第10話 軍事衛星アルテミス


 シャトルの壁には、スペクトル分析された宇宙空間の映像が映し出されていた。


 人間の目では真っ暗な宇宙空間だが、それでは人間が精神的に処理しきれない。故に遥か彼方に有る星々をスペクトル分析によって映し出している。


「ねえ、見て見て、ステキ」

 恒星フレイシアの光に反射してフレイシア星系の惑星が光学処理されて壁一面にパノラマのように映し出されている。更に遠くには、色々な銀河や星雲が映し出され側にGGCNoが映し出されていた。


 GGCNoは、宇宙空間におびただしく存在する星系の番号だ。発見された順から付けられている。

 やがて遠くに軍事衛星アルテミスが見えてきた。


「まもなくアルテミスに到着します。候補生の皆さんは、ボディロックを確認してください」


 アナウンスが流れると候補生は緊張した面持ちで各自がボディロックを確認した。シャトルが誘導ビームに従って軍事衛星アルテミスの宙港のゲートをくぐると静かに停止した。


 そしてゲートの下からランチャーロックが伸びてくるとシャトルのボディのロックインジェクターと結合した。


 宇宙空間側の巨大なゲートが閉まり、エアーロックがオンになるとアルテミス側の巨大なドアが開いた。


 カレンとミコトは足元からの音で体に少しだけショックを感じると静かになった。


 着いたんだと思うと二人は顔を見合わせてにこっとした。


「候補生の皆さん、軍事衛星アルテミス到着しました。シューズのかかとに付いているボタンをオフにして下さい」

 急にシャトルの内部が明るくなり入口のドアが開いた。


 軍事衛星アルテミス。首都星ランクルトの上空三五七八六キロに浮ぶ四つの軍事衛星の一つ。

 直径一〇キロ、厚さ二キロの円盤形をしている円盤の上部外側は特殊軽合金クリスタルパネルで覆われておりその中に衛星に住む人々の空気、水、食料をまかなってくれる七八キロ平方にも渡る広大な牧草地帯、田園風景が広がっている。


 軍艦艇は円盤の外側上部から順に戦艦、戦闘母艦が第一層、巡航戦艦、重巡航艦が第二層、軽巡航艦、駆逐艦が第三層、四層そして第五層、六層が哨戒艦、特設艦、工作艦、輸送艦、強襲揚陸艦のドッグヤードになっている。


 ドッグヤードは円盤の外周部から二キロまでとなっており、その内側直系六キロを円盤の外延部側から資材地区、工業地区、商用地区、移住区と順に中心部に向かっている。


 そして円盤の中心分にこの軍事衛星の心臓部とも呼ぶエネルギープラントとグラビティユニットがある。


 またグラビティユニットを衛星の軸中心部に配置する事により、軸を中心として円盤全体に一Gの重力が架かるようにしている。

 この軍事衛星アルテミスは首都星ランクルトからは静止衛星となっている。


 シャトルは、第六層のゲートに入った。


 カレンとミコトがシャトルを出ると候補生が、ゲートの外にある待合で並んでいる。


 二人も他の候補生と同じ様に並ぶと軍事衛星アルテミスの航宙軍士官学校の長官ヘラルド・ウオッカーが


「候補生諸君、アルテミスへようこそ。これから君たちは、ここで残りの教練を行う。ここでの結果が、諸君の航宙軍の将来を決めるといっても過言ではない。心して訓練に励むように」


 長官が候補生の顔を一通り見渡すと指導教官の紹介を始めた。


 指導教官の挨拶も一通り終わり軍事衛星の中にある候補生用の官舎の説明が終わると候補生はそれぞれ割当てられた指導教官の元へ集まった。


 カレンとミコトも指定された指導教官の元へいくと、あれっ自分達しかいない。どうしてだろうと思っていると


「いいのよ。君たちは」

二人の後から久山が、声を掛けた。


「君たちは、アトラスⅢ型の航宙訓練になるから、他の候補生とは別扱いになるの。言い方変えればそれだけ君たちが、優秀だって言うことよ」


 僕は下にいるときにサキとレイが言っていた事を思い出した。


「君がカレンさん、そして君がミコト君だね」

カレンとミコトが少し驚いた顔をすると


「不思議がることはないよ。スカートとスラックスで分けただけだから。あっ、もうひとつ言っておく事がある。私は士官学校の人間ではない」

二人が驚いた顔をすると


「士官学校から依頼されてアトラスⅢ型の候補生を教練するフレイシア航宙軍大尉のユウイチ河井だ、宜しく頼む」

そう言って微笑むとカレンとミコトは急いで航宙軍式敬礼をした。河井大尉も答礼すると


「君たちの宿舎となる航宙軍の官舎には久山衛生担当官が案内してくれる。今日は、上がって来たばかりだし、荷物の整理も有るだろう、教練は明日から始めよう。場所の指定は君たちの宿舎に連絡が行っている。明日はそこに来るように」


久山さんが

「青山ツインズこちらに来なさい」

と言って歩き出すとカレンとミコトは圧倒されたまま久山さんの後を付いていった。


河井は、横に来たサングラスの男に

「送ってきたデータは、本当ですか。にわかに信じがたいのですが」

「君だけじゃない。座学やシミュレーションを担当した者全てが君と同じ感想だ。実際の宇宙空間でそれを確かめるのが君の役目だ」

「はっ、分かりました」

 河井は、久山の後を付いていくカレンとミコトの後ろ姿を見ていた。


「到着ロビーの荷物受け取りカウンターで自分達のケースを取ってきなさい」

久山は、二人に指示するとまわりを見た。他の候補生も同じ様にカウンターで自分たちのケースを受け取っている。


―――――


次回をお楽しみに。


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

ここは面白くないとか、ここはこうした方が良いとかのご指摘も待っています。

宜しくお願いします。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る