(100)玄関の怪異には器物破損と礼儀
~紗彩目線~
どうするべきかと考えていると、ポツポツと雨が降ってくる音が聞こえてくる。
こんな異空間の中でも雨が降るんだと思って、地面を見てみれば血の気が引いてしまった。
その雨は、普通の雨とは違った。
普通に雨水じゃなく、色が血みたいに赤黒かったから。
驚きのあまり固まっていると、お腹に大きな腕がまわり気づけばオズワルドさんに抱き上げられていた。
「すぐに移動するぞ!この雨では、服が汚れる!」
「そっち!?」
「それ以外にないだろう!あと、風邪をひくぞ!!」
オズワルドさんの言葉に思わずツッコんでしまえば、レオンさんもそう言って走り出した。
オズワルドさんは周囲を見回しながらレオンさんと一緒に、玄関の前まで走っていった。
なんとか玄関の前につき雨を防ぐけど、赤色の雨はやむ気配がない。
「…………入ると言うのも手だが」
オズワルドさんは玄関の扉をチラリと見た後、私の方を見た。
なるほど、ホラー小説でありがちなことを話せばいいのだろう。
でも、玄関って何かあっただろうか?
ホラーゲームでありがちなことなら、開いたはずのドアが開かなくなったとか?
確か、ホラーゲームだとそれで主人公たちが脱出するために探索して怪異に襲われるはず。
「ホラー小説だと、入った瞬間玄関が開かなくなるということがありますが」
「…………なるほどな」
オズワルドさんにそう言えば、彼は私を下ろして腰に差してある剣に手を持っていく。
え、まってまさか……
そう思った瞬間、スパンッという音と共に玄関のドアが一瞬で木片に変わっていった。
ガラガラと音を立てて、ドアだった木片が床に落ちて散らばる。
…………いや、斬り伏せるとは言ったけどドアも?
「よし、これでいいか」
「なんで、斬ったんですか?え、というか斬っていいんですか?」
「そこまでは知らないが、開けることができなくなるんなら閉めれなくすればいいだけだろう?」
「ああ、確かにな!さすが、オズワルドだな!」
剣をしまったオズワルドさんに思わずそう言えば、オズワルドさんは首をかしげながら言いレオンさんはオズワルドさんの背中を叩きながら喜んでいる。
…………なんで、この人たちこんなに行動が物理すぎるの!?
思わず頭を抱えそうになるけど、とりあえず肩掛けカバンの中にある道具類の確認をする。
侵入者を伝えるブザーが聞こえた時反射的に道具をセレスさんからもらった肩掛けカバンの中に入れたけど、この空間の中に来たことで何かなくなっているかもしれないし。
そう思いチェックすると、なくなっているものは一つもなかった。
…………うん、これなら何かが襲ってきたとしても私にも攻撃手段はある。
そう思って本部の中を見ると、少し違うことがわかった。
まるで和風の家のように、靴を脱ぐ用の段差がある。
…………そう言えばあの侵入者、怖いのを我慢して作ったって言っていたけどもしかして参考にしたのって和風のホラーなのだろうか?
そう思いながら玄関を見れば、ハイヒールや子供の靴やスニーカーや革靴などが散らばっていた。
「靴関係で何かあるか?」
「特に何もなかったと思います」
靴を見ていると、ドアだった木片を端に片付けていたオズワルドさんの声をかけられた。
とはいっても、靴関係では何もなかった気がする。
そう思いながらオズワルドさんに言えば、レオンさんが靴を持っていることに気が付いた。
「何をしているんです?」
「ん?靴はこうしてしっかりと並べておいた方が、有事の際に邪魔にならないだろう?何より、このままというのは礼儀上よろしくない」
…………まあ、確かにレオンさんの言う通りな気がする。
でも、この状況でそれを言うべきなのだろうか?
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