第28話 図書館
炎天下の中、約二十分ほど歩き続けてようやく辿り着いた先は地元の図書館だった。
入口の自動ドアが開くと同時にひんやりとした空気が身体全体を包み込み、
ここまで歩いてきた苦労が少し報われたような気がした。
受付の近くに円形の広いソファーがあったので、
休憩がてら腰を下ろす。
隣にはまるで全ての冷気を身体に行き渡らせるかのように、
ねぎしおが両翼を広げて寝転がっていた。
視線を上げてざっと周りを見渡す。
予想していたほどではなかったものの休日の図書館は、
それなりの人が利用しているようだった。
受験勉強に励む学生や新聞を読む高齢の男性、
子供と一緒に絵本を探している母親など老若男女問わず利用できるこの施設は、
まさに夏のオアシスと言っても過言ではない。
少し休んでいる間にだいぶ汗が引いてきたので、
暇つぶしの本でも探そうかと考えていると、
「この実界で使われている用語についてまとめてある書物はないのか?」
とさっきまでダウンしていたねぎしおが話しかけてきた。
「そんな不思議そうな顔をするでない。
我がこの世界に来てまだ日が浅いのはお主も知っておろう。
知らないことが多いのじゃから、まずは知ることから始めようと思っただけじゃ」
随分と殊勝な心掛けに感心すると同時に、
以前何処かで聞いたことのあるフレーズのような気がした。
ねぎしおの問いかけに小さく頷くと
ソファーから静かに立ち上がり、なるべく足音を立てないように移動する。
とりあえず、辞典とか辞書でも見繕っておけば大丈夫だろうと考えた火月は
目当ての本を探すため本棚を物色し始めた。
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