第62話 逢着

視界の端から、

人影のようなものが目にも止まらぬ速さで飛び出してきたと思ったら、

そのまま、振り下ろされているハンマーの側面を目掛けて突っ込んでいく。


何事かと思い、目の前に突如現れたを凝視する。


そこには、背中まで真っすぐ伸びたブラウンヘアーの髪をなびかせ、

右腕に至極色の大きな鉤爪をたずさえた女性が宙を舞っていた。


金属の激しい衝突音が響き渡ると、

火月が動けなくなっていた場所のすぐ真横に、

怪物のハンマーが振り下ろされた。


どうやら、彼女の攻撃によってハンマーの軌道をずらすことができたようだ。


地面が大きく揺れ、火月の右足付近を固定していた氷にひびが入り、

細かい結晶となって砕け散る。


一旦、怪物との距離を取るため、後方に大きく飛び退く。

両足で地面に立ち、足に違和感がないか確認していると、後ろから声をかけられた。


「中道さん、こんなところでお会いするなんて奇遇ですね」


ゆっくりと振り向いて、声の主を視界に捉える。


ああ…。

やはり、自分の見間違いではなかったようだ。

いつもは髪を一つに縛っているので、

もしかしたら他人の空似なんじゃないか…そう信じたかったのかもしれない。


だた、目の前で不敵に笑う彼女を見て確信する。


実界で、てるてる坊主のような怪物を始末した修復者、

そして会社の後輩でもあり、ついさっき火月の命を救ったのは、

他でもない藤堂 志穂その人だった。

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