第4話 夏休みの終わり
のんびりと夏休みを続けていた桜夜たち。そんなある日の朝食時。桜夜がトーストを口にした瞬間、スマホが鳴り出した。私用のスマホではない、鳴ると厄介ごとが舞い込む仕事用のスマホだ。
(どうしよっかなあ。無視しちゃおっかなあ)
桜夜のルーズな部分が出かかったが、あずさに「桜夜、ちゃんと出なさい」と𠮟られると、パンを飲み込むと渋々電話に出た。
「はい、水希桜夜です」
「水希相談役、休みの中すまんな」
聞こえてきたのは四方院家宗主四方院玄武の声。しかもいつものように桜夜と呼ばないあたり、緊迫感が伝わって来た。
「いえ、四方院家相談役に休みはありませんから」
若干の皮肉を込めながら桜夜は返す。
「とりあえずテレビをつけてみてくれ」
玄武の指示を受け、桜夜はリモコンでテレビの電源を入れる。すると緊急ニュースと銘打って、アメリカの経済含めあらゆる活動がストップしている、現地のスタッフにも連絡がつかないとがなり立てていた。
「現地の四方院の手の者には連絡がついた。どうやらアメリカ全土の住人は眠っているか、家から出てこないらしい」
桜夜はしばらく考え、ふとつぶやいた。
「……怠惰」
「なに?」
「この前ローマで封印した穢土の剣が七大罪の武具だということはお話しましたよね。そしておそらく穢土の剣は傲慢の大罪を司るもの。人の身で人類を裁く権利があると考えたイグドラシルの傲慢さの表れ。ならば今度は怠惰の武具が人類からやる気というやる気を奪っているのかと」
「ふむ……興味深い仮説だが、なぜ四方院の手の者は無事なのだ」
「おそらくは高い霊力や魔力が抵抗力となるのではないでしょうか」
「なるほど……。では四方院家宗主の名の下に命ずる。直接アメリカに渡り、原因を調査せよ」
「はっ、承知いたしました」
そこで電話は切れた。桜夜はため息を吐くと、皆に告げた。
「夏休みは終わりだ。僕はこれからアメリカに向かう。サイカは……」
サイカを見ると、「またお留守番……?」と置いて行かれる犬のような顔をしたので桜夜は少し考えたあと言い換えた。
「リオとサイカは僕と共にアメリカへ。ホムラはあずさを護衛し、四方院家で待機だ」
「えー、なんでオレだけ置いてけぼりなんだよ」
「君には浄火の力がある。万が一四方院家が襲われたときの守りとして残ってほしい。頼りにしているよ。ホムラ」
「ふ、ふん、わかったよ……」
ホムラは顔をかすかに赤くしながらそっぽを向いた。そして今度はあずさが桜夜の両手を握る。
「桜夜、気を付けて。あたしには待つことしかできない」
「待っていてくれる人がいるから、がんばれるんだよ」
桜夜が笑うと、あずさも切なげに微笑んだ。
「サイカ、リオ、桜夜をよろしくね」
「うん!」
「もちろんです」
「では行こう」
桜夜の号令で全員が動き始めた。
to be continued
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