かをやって欲しいとかは特に無いのですが……今日から約1週間ほど学校でも家でも1人での行動を避けて欲しいです。もしかしたら「田村亮二」が由比ヶ浜さんを自ら狙ってくる可能性があるので、何か連絡する時は順次僕の方から連絡するので僕から電話が来たら出て下さいね?」
そう言って、慎二と由比ヶ浜先生は連絡先を交換しあった。
「わかったよ前田君!でも色々と考えてくれて本当にありがとね!」
「当然の事をしただけですよ……それに、僕以外でも由比ヶ浜さんの事を知ったら助けてくれる方は沢山いると思います」
そうだ、きっと皆は助けてくれるはずだ、それは「未来」など見なくてもわかる事だ。
「そうかな、そうだと良いな……わかったよ!前田君がきっと助けてくれると「信じてる」からね!」
「任せて下さい!それにどの道僕は「部活」を作って「人助」をするつもりなので、今回はウォーミングアップ感覚で由比ヶ浜さんを助けてみますよ!……特に見返りとかはいらないですからね?もし何かくれるのなら、全部終わってから僕達が作る「部活の顧問」にでもなって下さいよ!」
そう「人助」に見返りなどいらない、だって好きで自分は人を助けているのだから。
そう言って、由比ヶ浜先生とは「また学校で」と言って別れた。
慎二はそのまま由比ヶ浜先生のマンションの近くから少し離れた場所に移動するとある事を確かめる事にした。
「これから起こる「未来は見えた」から良いけど、そもそもの原因の「田村亮二」の今までの悪事の証拠を知る為に今まで見た事が無かった「過去」も確認してみるかな?やっぱり「未来を見た」時と同様に頭とかに痛みが来るのかな?……まあやってみないとわからないか」
慎二は近くにあったベンチに座り「「田村亮二」の今まで行ってきた悪事」と、考えて「過去を見て」みた……すると今まで「未来を見る」時の痛みは頭痛だったのが、「過去を見た」ら、体の節々が痛くなる様な感覚に陥りベンチに座っていられない様な状態になってしまいベンチから滑り落ちてしまった。
「ぐおっ!これはまた、「未来を見た」時とは違う痛みだね……耐えられない事は無いけど痛いものは痛いからね……でもしっかりと「田村亮二」の悪事は「見れた」……思っていた以上の屑みたいだね。悪い奴ほど世に憚るとはよく言うけど…これは……早く知れて良かったと思う。もう既に手遅れになっている人達には申し訳無いが……これ以上の被害者はもう出さない、必ずだ!」
慎二が「見た田村亮二の過去」は酷いものばかりだった。
由比ヶ浜先生の様に多額の借金にどっぷりと浸からせて人を不幸にする事は当たり前、かなり裏の世界とも繋がっているらしく人身売買にも手を出してるそうだ、最近の情報だと桜田高校付近で人攫いを行っていると言う。
「でも……人攫いについては使えるかも知れないね、今まで色々な悪事を働いてきたんだ、少し痛い目に合わせないと割に合わないよね?……さて、今出来る事をやるとするかな」
慎二はこれからやる事で人の助けが必要な為、ある人物に協力をお願いする為に電話をしてみる事にした。
「プープー、プープー」と2コールほどでその人物は電話に出てくれた。
「いきなりお電話してしまいすみません。今大丈夫でしたか?鈴木さん」
慎二が協力をお願いした人は鈴木だった。
『久しぶりだね慎二君、僕は大丈夫だよ?何かあったのかな?」
「その、また助けたい人がいまして、鈴木さんに協力して頂きたいと思い連絡しました」
『「人助」か……慎二君らしいね。良いよ、君の頼みだ軽く引き受けようじゃないか』
鈴木はあっさりと慎二の言葉を肯定した。
ただ、慎二自身は「流石に簡単に信じ過ぎでは?」と、思ってしまった。
信じてもらえるのは嬉しい事だが、それはそれであっけらかんとし過ぎている為、逆に怪しんでしまった。
「………そんなに簡単に引き受けて大丈夫ですか?ありがたいのですが……ただの学生の戯言かも知れませんよ?僕が言うのもアレですが……」
『まぁ、普通はそう思う人が多いだろうね、でも僕は慎二君、君を評価している。君をただの学生だとは思っていないよ?それより君と僕は友人だとすら思っている。だがら、僕は君と対等でいたいんだ』
鈴木に「対等でいたい」とまで言われるとは思っていなかった慎二は、嬉しかった。
こんな事を言ってもらえるなんてありがたいな。
「あり…がとうございます……僕も鈴木さんの事は友人だと思っています」
『ああ、こちらこそだよ……それ?で今回はどんな事があったんだい?』
鈴木に聞かれた慎二は、要件をかいつまんで話した。
「………と、言う事があってどうしても助けたいのです。知っていて僕は見て見ぬ振りなどしたくは無いんです!」
『なるほどね……また悪い奴もいたものだね……さっきも言ったが僕は君に協力しよう。それに重ねてしまうんだよ、自分の家族と。もし慎二君に助けて貰わなかったら僕の家族が標的にされていた可能性もありえる、だからそんな人間僕達で断罪しなくてはいけないんだ、そうだろ慎二君?』
そうか、鈴木さんは本当に奥さんと娘さんが好きだもんね。
「その通りです、任せっきりになるかも知れないですが……お願いします!」
『任された!「田村亮二」と「由比ヶ浜さん」の件はこちらで必ず調べあげよう!また分かり次第連絡するよ』
そう言って鈴木との連絡を終えた。
慎二は続いて警察署にも協力を要請する事にした。
「正直警察署にはもう行きたくないんだよね、また絡まれたら嫌だし……それに僕の事を信じてくれるかもわからないんだよね……その為に「田村亮二」が行なっている人攫いを使って証拠を集めようとしてたわけだし……何故か「未来」通りなら何も言わなくても警察の皆は手伝ってくれる事になってるけど……証拠はあればあるほど良いよね……」
そう思った慎二は今まで座っていたベンチから立ち上がり、行きたくないが桜田警察署に向かう事にした。
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