第41話 決断!
「…」
私たちの関係に終わりを告げるであろうカーサさんの宣告を、私もアースもただただ黙って待つ他なかった。私が強くアースの手を握ると、彼もまたそれにこたえてくれた。…こうして彼の手を取ることができるのも、カーサさんが言った通り、今日で終わりになるのだろうから…
「さあカーサ様、決断するのはあなたですぞ!」
せっかちな性格なのか、結論を急ぐノーベ公爵。…そんなに早く、私たちの関係を終わらせたいのだろうか…?
そしてついに、ここまでずっと静かに皆の言葉を聞いているだけだったカーサさんが口を開いた。
「…皆さんのお考えはよく分かりました」
会議室中に透き通る声で、そう言葉を発するカーサさん。
「では、この場における私の結論を申し上げます」
皆静まり返り、
「私は、アース様とエステル様のご婚約に」
私の頭の中には、アースと出会ってからの毎日がよみがえっていた。お掃除にお料理、毎日のお勉強。ジンさんやバリアブルさんとの出会い。それに、しっかり私たちを叱りに来てくれたイリエさん…すべての日々が、私にとってのかけがえのない宝物…それが今日で終わるとしても、決して色あせることは…
「大いに賛成させていただきます」
…?、カーサさんは、今何と言った?、賛成と、言った、の?
その言葉が飲み込めていない様子なのは皆も同じようで、皆一様に固まってしまっている。一瞬の間妙な沈黙が私たち全員を包んだ後に、最初に口を開いたのは公爵様とセフィリアだった。
「は、はあ!?!?カーサ貴様、どういうつもりだ!!」
「そうですわ!!話と違うではありませんの!!」
大声の二人の反論に、カーサさんは全く答えない。そんなカーサさんに構わず、二人は自身の言葉を続ける。
「私と共に帝国の未来を築くのであろう!?そう言ったではないか!?あれは嘘だったのか!?」
「そうですわ!!我が娘フィーナを皇帝の妃とすると、あなたは確かに言ったではないの!!」
大声を上げる二人に、カーサさんは静かに、かつ重たい声でくぎを刺す。
「…私に結論をゆだねてくださったのは、ほかならぬ公爵様ではありませんか。聞こえなかったのでしたら改めて申し上げます。このカーサ、皇帝府長の立場として、アース様の妃としてエステル様を推挙させて頂くことに、全く異論はありません」
その言葉が決定打となり、崩れ落ちるように椅子に座る二人。途端、賛成派の皆から歓声の声が上がる。
「いよっしゃああああああああああああああ!!!!!!!!」
「それだよ!!それがききたかったんだよおおおおおおおお!!!!!!」
「うおおおおおおおお!!!!!!!!」
この雰囲気にあっては、反対派の長たる二人はもはや打つ手なしだったのだろう。公爵とセフィリアを含む反対派の人々は、ぶつぶつと文句を言いながら逃げるように会議室を後にしていった。
しかし歓声が上がる裏で、一人の賛成派の人がカーサさんに疑問を投げる。
「…しかしカーサ、ぜひとも教えてほしい。お前は公爵と親しく、二人の婚約は面白い話ではないはず…にもかかわらず、なぜ気が変わったんだ?」
それは、心の中で私もアースも気になっていた事。明らかに公爵派だったカーサさんが、最終的にどうして私たちの味方になってくれたのか…?だってついさっきまで、私たちの関係は今日限りで終わりだと言っていたカーサさんが…
そんな私たちの疑問に、カーサさんは答え始めるのだった。
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