第15話 禍を転じて福と為す
その後、俺は鷲鼻の男の仲間たちに見張られつつ、二十一階層の安全地帯で運営からの連絡を待つこととなった。
今は、奴らから距離を取り、カードたちを見張りに建ててテントの中で休息を取っている。
しかし、嫌な予感がするとは思っていたが、まさかその日の内にやって来るとは……。
いや、別に現れたイレギュラーエンカウントが、あの笛吹き男とは限らないのだが。
それにしても、遭遇したのが自分じゃなくて良かった……。
遭遇した人には申し訳ないが、本心からそう思ってしまう。
おそらく、この迷宮にいる全員がそう思っているだろう。
一人でCランクのイレギュラーエンカウントと戦うなんて冗談じゃない。
もし地下迷宮じゃなく海の迷宮を選んでいたら、と思うとゾッとする。
それから約一時間後。ようやくイレギュラーエンカウント討伐終了の連絡が来た。
どうやら、イレギュラーエンカウントに襲われた選手——あの鷲鼻の男——も無事らしい。
とりあえず無事なのは良かった。
だが、さすがに鷲鼻の男はリタイア確定だろう。イレギュラーエンカウントと遭遇して、レースが続けられるほど元気とは思えない。
などと考えていると、
『マスター、奴らがこっちへやってきています』
見張りに立っていたユウキがそう告げてきた。
テントから出ると、無傷だが酷く憔悴した様子の鷲鼻の男が仲間に支えられて立っていた。
数時間ぶりに見た鷲鼻の男は、この短い間に一気に十年ほど年を取ったようにすら見えた。
「やぁ、北川選手……話がしたいんだが、構わないかな?」
「ええ、もちろん。……災難でしたね、大丈夫ですか?」
「はは……大丈夫とは言い難いな」
鷲鼻の男は弱気にほほ笑む。初対面の時の強気な態度が嘘のようだ。
「……交渉がしたい」
「交渉?」
「ああ……俺たちはリタイアする。そこで、俺たちの星を買い取って貰いたい」
リタイアか。鷲鼻の男がリタイアするのはわかるが……。
チラリと、鈴鹿を見る。嘘は無し、か。
「そっちには頼りになる仲間たちが他にもいるみたいですが?」
俺がそう問いかけると、鷲鼻の男は首を振った。
「残念ながら、彼らは戦力にならない。……彼らの主力のカードはすべて俺に集中させていたんだ」
主力カードの譲渡と、一点集中!
俺は彼らの大胆な作戦に驚愕した。
確かにそれならば、優勝候補たちに匹敵、あるいはそれ以上の戦力を確保できる。
しかし、自分の財産が持ち逃げされる可能性があるこんな作戦、思いついても普通は実行できない。
よほど確かな信頼関係がないと成立しない作戦だ。おそらく、彼らはこの大会のために臨時で組まれたチームではなく、普段からチームを組んでいる冒険者なのだろう。
でもまぁ、その信頼関係も今日までだろうな……。
俺は鷲鼻の男を苦々しく睨む彼の仲間たちを見回しながら、他人事のようにそう思った。
その表情から察するに、彼らの預けたカードはそのほとんどがイレギュラーエンカウントにロストさせられてしまったのだろう。
つまり、彼らは数だけは多いハリボテだったというわけだ。
全く戦えないことはないだろうが、俺と実際に戦うことになっていたら、かなり焦ることになっていたのではないだろうか。
「買い取ってほしい星の数と金額は?」
「星は合計で182個。一つ90万円でどうだろうか。もちろん、この先の階層の情報もセットでつける」
……約一億六千万か。そんなん払えるわけねーだろ、と内心で呆れつつ答える。
「さすがに無理ですね」
「もちろん、ここで払ってくれなんて言わないさ。支払いはレース終了後で構わない。それなら十分払えるだろう?」
それなら確かに可能だが……。
「レース後で良いなんて、随分俺を信用してくれるんですね」
ここで俺が彼らを騙したとしても、それはあくまでレースのルール上のことだ。
星の売り買いなどの交渉も、レイズを吊り上げるための駆け引きとみなされるだろう。
レース後にのみ金銭的な価値の発生する星を俺がだまし取ったとしても、詐欺罪などに問われることはない。
故に、選手たちは現金やカードの交換とのみ、星の売り買いを行っているのだ。
そんな意図を込めてそう問うと、鷲鼻の男はニヤリと笑う。
「信用しているさ。君は有名人だ。俺たちとは『世間からの』信用度が違う」
なるほど……ね。チラリ、と俺たちの周囲を飛び回るカメラアイを見る。
確かに、俺と他の選手では信用度が異なるか。
世間での俺のイメージは、連続殺人犯を捕まえ、その賞金をすべて遺族に寄付した『正義の人』だ。
カメラアイで一部始終が撮影されている以上、他の選手と違い、詐欺で星を巻き上げることはできない。
たとえ、ルール上問題なかったとしても、放送を見た人々は俺へのイメージを悪化させることだろう。
それは、せっかく寄付した二十億をドブに捨てる行為だ。
高々、一億と六千万のために二十億で買った信用を捨てるアホはいない。
だが……。
「もし俺がレースを完走できなかったら?」
まさかその時は払わなくて良いとは言わないだろう、と問いかけてみると。
「もちろんその時もちゃんと代金は払ってもらう」
当然、とばかりに鷲鼻の男は言った。やはりな……。
「それじゃあ、さすがに90万じゃあ買えないですね。ヘタすりゃ借金を抱えることになる」
「それじゃあいくらなら買ってくれるんだ?」
「そうですね。……一つ五十万なら」
「それはいくらなんでもないだろう。五十万なら大丈夫ということは、一億円分程度なら買えるんだな? では、星一つ90万で一億分買ってくれないか?」
「いやいや、そもそも90万じゃ、高すぎるんですよ。そっちは確実に金が手に入るけど、俺はゴールしなきゃ大赤字なわけで。星一つに90万の価値はないんですよ。ギリギリで60万ですね」
「君は今や優勝候補の筆頭だろう。その君がゴールできないなら誰がゴールできるって言うんだ? 俺たちも切羽詰まっているから、こうして腹を割って内情を話したんだ。どうか助けると思って、85万で頼む」
「優勝候補なんて言っても、こうしてあなたたちに足止めされてたわけで、この先こういった妨害がないとは限りませんよね。そう考えるとやっぱり不安ですし……70万で」
「いやいや、仲間たちから聞いたぞ。普通に戦う気満々だったみたいじゃないか。みんな戦々恐々していたらしいぞ。コイツ、マジかよ……さすが優勝候補は胆力が違う! ってな。なぁ、あんまりイジメないでくれよ……80万。ここが本当に限界だ。駄目なら違う相手を探す」
ん……ここが限界か。俺以外、レース後の支払いなんてしてくれないことを突けばさらに値下げできるだろうが……あんまり追い詰めてもな。
「そうですね……じゃあ、この後来る選手の内、有力そうな選手の足止めもしてくれるなら」
「む……? いや、それは無理だ。恥ずかしながら、俺たちにはもうほとんど碌な戦力が残っていない」
「ああ、実際には戦わなくても大丈夫です。俺にしたみたいに脅してブラフをかけてくれれば、それで」
「ふむ、まぁ……それなら。そうなると一人一つは星を残さなくてはならなくなるから……渡せる星は173個になるわけだが、当然182個分で計算してくれるんだよな?」
「ん、そう、ですね。……では、星182個分で一つ80万の……えっと、一億四千五百万で。端数はオマケしてください」
「仕方ない。全部買い取ってくれるというのだから、それくらいのオマケはすべきだろうな」
「では?」
「ああ、交渉成立だ」
俺と鷲鼻の男は、カメラアイに映るよう固く握手を交わした。
そこで彼はようやく笑みを見せ。
「いや、本当に助かったよ……これで仲間たちのカードの弁償も多少はできそうだ」
「いえ、こちらこそ」
「君の優勝を祈っているよ。これは本心だ。頑張ってくれよ」
鷲鼻の男はそう言うと、仲間たちの星を一人に集約するために安全地帯を出ていった。
————そして、それから四時間後。俺は海の迷宮を踏破したのだった。
海の迷宮を踏破し、迷宮を出たところでカードギアに運営からの連絡が届いた。
そこには、二つの迷宮を最初に踏破したのが俺であること、最後の迷宮は水道橋駅から十数分のところにある清土鬼子母神堂という特殊型迷宮であることが書かれていた。
「………………チッ」
それを見た俺は、思わず舌打ちしてしまった。
予想はしていたが、やはり最後は特殊型迷宮か。
わざわざ二つの迷宮をクリアしたら教えるなんてもったいぶっていることから予想はしていたが……できれば外れていて欲しかった。
特殊型迷宮の特徴は、何と言っても道中にモンスターや罠が存在せず、主しか出現しないことだ。
当然、その分のリソースは主に注ぎ込まれており、特殊型迷宮の主は迷宮のランクよりもツーランク上のモンスターが出現する。
つまり、Dランクの迷宮の場合、Bランクの主が出現するというわけだ。
また、出現する主は固定ではなく、挑んだ者が苦手とする、あるいは挑んだ者の強みをさらに上回るモンスターが出てくる。こちらにとって相性の良い相手は絶対出てこない。
なによりも、最大の問題は、特殊型迷宮の主は『こちらのカードの後天スキルをコピーしてくる』ということだ。
どのカードのどの後天スキルがコピーされるかはわからないが、最悪の場合、蓮華やユウキの限界突破や霊格再帰がコピーされることもあり得る。
もしも特殊型迷宮の主が限界突破を得て、さらには霊格再帰でAランクになったら俺では絶対に勝てないだろう。
特殊型迷宮は、別名『試練の迷宮』とも呼ばれている。
それは、特殊型迷宮がカードの種族の相性や後天スキルの性能だけでは踏破できない、冒険者自身の実力が試される迷宮だからだ。
多くの冒険者が、カードの性能だけに頼って迷宮を踏破する中、特殊型迷宮はそんな冒険者たちを試すようにメタ的モンスターを放ってくる。
それを破るには、冒険者自身が多少の相性の不利を覆せるくらいの実力を発揮するしかない。
また相手によって出るモンスターが変わるという性質からか、特殊型迷宮には主を倒すまで一人しか入ることができない。
一人では無理でもみんなで力を合わせれば! という攻略方法も使えないのだ。
この性質から、特殊型迷宮は四ツ星昇格のための実技試験の一つになっていると聞く。
アマチュアならともかく、プロになろうと言うならカードの性能に頼ってばかりいないで、自分の実力で超えてみろ、というわけだ。
俺も四ツ星を目指す以上、いつかは特殊型迷宮に、とも思っていた。
だが……。
「勝てるか……? 俺の今の実力で……」
思わず小さく弱音が零れる。
俺の力の大半が、蓮華やユウキと言った特殊な力を持つカードによるモノだと言うことはわかっていた。
今回の冒険者部の合宿でも、それを痛感させられた。
俺には師匠ほどのリンクの腕も、織部みたいな戦略性も、アンナのような……アンナのような……えっと、うん、まあ、アンナは置いておいて、師匠や織部のような冒険者としての強みがない。精々、ちょっとリンクを覚えるのが早いくらいだ。
師匠は、俺の強みは『カードを育てるのが上手いこと』なのだと言うが……それでは特殊型迷宮は突破できない。
ぶっちゃけ、冒険者部の中で一番四ツ星昇格試験に躓くとしたら俺では? という不安があった。
俺が立ち竦んでいると……。
『なぁ〜に、ボサッと突っ立ってんだよ』
「イテッ!」
見えない何かから、パシンと後頭部を叩かれた。
振り返りかけて、カメラで撮影されていることを思い出した俺は突然の頭痛に襲われたフリをしつつ蓮華へとリンクで問いかけた。
『なにすんだよ』
『お前がビビってるから活を入れてやったんだよ。感謝しろ』
『……別にビビってるわけじゃ』
『いや、どう見てもビビってただろ。何が怖いんだよ、この蓮華様に言ってみろ』
そう言って姿の見えない座敷童が俺の頬を突いてくる。
『いや、特殊型迷宮の主って、こっちの後天スキルをコピーしてくるわけだろ? もし限界突破や霊格再帰をコピーされたらヤベーと思ってさ……』
『ハッ、何を言うかと思えば』
俺の弱音を蓮華は鼻で笑う。
『スキルの性能や戦闘力だけで勝負が決まるなら苦労はねーんだよ、アホ! もしそうなら、お前なんてとっくに死んでるっつーの』
その蓮華の言葉に、俺はハーメルンの笛吹き男との戦いを思い出した。
確かに、あの頃の俺のカードたちはみんな碌なスキルも持っていなかったが、強力なスキルを持つイレギュラーエンカウント相手に勝利を収めた。
あの後、ハーメルンの笛吹き男について調べてみて、『その真のスキル』を知って、心底ゾッとしたものだ。
蓮華が俺の首へと腕を回し、カメラに聞こえないようにそっと囁く。
「お前、最近スキルに頼り過ぎだ。もうちょっとスキルじゃなくてカード自身を信頼しろ」
『そう、だな……悪かった』
『ああ。それと、限界突破はともかく、霊格再帰はコピーされる可能性はないだろうから安心しろ』
『うん? そうなのか?』
『そーいうもんなんだよ、アタシを信用しろ』
限界突破はコピーされる可能性があり、霊格再帰はコピーされない……。
この二つの違いは何なのだろうか。霊格再帰にはキーアイテムが必要だからだろうか?
そもそも、なぜ霊格再帰というスキル名なのだろうか。
ただのランクアップできるスキルだとすれば、霊格『昇華』とかでも良いはず、というかそっちの方がしっくりくる。
再帰……再び帰る。つまり、そういうことか? 零落スキル持ちは、元々はもっとランクの高いカードであり、故に霊格再帰のスキルで一時的に元のランクに戻ることができる、と。
だから、特殊型迷宮の主であっても霊格再帰のスキルはコピーできない。元に戻る先が存在しないから。
だが……なぜ蓮華たちはランクダウンなんてしたんだろうか。
そんなことを考えながら電車に揺られること、十数分。
俺は最後の迷宮に到着した。
清土鬼子母神堂は、普通に民家が立ち並ぶ路地の奥に、こぢんまりと存在する小さな寺社だった。
この寺社に初めて来た俺の印象としては、なんだかモノ悲しい、だった。
唯一、寺社を取り囲むように建てられた高い壁とゲートが、ここがただの寺社ではなく危険な迷宮であることを主張している。
迷宮化により参拝客も訪れなくなり、信者からも存在を忘れられた小さな寺社。それが、清土鬼子母神堂だった。
だが、それも中へと入るまでだ。
一歩中へと足を踏み入れると、そこは外観からは想像も出来ない程に広大でねじれ狂った空間だった。
入口から無数に枝分かれした参道の先には、やはり無数の本堂があり、神像が無造作に乱立している。
東京ドームダンジョンと同じだ。元の建造物を取り込みつつ、それが何十倍、何百倍にも増殖され、空間が拡張している。
あそこも、外観は普通だが一歩中に入るとたくさんの通路に枝分かれしており、その先に十数個ものの球場——今は闘技場風に改装されているが——が存在し、その一つ一つで毎日のように試合が行われているのだ。
初めて入ると、歪んだ空間に驚き、不快感を示す者もいるが、慣れれば問題はない。
「……いるな」
無数に枝分かれした参道の先、人間の俺でもわかるほどの威圧感を放つ存在がいる。
その威圧感に覚えがあることに気付き、俺は眉を顰めた。
これは、嫌な予感が当たったか。
特殊型迷宮はこちらの嫌がるモンスターを出してくるため、予想していたことではあったが……。
俺は、蓮華、イライザ、ユウキ、メア、鈴鹿、それと少しだけ迷ったがデュラハンを呼び出すことにした。
デュラハンのドジは怖いが、ここは少しでも戦闘力の底上げをしておきたい。
さらに……。
『蓮華、メア、霊格再帰だ』
出し惜しみはしない。最初から全力で行く。
『待ってました!』
と、メアが喜色を浮かべてリリムへと霊格再帰する。
褐色の肌に、どこか官能的な幾何学模様がピンクのラインで走り、山羊の角は黒く艶やかに、背中の翼が一回り大きくなる。
それに合わせて、蓮華も吉祥天へと霊格再帰した。足元から蓮華の花が咲き乱れ、肢体がスラリと伸びていき、天女のような羽衣を身に纏った美の女神へと姿を変えた。
『イライザ、二人にレベルアップの魔法を掛けてくれ』
『イエス、マスター』
レベルアップの魔法は、まだ育っていないカードの戦闘力を一時的に成長限界まで上げる魔法だ。戦闘による経験値は得られなくなるが、手に入れたばかりのカードを即戦力とできる。
このレベルアップの魔法により、霊格再帰持ちは、その種族本来の戦闘力を発揮できるようになるのだ。
【種族】吉祥天(蓮華)
【戦闘力】3100(MAX!)
【先天技能】
・吉祥天の真言
・二相女神
・アムリタの雨
【後天技能】
・廃棄されし者
・限界突破
・明星の瞳
・霊格再帰
・自由奔放
・高等攻撃魔法
・詠唱破棄
・魔力回復
・友情連携
・高等状態異常魔法
・かくれんぼ
【種族】リリム(メア)
【戦闘力】1500(MAX!)
【先天技能】
・夢魔の王女:夢魔を統べる女王の娘であり、分身。眷属であるサキュバスを召喚することができる。無限召喚型。サキュバスの先天スキルをすべて内包する。
・夢か現か:現実と夢の世界の境界線をあいまいにし、その場にいる者全員の夢と名の付くスキルの効果を上昇させる。
・死の快楽:粘膜接触した相手に強力な快感を与えるとともに、精気を吸収、あるいは分け与えることができる。投げキッスで遠隔攻撃可能。直接接触で、威力極大上昇。相手が男性であった場合、初撃に限ってありとあらゆる耐性を貫通する。
【後天技能】
・小悪魔な心
・一途な心
・友情連携
・中等魔法使い
・高等状態異常魔法
・高等補助魔法(NEW!)
・人を呪わば穴二つ
・生還の心得
・霊格再帰
・耐性貫通
・詠唱短縮
【種族】サキュバス
【戦闘力】360
【先天技能】
・巫山の夢
・胡蝶の夢
・淫魔の肌
【後天技能】
・下位眷属体:スキルとして呼び出された仮初の肉体。後天スキルを持たず、成長もしない。下位眷属体は自我を持たず、オリジナルの初期戦闘力の8割ほどの力しか持たない。
これで、準備は万端だ。
蓮華は戦闘力3100にもなり、フルシンクロすれば戦闘力は6000相当にもなる。
たとえ相手が限界突破を持ったBランクの主であっても、戦闘力だけは上回れるはずだ。
メアは、さすがに蓮華に比べると落ちて見えるが、無限召喚型の眷属召喚を持っている。長期戦となればその総合力は限界突破を持つ蓮華にも劣らない戦力となるだろう。
蓮華とメアだけでなく、イライザ、ユウキ、鈴鹿に、オマケでデュラハンもいる。
これで負けるようなら、それは単純に俺の実力不足だったというだけだ。優勝は他の選手に譲り、俺は冒険者の実力を磨き直そう。
そんな諦めにも納得にも似たさっぱりとした気持ちで参道を進む。
徐々に匂ってくる華の香りに、嫌な予感が確信へと変わっていく。
やがて、本堂の前で立つこの迷宮の主が見えてきた。
咲き乱れた蓮華の花の上に立つ、天女のような羽衣纏った絶世の美女。
————この迷宮の主は、予想通り吉祥天だった。
【Tips】特殊型迷宮の主
特殊型迷宮の主は、通常の迷宮と異なり、迷宮のランクよりツーランク上のモンスターが出現する(Bランク以上の特殊型迷宮は現在確認されていない)。
この主は、挑戦者の召喚しているカードの後天スキルを一つずつコピーする能力を持ち、途中でカードを入れ替えた場合であっても、前のカードの後天スキルは破棄されず、次のカードの後天スキルが新たに加わる。
また、出現する主は、その冒険者の思考を読み取り、相性の悪いモンスターが選ばれる。
この性質からか、特殊型迷宮の主には絶対に一人でしか挑むことができない(一人以上の立ち入りができない)。
別名『試練の迷宮』。
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