第144話 暮方
あと三十分もすれば日が沈んで暗くなるような時間に火月が到着した場所……
それは閑静な住宅街に囲まれた公園だった。
「ちょうど二週間前か」
アーチ型の小さいゲートを見上げた火月が一人呟く。
そう、ここは二週間前に元田さんと一緒に扉を修復した場所だった。
もちろん、修復は既に完了しているので扉の姿は見当たらない。
ゲートを潜り抜けて公園の中へ足を踏み入れると、
ブランコやシーソーといったちょっとした遊具が視界に映る。
こんな時間じゃ誰もいないかもしれないと覚悟していたのだが、
どうやら既に先客がいるらしい。
小さい女の子が遊具から少し離れた砂場で遊んでおり、
その様子を母親と思われる女性が後ろのベンチから眺めていた。
ベンチに座っている女性に見覚えは無かったが、
砂場で遊んでいる女の子には見覚えがあった。
『実は扉の出現した場所が自宅近くの公園なんです。
週末によく娘と一緒に遊びに行く場所なので、どうしても放っておけなくて』
以前元田さんが話していたことを思い出す。
何度か公園に通わなければならないと思っていたので、
今日その姿を見つけることができたのは僥倖だった。
女性が座っているベンチまで近づくと「すみません」と声を掛ける。
怪訝そうな顔をしてこちらを見た女性に対し、唐突に自己紹介を始めた火月だった。
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