第5章 折目高
第115話 鰯雲
今日は世間一般で言うところの『休日』に当たる日だった。
いつも通りの時間に起きた火月は、
手早く朝食を済ませると、スーツに着替え始める。
念のために言っておくが、
まだ寝ぼけていて平日だと勘違いしているわけではない。
要するに、今日は休日出勤の日なのだ。
火月の務めている会社は、月に一回当番制で休日出勤をする必要があり、
今月の当番が自分だったので、今こうして出勤の準備をしている……
という訳である。
最初こそ、休日に出勤するなんて面倒だと思っていたが、
平日に比べて電車は空いているし、
出社しても周りの人間が休みなので自分の仕事に集中できると分かってからは、
その足取りも軽くなった。
それに休日出勤した分、平日に休みを取れるのは、
大きなメリットと言っても過言ではないだろう。
銀行や役所などはどうしても平日には行きにくいし、
そのために有給を使うのは、もったいない気がしていた。
そう考えると平日に代休が取れる
リビングの壁に掛けてある時計を見ると、
六時十五分を過ぎたところだった。
普段なら、ねぎしおが起き出す時間なので朝食の準備をするのだが、
今日はその必要もない。
というのも、ねぎしおは昨日から組織の本部に預けられ、
定期健診を受けているのだ。
前回と同様に、水樹さんに任せているので問題ないだろう。
リモコンを手に取り、テレビの電源を切る。
少し前まではこれが日常だったと思い出す。
慣れというのは、恐ろしいものだ。
椅子に置いてあった鞄を肩にかけると、そのまま玄関へ向かう。
ドアを開けて一番最初に感じたのは、湿気の少ないカラッとした空気だった。
もう十月も半ばになるので、そろそろ秋本番といったところだろうか。
空を見上げると、
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