第19話 貴重な日常
俺が四ツ星昇格試験を受け始めてから、早くも三週間が経った。
この日、俺は八王子の喫茶店にて、遠野さんと会っていた。
用件は、もちろんキマリスのトレードについて、だ。
「————さて、この度はお忙しい中お時間を頂き、誠にありがとうございます」
久々に会った遠野さんは、心無しか以前よりもやつれているように見えた。
やはりこんなことになって、札商である彼も相当忙しいのか、その顔には濃い疲労の色が見える。その上、深々と下げた頭には、ストレスの象徴である十円ハゲまで出来ていた。
「それで、キマリスのトレードに応じていただけるとか?」
「はい」
キマリスについては、悩みに悩んだが、結局トレードに出すことに決めた。
アンナがガーネット探しに使える新たなカードを手に入れ、眷属召喚が可能なカードが増えつつある今も、軍団召喚を持つキマリスの価値はいまだ健在である。むしろ、ネヴァンというパーティー全体を装備化できるカードを手に入れたことにより、さらに上昇したといって良いだろう。
それでもトレードに応じることにしたのは、どうしても欲しいカードがあるのと……やはりキマリスとのフィーリングが合わなかったのが、最大の決め手だろう。
この三週間でキマリスは実際につかって試してはみたが、どうにも『俺のカード』という感覚がなかったのだ。
キマリス自身も、俺のことを嫌ってはいないが、好いてもいないのがなんとなく伝わってきた。
それは、俺はあまりキマリスを有効活用できなかったからではなく、俺自身があまり悪魔という種族好みの性格ではないからであるようだった。
悪魔という種族が好むのは、自分の欲望のためなら親兄弟をも犠牲にできる人間や、あるいは自分の魂を捧げるほどにたった一人の人間に執着するような人間なのだ。
家族や友人たちの安全のために駆けずり回っている俺は、キマリスから見てあまり面白い人間に見えなかったに違いない。
元々、俺とは相性がそれほど良くなかったということなのだろう。
キマリスを手に入れられるほどの金やコネを持つ人間は、俺のような人間よりも悪魔が好みそうな者が多い。
こうなった以上さっさと手放してやる方が、キマリスのためというものだった。
「トレードに関してですが、さすがに世界がこんなことになってしまったため、大会の優勝賞品というプレミアは換算することができません。ただ、それ以上にキマリス自身の価値が上がってきているので、以前の条件よりもさらに良い条件でトレードすることができます」
アンゴルモアを前に、プレミアだのなんだのといった付加価値は、ほぼゼロとなってしまった。
しかし、キマリスに関しては装備化スキルと軍勢召喚により、日を追うごとに値上がりしており、むしろプレミア付きだった頃よりも高くなっているくらいだった。
「……それで、トレードの条件は本当にこれで良いんですか?」
「ええ————零落スキル持ちの瀬織津姫(せおりつひめ)。それと小通連。それでお願いします」
瀬織津姫は、穢れを祓い清める川の神であり、橋姫や鈴鹿権現(鈴鹿御前)と同一視される神である。
マイナーではあるが、れっきとしたBランクカードであり、橋姫と同一視されることからもわかるように、鈴鹿のランクアップ先である。
当初の予定では、特殊型迷宮の方でイライザたちのランクアップ先となる三相女神を、Cランク迷宮の方では鈴鹿かドレスのランクアップ先を狙う予定だった。
ところが、予想に反して特殊型迷宮の方でデュラハンのランクアップ先となるネヴァンが手に入ったため、Cランク迷宮の方では鈴鹿のランクアップ先に絞って狙うこととなった。
しかし、なかなかアタリが出ず、残り十日を切った昨日の時点で良い感じの主が出現したら運命操作を使うと決めたところ、その矢先にかなり欲しい主が出てしまったため、そのカードを手に入れるために運命操作を使ってしまったのだ。
それ自体は、まあ良いのだが、問題はこれで鈴鹿のランクアップの目途が立たなくなってしまったことである。
そこで思い出したのが、遠野さんの存在であり、キマリスのトレードというわけだった。
「クダンの予言の発表以降、零落スキル持ちのBランクカードも値上がりしていますが、それでも瀬織津姫とキマリスでは、オマケを付けてもまだキマリスの方が高い。それに三明の剣を求めてることから鈴鹿御前を狙っているんでしょうが、三明の剣は最後の顕明連を手に入れるのが最も難しい。大通連Cランク、小通連Bランク、顕明連Aランクと言われるほどですからね。国内では今までに一振りしか見つかってませんし」
「ハハ……まあ、ロマンですよ、ロマン。やっぱ、Aランクへの霊格再帰って憧れるじゃないですか。それに、小通連だけでも十分有益ですし」
「ふむ……まあ、北川さんがそれで良いなら、こちらとしても助かりますが。ああ、ちなみにその瀬織津姫ですが、大通連と小通連に反応したことは確認しています」
へぇ……! ソイツは朗報だ。
ってことは、あとは顕明連さえ揃えればマジで鈴鹿御前に霊格再帰できるのか。
……まあ、それが最も難しいんだが。
あ、そうだ。
「遠野さんってアラクネーって在庫持ってます?」
「アラクネー? ああ、なるほど、最近地味に人気ですよね」
「あ、やっぱりそうなんですね」
「ええ、生産系のカードはどれも徐々に値上がりしてますよ。やはり、皆さん万が一文明が崩壊した後のことを考えるようで」
考えることはみんな一緒か。
「もし今在庫があるならぜひ買いたいんですが」
「ああ、そういうことでしたら、この場でお譲りしますよ」
「ええ……?」
譲るって、タダってことか? 仮にも商人がそれで良いんだろうか?
「ぶっちゃけ、Cランク一枚くらいなら、キマリスくらいのトレードになると、誤差ですよ、誤差。このままだとさすがに良い取引とは言えないんで、これぐらい付けさせてください」
……遠野さんがここまで言うってことは、マジで損な取引だったんだな。
俺なりに相場を調べての取引だったんだが、零落スキル持ちの瀬織津姫なんて参考になる相場が見つからなくて、かなり適当な取引になったことは否めない。
それでも今のキマリスの価値はわかっていて、Bランクカード並みの希少度と言われる小通連も付けたんだが、それでもまだ安かったようだ。
こりゃもう一枚か二枚くらいCランクカードを付けられたかもな……と思いつつも、あまり欲をかいても良いことはない、とアラクネーを手に入れられたことに満足して家路につくのだった。
『————岳口(だけくち)教授は、政府の全国民一律カード配布の件、どう思いますか?』
『いやぁ、やはりですねえ、Eランクカード一枚とFランクカード五枚では到底足りないと思いますよぉ、ええ。アンゴルモアが始まれば、Dランク以上のモンスターも出現するわけで、ええ。
それを考えれば、やはり国民全員にDランクカードを配るくらいしないと、フェイズの進行を食い止められないと私は思いますねぇ、ええ』
『飛鄭(ひてい)さんは、今の岳口教授の発言をどう思いますか?』
『私は、Eランクカードを配ることも反対ですね。
過去のアンゴルモアでは、モンスターの被害だけではなく、カードを悪用した犯罪も行われました。カードを迷宮の外でも召喚可能となるアンゴルモアでは、カードを持つすべての人が加害者となりえる。
Dランクモンスターが迷宮からあふれ出すまで、数時間程度の余裕はあります。それまでに避難所に行けば、カードの必要なんてないわけですよ。少なくとも、避難所ではすべてのカード、魔道具を一時的に回収するくらいの措置は必要だと思いますね』
『それはどうでしょう? すべての人が避難所に入れるとは限らないと私は思いますけどねえ、ええ。
ギルドの避難所は、比較的大きな駅にしかなく、大体どこも五万から十五万程度。指定都市であれば人口50万人程度、中核市なら人口20万人はいるわけで、ええ。
誰でも頑丈で安全なギルドの避難所に入れるわけではない以上、学校や病院、ホテルなどの臨時の避難所に籠ることになる人達には、最低限の自衛手段くらいは用意してあげるべきだと私は思いますけどねえ、ええ』
『臨時の避難所に指定された学校や病院、ホテルなどの場所には、Cランクカードを一枚、規模に応じてさらに追加のDランクカードを数枚配備することが決定されましたよね?
フェイズ1までならそれらのカードで十分避難した方々を守ることができるでしょう。やはり私はモンスターよりも、人間の悪意こそを警戒すべきと思いますね』
『Cランクカード一枚とDランクカード数枚で、数百人という人間を守り切れるとでも? やはり、全国民にDランクカードを一枚は配るべきと私は思いますね、ええ。もし私が総理なら、そうしますよ、ええ!』
『全国民にDランクカードを配るなんて、そんな財源はどこにあるんです? そもそも、一億枚以上のDランクカードなんて……どうやって用意するんです? Dランクカードのドロップ率をご存じない?
大体、私はアンゴルモア自体疑問視していますね。予言のどこにもアンゴルモアなんて単語はないじゃないですか!』
『君ねえ! それを言ったら議論がなりたたないだろうが! アンゴルモアが起こったらという前提で我々は話しているわけで————』
そこで、番組のチャンネルが切り替わる。
「はあ、最近、同じような番組ばっかりねえ」
夕食中、なんともなしにつけていたTV番組を見ていたお袋が、リモコンをテーブルに置きながらうんざりしたように呟いた。
「私、もうこういうの見飽きた〜」
「たしかに、繰り返し同じようなことを言ってるな」
愛の嘆きに、親父も頷く。
実際、ここの所毎日同じような番組が繰り返し流れている印象があった。
アンゴルモアが起こったらのリアルなシミュレーションをしてくれる番組なんかは、最初は助かったが、それも繰り返し同じようなのを流されるとうんざりするし、それにああいう番組は些か偏っているというか、一部の危機を大袈裟に煽り過ぎているように見えた。
そういえば、と俺は愛に声をかけた。
「愛、なんか学校でカードの使い方を学ぶ授業が始まったんだって?」
「あ、うん。自衛隊の人たちと、迷宮に行ってカードの召喚とか、順番でモンスターと戦ったりしたよ。なんかクラスの馬鹿な男子たちが、カード同士でバトルさせたりして、泣くほど怒られてた」
アホだよねー、と言う愛に、俺も親父も苦笑した。
自分が小学生男子の頃を思い出したら、その男子生徒たちを笑えなかったからだ。
そりゃあ、普段からモンコロみたいな番組を見ていて、ポンとカードを渡されたらそういう行動をする男子も出てくる。男子小学生とは、そういう生物なのだ。
「しかし、やっぱ小学生とかまでカードを配るのはやり過ぎだったんじゃね? 馬鹿なことするガキも出てくるしさ」
避難所生活でカードを使って悪戯するガキとか出てきたら、軽い地獄絵図だぞ。
「ふむ、難しいところだが、そういう馬鹿な子たちに抵抗するためにもやはりカードが必要になるだろうしな。……馬鹿なことをするのは子供だけじゃないだろうし」
そういう親父の視線の先には、お年寄りに配布されたカードをだまし取ったとして、若者のグループが逮捕されているニュースが流れていた。
確かに、子供とか大人とか関係なしに馬鹿な奴は出てくるか。
「っていうか、お兄ちゃんの学校じゃそういうの……あっ。そうか、お兄ちゃん学校に……」
「おい! 引きこもってるみたいに言うな!」
気まずそうに目を逸らす愛へと、俺は断固として抗議した。
俺は、単なる登校拒否ではなく、ちゃんと事情があって休学しているのだ。
そんな俺へと、親父は複雑そうな顔で問いかけてくる。
「うーん、こんな状況だから仕方ないっちゃ仕方ないが、学校はもう行かないつもりなのか?」
「いや、行くよ」
「お? そうなのか? なら良いんだ。……学校なんて今しか通えないからな」
「……わかってる」
俺は神妙な顔で頷いた。
今なら、学校に通えるというのが、どれだけの贅沢だったのかがわかる。
いまさらではあるが、わずかに残った貴重な日常は、大切にして過ごしていくつもりだった。
……とはいえ、今の学校にどれだけかつての日常が残ってるかは、疑問だが。
試験が始まってからは、試験に集中するため学校のことに関しては、完全にノータッチになっている。
実際は、報告を受け取るくらいの余裕はあったのだが、学校を離れている俺に出来ることなどあんまりないし、アンナの考えはこの前ので大体わかった。
よって、他の部員ともちゃんと相談して進めるようにとだけ言って、後は任せることにしたのだが……。
たぶん、俺の知る学校とは様変わりしていることだけは、予想がついた。
アンゴルモアの脅威を前に、今までのようにのほほんと過ごせる人間は少ない。
街を歩いていてもシャッターを下ろした店も増えてきたし、急速にかつての日常が失われていくのを感じる。
おそらくそれは、学校も例外ではないだろう。
……まあ、それも明日になればわかることか。
俺は内心で嘆息すると、親父へと言った。
「まあ、昨日で試験も全部終わったし、明日からまた学校に通うよ」
俺の三週間にわたる主ガチャは、ヘファイストスを昨日ドロップしたことで終わりを告げた。
ヘファイストス……そう、男カードである。
男カードであるにもかかわらず、鈴鹿のランクアップ先を差し置いてでも手に入れたのは、このカードがどうしても必要だったからだ。
ヘファイストスは、ギリシャ神話における鍛冶・工芸の神である。
アイギスに、アルテミスの矢、ハデスの兜、アキレウスの盾といった武具の類から、ゼウスの玉座や自我を持って動く三脚器(今でいう自動車椅子)のような道具類、はては青銅の巨人タロースやかのパンドラの箱で有名なパンドラまで。
ギリシャ神話における名のあるアイテムは、大体は彼の作品である。
だが、その有能さに反して、その逸話は不遇の一言。
女神ヘラの最初の子でありながら醜いという理由で天から海に投げ捨てられ、妻のアフロディーテには外見で嫌われた上に浮気され離婚。女日照りのあまりか、仕事場にやってきたアテナに欲情して彼女の足にぶっかけ(マイルドな表現)をしたという、極まったキモオタでも中々しないような奇行に走っている。
そんなエピソードを持つヘファイストスさんであるから、手に入れようとした時は、アテナからそれはもう滅茶苦茶反対された。
一緒に召喚されるだけで妊娠してしまう、とまで言っていたからな……。
実際、神話の中ではぶっかけられた白濁液を拭きとった羊毛から、人間の上半身と蛇の下半身を持つエリクトニオスが生まれているから、あながち被害妄想とも言い切れない。なお、アテナはちゃんとエリクトニオスを引き取って育てている。偉い。
それでも、アテナの強い反対を押し切ってまでヘファイストスを手に入れたのは、彼女にも無関係な話ではない。
彼女が強く求める神殿。
それが、ヘファイストス一枚あればすべて事足りるからだ。
ヘファイストスは、鍛冶・工芸の神である。当然、その範疇には建築も含まれている。
また、ヘファイストスは、自らの助手でありBランクモンスターのキュクロープスを眷属として呼び出すことができ、キュクロープスたちもまたCランクのサイクロプスたちを召喚することができる。
サイクロプスは、キュクロープスの英語読みのはずなのだが、迷宮においては別のモンスターとして出現する国が多い。知性と優れた鍛冶の腕を持つ下級神がキュクロープス、知性のない怪物としての存在がサイクロプスということなのだろう。
サイクロプスは、工作の腕は持たないが、力仕事には最適の存在である。キュクロープスたちが監督となり、ヘファイストスが設計・建築・全体指揮を行う。
つまり、ヘファイストス一枚で神殿が建つのである。
これには、アテナもぐぬぬ顔で納得せざるを得なかった。
というわけで、俺のデッキに男カードが初めて正式に加わったのだった。
ただし、リンクへの悪影響を考え、俺が彼にリンクを……というか戦闘に使うことはないだろう。
完全なる生産要員というわけだ。
「……お! じゃあCランク迷宮を踏破したのか。これで歌麿もプロってわけか」
「おめでとう、やったじゃない」
「お兄ちゃんすごーい!」
俺の試験終了宣言に、家族全員が顔を綻ばせる。俺はそれに苦笑しながら答えた。
「いや、まだ実技クリアしただけだから、四ツ星じゃないんだけどね。あ、そうそう、新しいカード渡しておくわ」
そう言って、俺は今日新しく手に入れたCランクカードを親父へと手渡した。
「む、悪いな。正直、助かる。でも、こんなに渡してお前が使う分は、大丈夫なのか?」
「大丈夫だよ。使わないのだけ渡してるし」
おかずを口に運びながら平然と言う俺に、しかし親父は心配そうな表情で言う。
「だが、すでに二十枚以上は預かってるぞ」
二十枚……改めて聞くと、凄い枚数だな。
だが、本当に大丈夫なのだ。なぜなら、俺がこの三週間で手に入れたCランクカードはその倍近いのだから。
俺のこの三週間のリザルトは、以下の通り。
■カードのドロップ
・Dランクカード合計104枚(その内、人気カード42枚)
・Cランクカード合計48枚(その内、4枚は購入によるもの)
付喪神:特殊な装備化モンスター。面白いモンスターなので当然キープ。
モルモー:ギリシャ神話の吸血鬼にして淫魔。ヘカテーにエンプーサと共に仕えると言われている。エンプーサの無限眷属召喚持ち。キープ。
サキュバス:メアの復活用に当然キープ。
デュラハン(2):一枚は愛に、もう一枚は親父に。二人が持っていたリビングアーマーは、家にいる時間が多いお袋が持つことに。
・新規購入分
アラクネー:ギリシャ神話の蜘蛛の怪物。美しい女性の上半身と蜘蛛の下半身を持つ。神すら認める優れた織り手で、どんなシルクよりも極上の肌触りの糸を自ら生み出すことができる。アンゴルモア中の生産要員。今日、遠野さんから購入。
壺中之天:見た目は小さな壺だが、その中は立派な建物となっており、核となる仙人が常に温かい料理と美酒で持て成してくれる。異空間型カード。家族の避難先として地下室へ。
マヨヒガ(2):やはり合流に時間がかかった時のことを考え、愛と親父に一枚ずつ。
残りの39枚:十枚は、マヨヒガ等の購入資金に売却済み。残りは、大半を家族へ。誰がどれを持つかは本人たちに任せた。家族全員分のカードホルダーを渡しているので、盗難の恐れはない。
・Bランクカード一枚
ヘファイストス
■アイテムのドロップ合計164個
・レアドロップ(13)
白紙のカードの束:売却1000万円。
コールドアイロン(10kg):魔よけの力を持った金属。壁などに混ぜることで、霊体モンスターのすり抜けを阻害する効果があり、今や金以上の価格で取引されている。1億4000万円で売却済み。
バベルのカフス:愛が欲しがったので、愛へ。……マルと話してる時に、たまにこっちを憐れむように見てくるのが気になる。
薬水の水差し(2):地下室行き。
カードホルダー(2):さらに一個購入し、家族全員で一つずつ。
魔石袋(4):家族全員に一つずつ。
遭難のマジックカード:俺が所有。
レベルアップのマジックカード:地下室行き。
・ノーマルドロップ(152)
ポーションやマジックカード等、すべて地下室行き。
・新規購入分
廉価版カードギア(3):ようやく、普通に買えるようになってきたため、アンゴルモア時の連絡用に家族全員のカードギアを購入。
わずか三週間、それも一人で潜っているにも拘らず、これほど大量のカードをドロップしているのには、もちろん絡繰りがある。
元々、真・スキル化したことにより、蓮華の幸運の加護も高まり、俺のドロップ率は通常の十倍ほどになっていた。
冒険者部の皆と潜っていた時は、ドロップ率の異常に気付かれぬようその分の幸運を貯蓄に回し、良いカードや良いアイテムを落とす敵が出現した時にだけ幸運操作をする……という使い方をしていたのだが、試験中は一人になったため貯蓄をせずに全体的にドロップ率を上げていた。
これにより、俺のCランクカードのドロップ率は1%となっていたのだが、ここにさらに一日一個のガーネットを消費することで、Cランクカードのドロップ率をさらに三倍の3%という驚異の数値とすることに成功していた。
ガーネット約二十個でCランク約40枚が多いか少ないのかは、ホープダイヤ有りならガーネット七個でBランクカードが一枚手に入ることを考えると、人によって判断が分かれるところだが……強力なBランクカード一枚よりもCランク複数枚の方が役に立つ場面もあるだろう。
ちなみに、このドロップ率増加については、『事故』が怖いためにホープダイヤは使用していない。
蓮華の加護を持つ俺であっても、極まれに運がマイナスに振れる瞬間は存在する。ホープダイヤの威力を考えると、日常使用は厳禁だった。
「大丈夫だって。蓮華のおかげでこれくらい普通にドロップするからさ」
「そうか……蓮華ちゃんは本当にすごいな」
そう言って、二人で蓮華の方を見る。
すると、将棋の駒を持てないドレスとマイラの代わりに指してやっていた蓮華が顔を上げた。
「あん? 呼んだ?」
「いや、お前は本当に我が家の守り神だって話だよ」
「なんだそりゃ」
呆れた顔をする蓮華だったが、よく見るとその頬は微かに赤くなっていた。
「どれ、ちょっと勝負を見せてもらおうかな」
食べ終わった親父が、いそいそと盤の前へと移動する。
……見てもわからんと思うがなあ。
戦術スキルを有し様々な定石を駆使するマイラと、独特の感性から思わぬ手を打つドレスの勝負は、もはや俺如きではついていけないレベルとなりつつある。
俺以下の腕前で、下手の横好きの親父ではなおさらだろう。
なにやら訳知り顔でうんうんと頷きながら見ているが……あれは確実にわかってないな。
「今日はなにするー?」
指し手を親父と交代して手が空いた蓮華に、愛が問いかける。
「人生ゲームに一票」
『メアも』
『ふ、今日こそは妾が勝ちます』
メアとアテナの言葉を聞いて一つ頷いた蓮華が、もう一つのビジョンに振り返る。
「鈴鹿もそれでいいか?」
『……いいよ』
しぶしぶ……といった表情を装いつつ内心で喜んでいるのが明らかな様子で、鈴鹿が頷く。
それを見て、俺は内心でホロリと涙を流した。
鈴鹿……自然に遊びに入れるようになったんだな。
今は蓮華がメアとアテナの仲介役となっているが、いつかは鈴鹿自身から仲間に入れてと言える日も来るだろう。
甘い香りにキッチンの方を見ると、イライザとオードリーがお袋からお菓子作りを教わっているところだった。
きっと後で人生ゲームが盛り上がってきたところで差し入れをするのだろう。
ソファーのところでは、ユウキがマル相手に忠犬とはなんたるかを説いている。
ユウキ……残念ながら、その馬鹿犬はもう手遅れだ。
そうして北川家では、今日も平和で穏やかな、しかし黄金のように貴重な時間が過ぎていくのだった。
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どっかででリクエストされた、乳比べ。
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