第1話 情報戦
刀を握って殴り込みに行く争いの仕方はもう古い、そう桜夜は考えている。力づくでイグドラシルを全滅させようとしても水面下に潜られる危険があるし、暗殺合戦にもなりかねない。当面必要なのは、イグドラシルが持つ抗ウイルス薬の奪取か、その開発の妨害だった。そのためにイグドラシルにスパイを紛れ込ませているし、そして……。
「頼むよ。鷹司君」
「任せてください」
鷹司の名で呼ばれたのはもちろん先代相談役である鷹司公のことではない。彼の孫にあたる青年、鷹司勝(すぐる)のことだった。身体が弱く相談役候補からは外されていたが、その天才的頭脳に目をつけた桜夜がハッカーとして起用しているのだ。そのハッキング技術で抗ウイルス薬やウイルスのデータや情報の入手を指示されていた。
「さって、僕は僕の仕事に向かいますかね」
◆◆◆
「ヴェネツィア!?」
桜夜の私邸で、あずさの声が響いた。
「ああ、次のミッションではヴェネツィアを拠点にイグドラシル本部がある拠点ローマを探る」
「あたしも行きたい!」
桜夜は困ったように笑う。
「リトルプリンセス。遊びではないんだよ」
「む。わんこのくせに変なこと言ってごまかす気だな」
桜夜はますます困った顔になる。
「今回は観光や式典への出席じゃないんだ。いのちに関わる仕事なんだよ」
「なんでわんこがそんな危険な仕事を」
「そりゃあ、先代と宗主に文句を言ってもらわないと。彼らが任命したんだから」
あとはリチャードか、なんて友人の顔を桜夜は思い出す。そこできひひと笑ったホムラが口を挟む。
「はっきり言ってやれよ。戦えない奴は足手まといだってよ」
「むううう」
あずさは頬を膨らませると桜夜の寝室に入り、ドアを乱暴に閉めた。
「ホムラ」
「ふん」
桜夜の窘めるような言葉にそっぽを向くホムラ。桜夜は仕方ないとばかりにため息をつくと、リオの方を見た。
「リオ君。準備はOK?」
「はい、バッチリです」
「では命ずる。リオ君とホムラ君は僕と同道してサポートを。サイカ君は日本に残りあずさの護衛と監視を頼む」
「はい!」
3人の返答を聞くと桜夜は出発のため玄関に向かった。
to be continued
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